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GMT社のPanzerは、WW2期における戦車戦を扱った戦術級ゲームだ。1ヘクス=100m、1Turn=15秒~15分、1ユニット=1両、1門、1機、1個分隊/班である。今回、拡張キット#1に含まれている「シレジアの黄昏、1945」(Twilight: Silesia, 1945)をVASSALでソロプレイしてみることにした。

ここまではドイツ軍の巧みな配置と間接射撃が功を奏した形となって攻め倦めているソ連軍であったが、目の上の瘤であった前進観測班と重機関銃陣地を制圧し、漸く前進の芽が見えてきた。

ここまでの展開-->こちら

10Turn

イメージ 10ドイツ軍にとっての期待は重戦車等8両からなる増援部隊、通称「黒騎士中隊」だ。本来ならそろそろ出てきても良い頃なのだが、このTurnも姿を見せなかった。
ソ連軍歩兵部隊は次のドイツ軍拠点を潰すべく、再集結。Lorendorf村に突入する。待ち構えていたのは、ドイツの少年たち3個分隊。短機関銃分隊2個とライフル分隊1個だ。忽ち2個分隊のソ連軍がステップロス。そのうち1個は壊滅する。他に1個分隊が制圧状態に。しかしソ連兵3個分隊が無傷のままドイツ軍の拠点に隣接した。白兵戦の機を伺う。

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11Turn

イメージ 19「キター」
黒騎士中隊登場!!。
V号中戦車パンター4両、VI号重戦車ティーガー1型、同2型各1両、V号駆逐戦車ヤークトパンター1両、3号突撃砲1両からなる戦車部隊だ。シナリオの後半は独ソの重戦車対決に焦点が移る。
黒騎士中隊の登場によって主導権を取り戻したドイツ軍はLorendorf村での歩兵戦闘でも優位に立った。突撃態勢を取るソ連軍歩兵に対して先制射撃を実施。1個分隊を壊滅させて、他の分隊を制圧状態にした。無傷のソ連軍分隊は残り1個。それでも練度に勝るソ連軍歩兵は強引に白兵戦を仕掛けてきた。ドイツの子供たちは、しかし善戦した。突撃してきたソ連軍歩兵分隊を見事に返り討ちにしたのである。

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イメージ 11戦線左翼では、ソ連軍中戦車部隊が生き残りのヘッツァーと75mm対戦車砲を始末すべく、広く展開していた。1両のT-34/85にPak40対戦車砲の放った75mm徹甲弾が命中。それは同戦車をキルすることはできなかったが、命中弾に驚いた搭乗員が戦車を捨てて脱出したことにより事実上キルと同じことになった。その対戦車砲に対しては2両のT-34/85が報復の火線を向けようとしたが、深い森に隠れている対戦車砲を発見するのは容易ではなかった。
対戦車砲といえば、やはり森に隠れた別のPak40対戦車砲を始末すべく、2両のIS-2mがオーバラン攻撃を繰り返し仕掛けたもの、これをなかなか撃破できなかった。こちらは数Turnに渡る攻撃を繰り返して漸く撃破できたが、一連の戦闘で1両のIS-2mは弾薬不足を引き起こしてしまう。

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Panzerにおける対戦車砲は一見すると弱々しい存在だが、地形を選んで守りに徹すると厄介な相手になる。例えば今回のように深い森でフルカバー状態の対戦車砲は、GP防御値が"9"に達する。これを始末するためには、例えばIS-2m重戦車が至近距離か撃ち込んでも、その撃破確率は20%に過ぎない(そしてIS-2mは30%で弾薬欠乏を起こす)。これがT-34/85なら撃破率14%だ。さらに厄介なことは、深い森でフルカバー状態の対戦車砲を発見するためには、仮に相手が発砲してきたとしても3ヘクス以内に踏み込まないといけない。なお当然ながら3ヘクスは75mm対戦車砲からみて十分に必殺距離である。対戦車砲を始末する一番確実な方法は、歩兵で白兵戦を挑むことである。ここでも歩兵の重要性が伺える。だからあえて言おう。Panzerは決して「戦闘級ゲーム」ではない。

そして戦場に黒騎士達が登場する。


12Turn

イメージ 12Lorendorf村のソ連兵は戦術を変えてきた。これまでの白兵戦至上主義を捨てて、準備射撃後の白兵戦に方針を切り替えたのである。これまでは白兵戦を仕掛けようとしたところでドイツ兵の防御射撃や準備射撃によって突撃が腰砕けになってしまう例が多かったので、それに対する対策だ。
先手を取ったソ連兵はドイツ軍歩兵に向けて射撃を浴びせかける。ソ連兵の射撃は奏功し、ドイツ兵を制圧下にした。無論ドイツの少年たちも反撃し、ソ連兵2個分隊を制圧下にした。これでソ連兵による白兵突撃はまたもや頓挫する。

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イメージ 13戦線左翼では75mm対戦車砲がもう1両のT-34/85を仕留めていた。300mの距離から放たれた徹甲弾がT-34/85の正面装甲を貫いたのである。例によって撃破は免れたが、そこはソ連兵。搭乗員が戦車を捨てて脱出したので、事実上撃破と同じだ。生き残ったT-34/85は、深い森に籠った対戦車砲との交戦は不利と判断。物陰に待避した。
そして黒騎士中隊のエース、VI号B型重戦車、通称ケーニヒスティーガーが、その恐るべき破壊力を戦場で発揮した。距離1500mから放たれた88mm高速徹甲弾は浅い森に潜むSU-100駆逐戦車の正面装甲を貫いた。駆逐戦車の内部で爆発した88mm徹甲弾はSU-100を完全に撃破した。その威力に息を飲む両軍将兵。生き残った2両のSU-100は慌てて森の背後に隠れる。

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13Turn

イメージ 14Lorendorf村に向かっていたパンター中戦車の小隊に対して、距離1500mでIS-2m重戦車2両が出現した。
「くそ、駆逐戦車を随伴させなかった俺のミスだな」
悔やむドイツ軍プレイヤー。この距離、しかも相手が化け物のようなIS-2m重戦車の場合、如何に高性能を誇るパンターの75mm砲でも、撃破はほぼ不可能なのだ。これがヤークトパンターの88mm長砲身砲なら撃破の目もあるのだが・・・。
慌てて後進をかけるパンター戦車の周辺に122m徹甲弾が着弾する。1発の122mm砲弾はパンターのギリギリをかすめていったが、幸い命中はなかった。物陰に入ったパンター戦車の中隊は高台に陣取り、制高点を押さえた。

イメージ 15ソ連軍の盤外砲撃が火を吹いた。目標は先ほどSU-100を仕留めたケーニヒスティーガーである。近くにいたヤークトパンターとティーガー1型重戦車も砲火を浴びることになったが、ドイツ軍にとって幸いにも実害はなかった。ケーニクスティーガーは砲撃を誘導したと思われるM2ハーフトラックに対して距離1700mから反撃を実施。88mm徹甲弾をハーフトラックの履帯に命中させた。まさかこの距離から命中弾を得られるとは思っていなかったのか、M2ハーフトラックの乗員達は驚いて車両を捨てた。
戦線右翼を大きく回り込んできていた2両のT-34/85に対し、距離300mからヘッツァーが75mm徹甲弾を命中させた。車体正面に命中した75mm弾は内部で爆発し、そのT-34/85を完全にノックアウトした。

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ソ連軍もここを決戦とみた。一旦後方に下がっていたSU-100駆逐戦車隊を再び前に出し、生き残ったT-34/85もパンターと決戦すべく砲口をパンターに向ける。

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14Turn

決戦のTurnである。このTurn、主導権を握った側が大きく優位を占める。即ちドイツ軍が主導権を握れば、ほぼドイツ軍の勝利は確定するし、逆ならソ連側にも逆転の可能性が出てくる。
結果は・・・、

無情にもドイツ軍の主導権となった。

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ドイツ戦車の容赦ない砲撃がソ連軍戦車部隊を切り裂く。
T-34/85が2両、400mの距離から放ったパンターの75mm徹甲弾を浴びて擱坐する。
3号突撃砲は既に損傷していたT-34/85に75mm徹甲弾を命中させて、これを完全撃破していた。
別のパンターは1400mの距離からSU-100駆逐戦車の正面に75mm高速徹甲弾を命中させてこれを完全に撃破、炎上させた。
ドイツ戦車の射撃による戦果は計4両。期待のケーニヒスティーガーとヤークトパンターが揃ってスカだったという誤算はあったものの、ほぼ期待通りの戦果を上げてソ連戦車部隊を壊滅状態に追い込んだ。

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イメージ 17しかしソ連側も意地を見せた。まずヤークトパンターの側面後方至近距離に回り込んでいたT-34/85が、距離100mから85mm徹甲弾を駆逐戦車の側面装甲に命中させていた。85mm徹甲弾は内部で爆発。ヤークトパンターは擱坐する。
さらにSU-100駆逐戦車も1400mの距離から100mm高速徹甲弾をパンター戦車に命中させた。海軍砲が転用した100mm砲の威力は凄まじい。パンターを切り裂いたその徹甲弾は、この車両を完全に擱坐させた。

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イメージ 10そしてLorendorf村では、漸くソ連兵の白兵突撃が威力を発揮し始めた。ソ連のベテラン兵たちが地を蹴ってドイツの子供たちが立て篭もる建物に突進する。分隊対分隊の激しい白兵戦は一瞬で決着がついた。ドイツ軍1個分隊が撃破され、ソ連軍損害なし。順当な結果とは言えるが、そこに至るまでの時間がかかり過ぎた感のあるソ連軍であった。

イメージ 16今回、パンターとヤークトパンターを別行動させたが、これは失敗だった。先にも記した通りパンターの火力ではIS-2mの重装甲には対抗するのが困難である。またヤークトパンターは遠距離戦では強いものの、接近戦になると、足の速い中戦車に側面や後面に回り込まれて案外アッサリ殺られる場合がある。両者の弱点を相補うためには、両者を同じバトルグループとして行動させるのが得策だったように思う。

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