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オペレーション・ドーントレスは、1944年6月のノルマンディ上陸作戦に伴うカーン西方の戦いを戦術レベルで再現したシミュレーションゲームだ。1ユニット=小隊~中隊、1Hex=425ヤード、1Turn=90分(夜間は330分)というスケールから分かる通り、やや大きめの戦術級ゲーム(戦術作戦級)と言って良い。なお、ヘクス径は一般的なゲームよりもかなり大きく、対辺距離は約36mm。普通のゲームの2倍近い大きさだ。

マップといえば、このゲームのマップはカーン西方約13kmにあるフォントネ・ル・プネル(Fontenay-le-Pesnel)周辺の実在地形を描いている。Geogleマップで当該地区を航空写真で見てみると、本ゲームのマップで描かれている地形とほぼ同じ地形が現在でも残っているのがわかる。
またユニットもドーントレス作戦に参加した英独両軍の実在部隊が表現されており、英軍は第49歩兵師団や第79機甲師団、ドイツ軍は第12SS装甲師団「ヒトラー・ユーゲント」や戦車教導師団等が登場する。

本ゲームは、一般的な戦術級ゲームとはやや異なった概念を持つゲームである。1Turnが90分以上と長いので、抽象化したシステムを採用している。歩兵と装甲車両が別次元のシステムで戦っていると考えれば、ある程度理解できよう。

まず歩兵については、一般的な作戦級ゲームのように移動・戦闘を繰り返すシステムを採用しており、戦闘は戦闘比で解決する。戦術級ゲームらしいルールといえば、干渉射撃(FF)と呼ばれる防御射撃が行われる点である。また戦術級ゲームらしい所は、地形の影響が大きいことで、所謂平地以外では上記干渉射撃を受けることなく、さらにZOCも無視できる。そんなこんなで平地を走る歩兵は敵の敵の攻撃から脆弱であり、逆にボカージュ等に陣取る歩兵は極めて強固である。

対装甲車両戦闘は全く異なる手順で解決される。対装甲射撃戦は火力と装甲値によって解決する所謂ファイアーパワー方式で解決する。それだけなら通常の戦術級ゲームと変わらないのだが、ユニークなのはその解決方法だ。対装甲射撃は、視認下の敵に対して実施できる。それに加えて相手から対装甲射撃を受けた場合、その反撃として対装甲射撃で応戦できる。それに対してその相手がまた応射、さらにそれに対する応射・・・、という感じで射撃の応酬が繰り返されて大射撃戦になる・・・、かもしれない。これをARC(Armor Reaction Cycle)と呼ぶ。このARCが本作における対戦車戦闘の肝であり、この仕組みを理解すれば、本作への理解が深まる。
なお、先に「かもしれない」と書いた理由は、相手からの応射が嫌なら途中でARCを打ち切ることができるからである。勿論その場合は最後の1発は相手から食らうことに甘んじる必要があるが・・・。

他にオーバーランの一種である接近戦や砲兵による支援射撃等もあり、戦術戦闘の主要な局面は概ねルール化されている。

このゲーム、兎に角ルールを読んだだけでは概念が解り難い。というよりも何が何だかさっぱり分からない、といった方が良い。チュートリアルがしっかりしているので、それを1つ1つ丹念に読んでいけば理解できるのだが、日本人の我々にとって英語のチュートリアルを1つ1つ理解するのはかなり骨が折れる。そこで以下に簡潔にまとめられた記事があるので、是非参照されたい。和訳ルールを1度読み、その後に以下の記事を読めば、比較的楽に本作の概念を理解できるだろう。


あと、最初にプレイする場合は、ルールに詳しい人にインストしてもらうのが近道だと思う。

ゲームをやってみる

今回は下名が初プレイということで、チュートリアルシナリオを3本プレイした後、通常シナリオを2本プレイしてみた。ちなみに通常シナリオのプレイ時間は、シナリオにもよるが2~3時間程度と比較的手頃だ。

最初にプレイしたのが、18.1 "Nightmarish Crossroads"(悪夢の十字路)。通常シナリオ1番手で、本作の中では比較的小規模なシナリオだ。Turn数は全部で6Turn。英軍兵力は、第79歩兵師団の1個大隊を中心に、第8機甲旅団のシャーマン戦車大隊、対戦車砲、そして大量の支援砲兵が登場する。さらに1個大隊程度の増援部隊も登場する。独軍は歩兵1個大隊、偵察1個中隊、対戦車砲2個小隊、そして若干の支援砲兵が登場する。攻撃側は英軍で、ドイツ軍が守る村落の奪取を目指す。下名は英軍を担当した。

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細かい展開は省略するが、結果的には勝利した。ドイツ軍の防衛線を抜いて勝利条件となる村落ヘクス6つを電撃的に支配したのが勝因だ。しかしミスも多かった。歩戦分離したのがその際たるものだ。このゲーム、歩戦共同は極めて重要。特に接近戦になった時に歩戦分離していた場合は不利になる。また戦車だけでスタックを組んでもメリットは余りない。対装甲射撃戦は1ユニット対1ユニットなので、スタックしていても火力が増える訳でないのだ。戦車スタックの価値があるとすれば、敵からの対戦車射撃で1ユニットが吹き飛ばされた場合でも反撃兵力が残ることぐらい。「装甲擲弾兵」とは違うのだ。
あと、ストロングポイントに陣取る歩兵は極めて厄介である。通常の攻撃に対して-2のDRMが適用されるだけではなく、支援砲撃にもDRM-2が適用される他、戦闘及びオーバーラン攻撃による最初の1ヒットを無視できるのだ。ただし攻撃側に火炎放射戦車が含まれている場合はこの限りではない。

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次にプレイしたのは、シナリオ18.3 "Heavy Counterattack"(重量級の反撃)。タイトルだけを見ればティーガー重戦車でも出てきそうなタイトルだが、残念ながらドイツ軍の戦車は「馬車馬」4号戦車。その約1個大隊が歩兵の支援を受けて公園に籠る英軍の撃破を狙う。英軍にはシャーマン戦車約1個大隊が登場。その約半数は強力なファイアフライ戦車を装備した戦車小隊だ。下名はドイツ軍を担当した。

派手な装甲兵力同士の激突が期待されたこのシナリオであったが、残念ながら今回は時間切れで途中まででプレイが終了した。

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感想

先にも書いたが、兎に角システムが斬新過ぎてとっつきにくい。しかし一度理解できれば、それほど異常なシステムではないことが理解できる。戦術級ゲームらしく細かいルールが多いのも確かなので、単純にシステムが斬新というだけでなく、難易度もそこそこ高いゲームと言える。

今回はイントロという感じだったので、次回はもう少し装甲部隊同士が派手に打ち合うシナリオをプレイしてみたい。

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