太平洋の試練-真珠湾からミッドウェーまで
イアン・トール 村上和久訳 文芸春秋
太平洋戦争初期、真珠湾攻撃からミッドウェー海戦までの戦いを主に米軍側の視点で描いた作品である。米軍側からとはいっても、今では日本側の事情が米側にもかなり正確に伝わっているので、日本側の事情についてもそれなりに詳しい。日本側のミッドウェー作戦についても構想段階から描かれており、当然ながら日本側の戦略に対しては評価が手厳しい。日本では余り知られていない事として、例えば珊瑚海海戦での米艦爆の照準器不良問題(急降下すると曇って使い物にならなくなる)や、真珠湾攻撃直後における米国内の混乱状況については、興味深く読めた。また言うまでもないが、特に下巻で触れられている珊瑚海、ミッドウェー海戦の描写については、(他の著作でもそうだが)血沸き肉躍る場面であった。
もう1点、本書の興味深い点として、戦前の日本政治についてかなり詳しい描写がなされており、それに対する筆者の評価が記されている点である。筆者によれば、戦前の日本はテロによって国家の行く末が決められ、もはや議会政治が機能していなかったとのこと。全く以て妥当な評価である。
お奨め度★★★★
太平洋の試練(上)-真珠湾からミッドウェーまで
太平洋の試練(下)-真珠湾からミッドウェーまで
太平洋の試練(上)-ガダルカナルからサイパン陥落まで
太平洋の試練(下)-ガダルカナルからサイパン陥落まで
太平洋の試練(上)-レイテから終戦まで
太平洋の試練(下)-レイテから終戦まで