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解説

イメージ 7アルデンヌ44、ウクライナ43等、数多くの傑作ゲームを生みだしてきた名デザイナー、マーク・シモニッチの最新作が、2015年に米GMT社から出版されたThe U.S. Civil Warだ。タイトル通り米南北戦争をキャンペーン・クラスで扱った作品だ。1Hex=24マイル、1Turn=2~3ヶ月、1戦力は約5000名の兵員を示している。また指揮官も当然登場し、リー、グラントの両雄をはじめ、ジャクソン、シャーマン、ロングストリート、マクレランらの将星が、合衆国の未来をかけて戦うことになる。

これまで南北戦争ゲームといえば、VG社のThe Civil War(TCW)、GMTのFor the People(FtP)をはじめ数多くの作品が生まれてきた。本作はこれまでの作品をベースとして発展してきていることは明らかである。例えばFtPと比較した時、SP(戦力ポイント)や将軍の扱い、補充の受け取り、沿岸要塞、河川支配、海上封鎖等の概念では、本作がFtPの影響を受けていることは明らかだ。

では、本作の特徴は何だろうか?。

本作は毎Turn、4回のアクションラウンドを繰り返すことによってゲームが進められる。各アクションラウンドでは、両プレイヤーが1D6を降り合って、その差分だけ両プレイヤーがアクションポイント(AP)を受け取る。そしてより大きい目を出した方が先攻側となる。ちなみにゾロ目の場合は、両プレイヤーが特殊カードを1枚づつ受け取った上でダイスを振り直し。出目差が1の場合は両プレイヤーが東部戦線、西部戦線、ミシシッピ対岸戦線で各1ポイントのAPを得る。

APは原則として1部隊の活性化を行うのに使われる。部隊といっても軍司令官クラスが率いる軍規模のもの(7~18SP)、軍団司令官が率いる軍団規模(4~6SP)、師団規模以下(1~3SP)等様々だ。しかしAPについては部隊規模に関係なく、一律1部隊=1APとしている。なお、一部慎重派の将軍(マクレラン等)の率いる部隊の場合、敵のZOI(支配領域、ZOCのようなもの)に侵入する場合は、1APではなく2APの消費が必要になる。

イメージ 8戦闘は部隊が敵部隊のヘクスに侵入することにより発生する。防御側はこれに対して戦闘回避又は迎撃(隣接ヘクスから増援部隊を送り込む)を選択できる(ダイスチェックあり)。戦闘解決はファイアーパワーで、自軍のSP数に相当するコラムでダイスを振って相手が失うSP数を決定する。より多くのSPを失った側が敗者となり、後退を余儀なくされる。指揮官の能力は戦闘時のダイス修正となる。このあたりの進め方はFtPに近いものがある。
面白いのは、戦闘規模に応じて振るダイスの数と加算できる指揮官の数が変わってくる点。自軍のSP数が1~6SPの場合はダイスは1個で加算できる指揮官は1名だが、SP数が7~12でそれぞれ2個2名となり、13SPで3個3名となる。つまり小規模戦闘なら個々の指揮官能力の優劣が大きな影響を占めるが、大規模戦闘の場合は総司令官の能力の占める割合が小さくなり、必然的に組織の優劣が焦点なってくるということ。このあたり、日本の戦国ゲームでは殆ど見られない概念だけに、日米両国のカリスマや組織に対する考え方の違うを見るようで興味深い(ちょっと大袈裟?)。

イメージ 9指揮官のレーティングについてもかなり地味で、最強のリー、グラントの両名も評価は2-2-5(攻撃修正-防御修正-移動力)。攻撃・防御ともダイス修正+2の効果しかない。だからリー、グラントでも兵力が足らなければ簡単に負けてしまう。このあたり、例えば日本の戦国期を扱った代表的な作品「信長、最大の危機」や「謙信上洛」等と比べてみるのは面白い。
なお本作では、指揮官の戦死ルールがなく、指揮官は他のユニット同様、増援や退出によってゲームに登場したり、ゲームから退場したりする。史実で戦死した指揮官は、史実と同じタイミングで戦死してゲームから退場していく。このあたり評価の分かれる所かもしれないが、指揮官の死亡チェックダイスでゲームの展開が大きく変わってしまうことがないので、こちらの方が良いかもしれない。

戦闘以外では河川支配に関するルールが重要である。このあたりはFtPと殆ど変らない。従って経験者であれば比較的容易に理解できよう。しかしルールを読んだだけでは解り難いので、経験者に聞くのが近道だ。

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プレイ

今回はお互い初めてのプレイだったので、初級ルールのみでのプレイであった。シナリオは1863年シナリオ。ゲティスバーグで南軍が敗北し、西部戦線では要域ビックスバーグが陥落して南軍の敗勢が明らかとなった時期である。いわば南北戦争の転機となった時期といえよう。下名は南軍を担当した。

イメージ 10展開はひたすらビックスバーグ(Vicksburg 4011)とその後方のジャクソン(Jackson 4013)を巡る戦いに終始。北軍がグラント(Grant 2-2-5★★★)、シャーマン(Sherman 1-1-5★★)といった優秀な指揮官を擁し、兵力にも勝る北軍と、ヴィックスバーグにレベル3の要塞を構築し、優秀な騎兵指揮官を有する南軍の激突である。結果的にはゲーム終了までヴィックスバーグが持ちこたえたが、これは当方のルールミスによる所が大きい。★★の指揮官(軍団長クラス)が指揮できるのが6SPまでというルールを失念していた可能性が高い。後で気がついたのだが、南軍側西部戦線には軍司令官クラスの指揮官がいない。ミシシッピ河畔で遊んでいるK.スミス(Kerby Smith 1-1-4★★)が第11Turnに昇進して軍司令官になるので、昇進する前に西部戦線へ転属させるのが良いかと。あと余裕があれば、ジャクソンにも要塞を築いておくと、北軍としては嫌かも・・・。

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イメージ 11西部戦線以外では、東部戦線では大西洋岸に上陸を仕掛ける北軍とそれを討伐する南軍との戦い。しかし北軍には沿岸要塞という聖域があるので、南軍は北軍を完全に討伐するのは難しい。逆に北軍としては橋頭保さえ築いておけば、いつでも海から増援部隊を送り込めることになる。いずれにしても海岸線を押さえて南軍の補充力を落しておかないと北軍に勝ち目はないので、ミシシッピ川からの進攻と並び、海からの進攻が北軍にとってキーとなりそうだ。

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感想

イメージ 12システムは全然違うが、雰囲気はFtPに似ている。両軍とも行えることに限界があり、全部の戦線で行動することはできない。勢いどの戦線に重点を置くかがポイントとなるが、相手が重視した戦線をこちらが無視すると、その戦線がボロボロになってしまう。とはいっても相手のペースに合わせて対応してばかりだと、結局相手のペースに巻き込まれることになる。従って如何にして相手のペースを崩して自分のペースに持っていくかが難しい。

ルールはやや多いが基本的な概念はシンプルである。アクションフェイズが活動の中心になるので、そこでの動きを理解すれば良い。その他の細かいルールは、最初はざっと読むだけにしておいて、実際の運用については戦況に当てはめながら考えていく方が良い。

プレイ時間は全5Turnで約9時間かかった。うちセットアップが1時間強なので1Turn平均は1.5時間ぐらい。慣れれば1Turn1時間ぐらいだろうか。キャンペーンが全20Turnなので、2日間連続でプレイすれば、なんとか終盤が見える所までは行けそうだ。機会を見つけてキャンペーンゲームをプレイしたいものである。

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