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イメージ 5「ドイツ装甲師団長2」(以下、本作)は、Game Journal誌43号の付録ゲームで、2012年に発表された。元々はアドテクノス社から発売されていた「ドイツ装甲師団長」(以下、前作)で、前作では戦闘比方式の戦闘解決システムを、本作では1ユニット対1ユニットの射撃解決方式に変更している。そのため比率方式に比べると兵器間の性能差が表現し易くなった。

スケールは1ヘクス=750~1500m、1Turn=1~3時間(夜間は6~12時間)、1ユニットは1個中隊を表す。タイトル通りプレイヤーが指揮する兵力は概ね師団~軍団(ソ連軍の場合)規模で、登場するユニット数はソ連軍の場合は平均70個前後、ドイツ軍は平均50~60個である。

システムは準備射撃、移動、機動射撃で1プレイヤーTurnになっており、それをソ連、ドイツの順番で繰り返す。1Turnの所要時間は30分弱。1シナリオは8~16Turn構成になっているので、シナリオの所要時間は3~6時間ぐらいである。

イメージ 6システム的に面白いのは、兵科による移動力消費の違いと射撃時期の違いである。まず移動力については、歩兵・砲兵系の移動力は2~3、戦車・自走砲系の移動力は4~6である。ただし道路移動率が前者は1/4、後者は1/2なので道路移動の場合は両者の違いはない。違うのは道路移動率を使うと敵ZOCに進入できないことと、ZOCの進入、離脱に2移動力がかかること。従って歩兵、砲兵系のユニットは敵ZOCに進入するのが困難だが、戦車・自走砲系は比較的容易に敵ZOCに進入できる。
射撃時期については、歩兵、砲兵は準備射撃と機動射撃の両方で射撃できる。また自走砲は準備射撃でしか撃てない。戦車は機動射撃でしか撃てない。従って先の移動特性と合わせて考えると、以下のようになる。

 戦車:移動によってZOCに進入でき、移動後射撃ができるので、攻撃時の主力となる。
 自走砲:移動によってZOCに進入できるが、移動後射撃ができないので、機動防御用となる。
 歩兵:移動によってZOCに進入するのが困難だが、敵が隣接していると1Turnに2回射撃できるので、拠点防御用となる。
 砲兵:移動によってZOCに進入できないが射程距離があり、またスタックを射撃した場合はスタックの全ユニットを攻撃できるので、いざという時の突破口形成用になる。

いずれにしても各兵科の特徴を巧みに再現し、かつ戦場全体の中で各兵科の活躍を再現できるという点で本作は他の作品にはない特徴があると言えよう。ルール自体もシンプルで、口頭説明でも十分にプレイできる。

とある対戦

イメージ 4という訳で8月半ばの暑い土曜日。早速本作をプレイしてみた。下名はソ連軍を担当する。本作では6つの任務チットからソ連、ドイツ両陣営が2つずつのチットを無作為に選択し、そのいずれか(あるいは両方)の達成に向けて部隊を展開することになる。またその一方で相手の任務を予測しつつ、それを妨害するようなプレイも求められる。
今回、ソ連軍が引いてきた任務は「威力偵察」と「阻止」であった。「阻止」とは相手の任務を阻止することで勝利得点を獲得するもので、こちらから積極的にVPを得るのが難しい。そこでこちらは威力偵察の達成を目指すこととし、その一方で相手の突破を阻むべく重要拠点を押さえることにした。

序盤は両軍とも盤端から進入し、主要な街路に布陣してその確保に努める。

イメージ 7両軍が接触したのは第3Turnであった。戦線中央付近で独ソ両軍の戦車同士が接触したのだ。性能に勝るドイツ戦車が序盤の戦車戦に勝利し、損害を被ったT-34中戦車の中隊が後退していく。その一方でソ連軍の有力な戦車大隊が戦線左翼に突出し、ドイツ軍の包囲を狙っている。

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ソ連軍左翼の戦車大隊が前方の小河川を渡河し、戦線後方を伺う。そして頃合い良しとみた戦車2個大隊が左翼を突進。後方の敵歩兵陣地を攻撃した。この陣地を落せば、「威力偵察」任務を完遂したことになるのだ。

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イメージ 8歩兵1個中隊でしかなかった防御陣地は戦車大隊の攻撃に抗するべくなく陥落。ドイツ軍は戦車部隊を派遣して救援に向かわせたが、ソ連側の遅退戦術によって目的を達せず。結局第8Turn終了時に勝利条件を見たしたソ連側の勝利に終わった。

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感想

イメージ 9プレイ時間は3~4時間ぐらいであった。一部ルール適用ミス(ZOCに進入する際の移動力消費を忘れる等)があったので、厳密には正しい展開ではない。感想としては、上に書いた通り各兵科の特徴が比較的良く表現されており、ルールもシンプルでわかりやすい、良いゲームだと思う。前作では兵器の性能差が今ひとつ表現されていなかったが、本作では兵器の性能差も(シンプルながらも)表現されるようになっている。いずれにしても中隊規模のゲームなので、個々の兵器の優劣よりも運用の優劣が重要なのは言うまでもない。

やや残念なのは、前作では独ソ両軍以外にフランス、イギリス、アメリカ等のユニットやシナリオが用意されていたのに、本作ではそれらが省略されていることである。コンポーネントやテストプレイの関係上仕方がないとは思うが、残念といえば残念である。是非続編を期待したい。

いずれにしても機会を見つけて再戦してみたい作品である。