遠すぎた橋(上下)

コーネリアス・ライアン/八木勇訳 ハヤカワ文庫

言わずと知れたマーケットガーデン作戦を扱った古典的な著作である。筆者自身も書いているが、本書は戦争を扱っているが、所謂「戦史」の類ではない。マーケットガーデン作戦を背景とし、そこで戦った軍人たちや、オランダの一般市民を描いた人間ドラマなのだ。従って我々ウォーゲーマーが求めるような戦史的な記述(両軍の編成、装備、戦術等)についてはやや弱い。それよりも戦争という異常な状況下での人間の営みを描く事に焦点を当てている。そこには戦争の狂気と人間性との葛藤。人間の崇高さと愚劣さといったドラマが描かれていると言っても良い。これは一重に筆者の真摯な取材態度の賜物といえよう。
とまあ、こんな風に書いてみたが、実際には「ティーガー戦車すげえ」とか「タイフーン戦闘機の猛烈な機銃掃射」とかなんとかいった場面が少なかったので、ちょっと不満を覚えた私なのでした。

お奨め度★★★