太平洋の試練-ガダルカナルからサイパン陥落まで
イアン・トール 村上和久訳 文芸春秋
先日に紹介した「太平洋の試練-真珠湾からミッドウェーまで」の続編である。タイトル通りガダルカナル戦からサイパン陥落までを主に米軍側の視点で描いた作品である。勿論前作同様日本側の事情についてもそれなりに詳しく書かれている。例によって米軍側の事情について興味深い記述が伺える。ガダルカナル戦で当初南太平洋方面の指揮官であったゴームレー提督が戦意不足の為に途中で解任され、ハルゼー提督と交代したのは有名な話だが、空母部隊を指揮させてもらえるつもりであったハルゼーの戸惑いが面白い。また中部太平洋方面での反攻作戦で、当初空母部隊を指揮していたパウノル中将が、これまた戦意不足によって何度も自軍空母部隊を危機に陥れたこと。特にマーシャル攻撃時における「レキシントン」被雷の件は、無敵に思える米機動部隊も内部では色々と問題を抱えていたことを伺わせてくれるようで面白い。
そして極めつけはマリアナ沖の海戦。ここでも日本艦隊は米軍の防空組織を前に完敗を喫したが、この戦いでも米軍は必ずしも一枚岩ではなく、特に航空関係士官は先制攻撃を強く主張していた点などは興味深い所である。もしミッチャーらの航空関係士官が同海戦で主導権を握り、もっと積極的に日本艦隊と戦っていたら?、というイフは大いに興味がそそられる。
2冊で合計900ページ近い大作なので読み通すのはかなり時間がかかるが、それだけの価値がある著作である。
お奨め度★★★★
太平洋の試練(上)-真珠湾からミッドウェーまで
太平洋の試練(下)-真珠湾からミッドウェーまで
太平洋の試練(上)-ガダルカナルからサイパン陥落まで
太平洋の試練(下)-ガダルカナルからサイパン陥落まで
太平洋の試練(上)-レイテから終戦まで
太平洋の試練(下)-レイテから終戦まで