WW2期の米海軍空母艦載機といえば、まさに傑作機のオンパレード。ミッドウェー海戦で当時最強の日本海軍空母機動部隊を瞬時に撃滅し、太平洋戦争の潮流を変えたSBDドーントレス急降下爆撃機。強敵ゼロ戦を向こうに回しミッドウェーやガダルカナルで互角以上の戦績を残したF4Fワイルドキャット戦闘機。そしてそのワイルドキャットの後継機として戦争中盤以降の太平洋の空を制し、日本機相手に圧倒的な強さを発揮したF6Fヘルキャット。他にもF4Uコルセア、TBF/Mアヴェンジャー等も傑作機と称して良い。

そんな米海軍の空母艦載機にあって、どうも冴えない機体がいくつかある。しかもそれがただの低性能機であれば面白くないのだが、そこそこ高性能な上、設計思想も斬新にも関わらず少数生産されただけで活躍できなかったのだから面白い。
そこで今回はそのような機体をいくつか紹介してみた。知っている人には知っている話なので面白くない内容だとは思うが、意外と知られていない米艦載機のいくつかを見て頂ければ・・・。

BTDデストロイヤー

1941年半ばに来るべき対日戦における主力艦上爆撃機とすべく開発が始まった機体である。
まずこの機体、当時の艦爆としては桁違いの攻撃力を誇っていた。
武装は20mm固定機関砲2門のみ。当初は後部座席に12.7mm連装機銃を装備していたが、後に複座から単座に変更されたため、自衛用機銃は廃止された。
爆撃能力が物凄く、爆弾倉内には1600ポンド(720kg)爆弾を2発まで搭載可能。翼下にも500ポンド(227kg)爆弾各1発を搭載可能で、総搭載量は4200ポンド(約1.8トン)を誇った。爆弾を搭載しない場合は2100ポンドの大型魚雷2本を翼下に懸垂可能。これは大戦末期の主力艦爆SB2Cヘルダイバーや主力艦攻TBF/Mアヴェンジャーの実に2倍に相当する。さらにこれだけの重武装にも関わらず最高速度は554km/hで航続距離は雷装時に2,380km。いずれもTBF/Mアヴェンジャーを大きく上回る数値だ。この性能を見れば、大戦末期に日本海軍が実戦に投入した「流星改」なんて子供騙しのようにも思えてくる・・・。

これほど高性能機でありながら生産数は僅かに28機に終わった。開発要員不足による開発遅延が主な理由だ。にしてもSB2Cヘルダイバーに比べて足元にも及ばない高性能艦爆だけに、仮に対日戦があと1年伸びていれば、ひょっとしたら実戦に参加していたかも・・・。いや、それはないか。スカイレーダーという超傑作機が次に控えているだけに・・・。

イメージ 1


TBU/TBYシーウルフ

ミッドウェー海戦で全滅に近い損害を受けたTBDデバステータ。このデバステータの後継機として開発が進められたのが、グラマン社のTBFアヴェンジャーとヴォート社のTBUシーウルフだ。比較的余裕のある設計であるTBFアヴェンジャーに比べると、より大馬力エンジンを備え空力的にも洗練されたシーウフルは、速度、航続距離、上昇力のいずれの分野でもライバルを凌駕した。にも拘らずシーウルフは米空母の飛行甲板を埋めることができず、米空母の甲板に翼を並べたのはTBF/Mアヴェンジャーだった。何故か。
まずシーウルフの生産遅延が挙げられる。当時のヴォート社はF4Uコルセア戦闘機の生産に手一杯で、シーウフルを生産する余裕はなかった。生産はコンソリデート社に移され、デジグネーションもTBUからTBYに変わっていた。生産遅延に拍車をかけたのは選定したエンジン。TBU/TBYの高性能は搭載エンジンによってもたらされた
部分が大きいが、そのエンジンというのがP&W R-2800で、よりもよってF6FやF4Uといった主力艦上戦闘機にも採用されたエンジンである(序にP-47にも・・・)。当時大増産中の戦闘機用エンジンが、優先度の低い艦攻用に回される筈もなかった。
さらにTBU/TBYが不利に作用した点として駐機スペースの大きさがある。TBF/Mアヴェンジャーが独特の翼折畳機構によって極めて狭い駐機スペースでも駐機可能としたのに対し、TBU/TBYにそのような特徴はなかった。結果、当時大増産されていた護衛空母上での運用面でもTBU/TBYはTBF/Mの敵ではなかった。
それでもTBU/TBYは一応量産され、1100機が発注され、180機が完成した。大戦末期には実戦部隊も編制されたが、対日戦に参加することはなかった。
仮に対日戦があと1年伸びたとしても、TBF/Mに比べて新味性に乏しい本機がTBF/Mに代わって主力艦攻として米空母艦上で君臨することはなかったと思う。TBU/TBYの失敗事例は、軍用航空機にとって細かい飛行性能の優劣だけが成功要因ではないことを教えている。

イメージ 2


XF5F-1 スカイロケット

F5Fというデジグネーションが示す通り、F4FワイルドキャットとF6Fヘルキャットの間に位置する戦闘機である。しかしその外観は両戦闘機とは似ても似つかないもので、本機は全く別の機体であることを示している。
本機の最大の特徴は、艦上戦闘機ながらも双発を採用したこと。離昇出力1200hpのライトXR-1820を2基搭載している。その狙いは上昇性能と速度性能で、700km/h以上の高性能を狙った。実際F5Fの上昇性能は良好で、海面上昇率1,220m/minはF6F-3やF4U-1を凌駕した。しかし肝心の速度性能は615km/hと平凡な値であり、F4U-1にも及ばなかった。さらに独特の機体構造が災いして欠点も多く、1942年の段階で既に海軍からは見切りをつけられた形となっていた。
結局生産されたXF5Fは1機のみ。本機での経験が後のF7Fタイガーキャットの開発に役立ったとのことだが、それはまた別の物語である。

イメージ 3


XF5U-1

どうも米海軍艦上戦闘機は"5"という数字と相性が悪いようだ。このXF5U-1も「珍機中の珍機」というべき機体である。まずその外観が凄い。空飛ぶ円盤に大直径のプロペラを2基取り付けた外観は、戦闘機というよりもUFOである。
外観だけではなく性能も凄い。計画値では最大速度775km/h。これはレシプロエンジン戦闘機としてはトップクラスで、数値だけならP-51HやF4U-4、F8F-1にも負けない値である。さらに円盤型の本機はSTOL性能が良く、極めて短い滑走路で離着陸可能な他、空中停止に近い機動も可能だという。まさに革新的な艦上戦闘機になるはずだった。
結局革新的な本機は初飛行すらすることなく、歴史の彼方に姿を消した。本機が仮に対日戦に間に合っていれば、あるいは革新的な艦上戦闘機として歴史にその名を刻んだかもしれない。

イメージ 4

F4F Wildcat South Pacific 1942-43 第2次大戦のワイルドキャットエース SBD Dauntless Units of World War 2 第2次大戦のTBF/TBMアヴェンジャー部隊と戦歴
F8Fベアキャット(No.148増補版) グラマンF6Fヘルキャット NO.71 F4Uコルセア 世界の傑作機 NO. 88 DVG Corsair Leader