ゲーム概要

Operation Daumtressは、1944年6月下旬ノルマンディ地区における英独軍の地上戦闘を描いたシミュレーションゲームだ。1ヘクス750mのマップ上には、カーン市西方フォントネ＝ル＝プネル(Fontenay-le-Pesnel)付近の実在地形が描かれている。現在の地形をGeogle Mapで見ると、ゲームマップに描かれている地形とあまり変わっていない田園地帯が広がっていることがわかる。下は現在のフォントネ＝ル＝プネル付近(Geogle Mapより)。

ユニットは小隊～中隊。1Turnは実際の90分(夜間は5.5h)を示す。このスケールからは、「少し大きめの戦術級」という感じで、「装甲擲弾兵」とMMP社のGTSシリーズの間ぐらいのスケールだ。

システムは移動と戦闘を繰り返す一般的なもので、相手の移動中に防御射撃が実施できるというのも一般的だ。大スケールの戦術級ゲームなので防御射撃の実施回数に制限がなく、敵がZOCに入る度に実施できる。

このように書くと普通のゲームに思えるが、細かい点で他のゲームに見られないユニークなルールがある。その1つが視認ルールだ。本作における視認ルールは、他の戦術級ゲーム同様、射撃側と目標との間に視認線が引けるか否かで決定する。そして畑(Filed、普通のゲームで言う所の平地)以外はLOSを遮断する。ここで重要なことは、障害地形(畑以外の全ての地形)は隣接以外からの視認を妨害するという点だ。つまり障害地形内にいる敵ユニットを発見するためには、そのユニットに隣接するしかないという訳だ。ただし例外があり、制高点(高地ヘクス)にいるユニットは、4ヘクス以内の障害地形内を「見る」ことができる。この点は極めて重要で、そのためゲームは勢い高地を巡る争奪戦になる。
地形については、畑の他、ボカージュ、森林、道路、水路、斜面、等があるが、ボカージュの防御効果は相当強力で、ボカージュ内の敵を攻撃する際には相応の困難を伴う。

シナリオ3.Heavy Counterattack

1944年6月18日、ボワロンド農園の戦いを再現する。狂信的なドイツ第12SS装甲師団「ヒトラー・ユーゲント」に所属する4号戦車2個中隊と歩兵1個大隊、そして支援部隊が、ボワロンド農園を守る英49歩兵師団の歩兵大隊と、第8機甲旅団の戦車2個中隊等を攻撃する。シナリオの勝利条件はボワロンド農園の占領とその北側の占領だ。ちなみに、我らがGeogle Mapによると、現在でもボワロンド農園とその邸宅は健在である。この地形を戦車が走り回り、砲弾の炸裂が轟いていたとは思えない、静かな佇まいだ。

セットアップ

私は今回、英軍を担当する。セットアップはある程度自由度が認められているので、勝利条件ヘクスであるボワロンド農園には歩兵1個中隊と機関銃小隊をスタックさせて配置する。歩兵中隊を集めすぎると相手の間接射撃で大損害を被る可能性がある。何故ならスタックに含まれる歩兵1個中隊につき砲撃の2d6にDRM+1が適用されるという仕組みだからだ。シャーマン戦車を装備する戦車中隊は、クリスト(Cristot)とボワロンド農園の間の道路上に展開させる。その後方には、アキリーズ駆逐戦車と迫撃砲からなる支援射撃中隊を配備する。

6月18日05:30

最初のTurnはドイツ軍のプレイヤーターンのみである。ドイツ軍は守備隊の制圧を狙ってボワロンド農園を守る英軍に対して激しい砲撃を実施してきた。しかし深いボカージュ地形に拠り、塹壕を掘って伏せた英軍に対し、砲撃の効果はなかった。
ドイツ軍は前進を開始してきた。途端、後方陣地に待ち伏せていた6ポンド対戦車砲が火を吹いた。ドイツ軍装甲車の1ステップが燃え上がる。
ドイツ軍は英軍の配置ミスを突いてクリスト付近のアキリーズ駆逐戦車と迫撃砲のスタックに対して白兵戦を仕掛けてきた。ここでパンツァーファーストを撃たれたら貴重なアキリーズ駆逐戦車が撃破されて大ショックの所だったが、幸い英軍は損害を免れてクリストから後退に成功した。

一方ボワロンド農園正面では、ドイツ軍の歩兵小隊が機関銃小隊、装甲車の支援を受けて総攻撃を仕掛けるべく攻撃を仕掛けてきた。しかし平地を進むドイツ軍に対して英軍の盤外砲撃が降り注ぐ。次々と倒れていく「ヒトラー・ユーゲント」の少年兵達。ドイツ軍は砲撃によって歩兵4ステップ(4個小隊相当)を失い、攻撃にも失敗した。

6月18日07:30

奇襲から立ち直った英軍は後方の戦車小隊をボワロンド農園やその周辺に送り込んだ。17ポンド砲を装備する強力なファイアフライ戦車、対空機関砲を装備したクルセーダー対空戦車等も含まれている。こうしてボワロンド農園は鉄壁の防衛網が築かれつつあった。そしてクリスト付近で反撃を仕掛けた英軍部隊は、クリストを守るドイツ軍を撃破し、同地を奪回した。

このままでは埒が明かないと見たドイツ軍。虎の子4号戦車1個中隊を前進させてきた。丘の上に伏せていたアキリーズ駆逐戦車が、距離750mから17ポンド徹甲弾を放った。命中。爆発。4号戦車1個小隊が吹き飛んだ。
直ちにドイツ軍も反撃する。さらに別の戦車中隊も前進してきた。ARC。アーマーリアクションサイクル。本作を特徴づける戦車戦ルールだ。その特徴は、以前の記事を参考にされたい。激しい戦車戦の末、4号戦車はアキリーズ駆逐戦車の1個小隊を排除したが、4号戦車は1個中隊相当(5ステップ)もの兵力を失ってしまう。

ドイツ軍は残存兵力を結集してボワロンド農園に対する再度の総攻撃を敢行する。しかし再び英軍の激しい防御砲火が降り注いだ。突撃態勢のドイツ歩兵がまたもや薙ぎ倒される。乾坤一擲の総攻撃もオッズが立たずに失敗。この時点で勝利の望みを失ったドイツ軍はボワロンド農園の奪回を諦めて後退していった。

感想

プレイ時間はセットアップを含めて4時間ほどだった。今回は全体の1/3ぐらいしかプレイしなかったので、フルでプレイすれば12時間ぐらいはかかりそうだ。シナリオの紹介によると、本シナリオのプレイ時間は1～1.5時間とあったので、あるいはルールに慣れれば短縮できるかもしれない。
今回のプレイでも防御側が勝利したが、このゲーム、攻撃側が難しい。本シナリオについていえば、ドイツ軍としてはボワロンド農園への増援部隊投入は絶対に阻止しなければならない。そのためには戦車部隊をヘクス1007や1207,1208に進出させて、英軍車両部隊のボワロンド農園への増強を阻止する。中でも1207は最適で、ボワロンド農園への連絡線を遮断できる上、地形が平地ではないので、敵の反撃に対する抵抗力も期待できる。無論英軍も戦車部隊を1206あたりに初期配置してくることが予想されるが、英軍で怖いのはファイヤーフライとアキリーズだけ。無印シャーマンが相手なら4号戦車でも十分に互角以上に渡り合える。
さらに可能ならばオーバーラン等を駆使して1207から1107まで占領できればサイコーだ。ボワロンド農園は完全に孤立するので、あとは四方からじっくり締め上げれば良い。無論英軍の反撃を受けることは予想されるが、このゲーム、守っている側が有利なので、一度地形に籠った敵を撃破するのは困難だ。

というよりも、これぐらい上手く行かないと、逆にドイツ軍の勝ち筋が見えてこないように思うのだが、如何だろうか？。