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「大戦略、白村江の戦い」は、Game Journal誌第15号の付録ゲームです。歴史の教科書には頻繁に登場する有名な戦いですが、詳しいことは知りません。唐・新羅の連合軍と百済・倭(日本)の連合軍が戦い、前者が勝利した、ぐらいは知っていますけど。時期は663年とあるので、日本では奈良時代に入る少し前ぐらいかな。結果として朝鮮半島における倭の権益は失われ、新羅による朝鮮半島支配が確立されたとか・・・。

システム紹介

私の知る限り、本作について紹介されたことは殆どなかったと思うので、簡単なシステム紹介おば。マップはポイント・トウ・ポイント。行動の基本はアクションチット性です。両軍共通のアクションチットを毎Turn6枚ずつランダムに取得し、そのうちの1枚を密かに選んで同時に公開します。アクション数の多い側が最初にアクション数だけ行動し、続いて少ない側が同様に行動します。このようなアクションを計6回(アクションチット数とイコール)繰り返し、1Turnが終了します。
ここでもし両軍の選んだアクションチットが同じものなら(基本的にアクションチットは同じ内容のものが2枚含まれています)、その瞬間にTurnが終了します。従って守りに立っている倭・百済側は同じアクションチットを狙ってTurn終了を狙う戦術も成り立ちます。
アクションチットの中には「疫病」「内乱」もあり、それぞれ相手に不利な影響を与えます。
戦闘はファイアパワー。防御側の射撃後に生き残った攻撃側が反撃するというシステムです。部隊(将軍)の中には、命中率が他よりも高いユニット、敵に先んじて射撃を実施できるユニット、その逆に敵側から先に射撃を受けるユニット等があります。
他には支配の概念が厳しく、敵国の支配を得るためには、そのスペースに自軍ユニットを配置しておく必要があります。支配下スペース以外は補給線を通さない上、補給切れでTurn終了を迎えると、厳しい消耗チェックが待っています。従って侵攻側である唐・新羅連合軍は、後方連絡線の確保に腐心することになります。

勝利条件については、唐・新羅連合軍は朝鮮半島全域の支配、対する倭、新羅、高句麗連合はその阻止です。ゲーム開始時、唐・新羅連合は、朝鮮半島の約1/3を支配しています。残り2/3は北半分を高句麗が支配し、南半分を百済が支配しています。今の地理で言えば、新羅は韓国の東半分(日本海側)+ソウル周辺、百済はソウルを含まない韓国西半分、高句麗は北朝鮮です。百済と高句麗が連合していますが、その間を新羅によって分断されているため、唐・新羅連合は高句麗、百済の各個撃破を狙うことになります。

ゲーム展開

最初のプレイでは私は倭、百済、高句麗連合(以下、日本軍)を担当しました。最初に唐・新羅連合(以下、中国軍)は高句麗の平定を目指します。中国軍、中でも唐の軍事力が圧倒的で、高句麗の日本軍は対抗できません。日本軍は交戦を避けて首都平壌に向けて撤退していくのみ。中国軍はそれを追って朝鮮半島奥深くに侵攻していきますが、補給ルールが厳しいので各スペースに守備隊を残す必要があり、徐々に先細りになっていきます。
結局中国軍は補給問題解決の糸口がつかめずに投了。
「このゲーム、どうしたらええねん」
と言う意味の呟きを残していました。

第2回戦。今度は本作の経験者が中国軍を担当。私は前回同様日本軍を担当します。
中国軍は唐軍主力が前回同様鴨緑江から朝鮮半島に進入。しかし補給問題があるので、大きくは前進せず機会を伺います。また新羅軍を使って百済領内にゲリラ的な侵攻を仕掛けます。対する日本軍は、北部戦線(高句麗)では、唐軍に対して高句麗軍を朝鮮半島核心部に待機させてこれに対峙。また南部戦線(百済)では、先撃ち可能な指揮官(日本の阿倍比羅夫、百済の道探、鬼室福信)を使って先制攻撃により新羅のゲリラ侵攻部隊を各個撃破します。
第4Turnに強力なチットを得た中国軍は大攻勢を開始。一気に高句麗領内に侵攻します。後方連絡線は顧みない全力攻撃。このままではTurn終了時に大消耗する筈でしたが、第6ラウンドまで戦って遂に高句麗全土を制圧。高句麗群を撃破しました。その結果、新羅領内経由での補給線が確保できたため、唐の大軍は辛くも補給切れによる大損耗は免れました。
しかし高句麗攻略戦は唐の侵攻軍に対してもかなりの出血を強いました。そのため唐の軍勢は一旦本土に撤退。再編成に努めます。唐の軍隊は、唐の本国で完全戦力に復帰できるのです。しかし唐の主力が不在の状況で、日本軍は新羅領内に侵攻を実施。新羅の軍勢が残り3ユニットになったので、中国側が敗北を認めて終了となりました。

感想

システムはシンプルで解りやすく、ルールを理解している人がいれば、その場でインストしてプレイできます。勝利条件的には中国軍が難しいように思います。兵力面での優位を利用して一気に高句麗を攻め落とし、そのまま倭・百済の連合軍を撃破するのが良いかと思います。

残念な点としては、(このゲーム自体の問題ではないのですが)白村江の戦い自体が余り歴史的な興味を惹くテーマではないこと。まあマイナーテーマであっても料理の仕方如何では傑作と化ける事例もなきにしも非ず(例えばHere I Stand等)ですが、そういった「隠れた魅力」を発掘するには至っていない作品と言えます。

いずれにしてもマイナーテーマを積極的にゲーム化する制作姿勢には敬意を表したいと思います。


Game Journal 91-クロニクル・オブ・ジャパン Game Journal 85-義経戦記:源平奥州六大合戦 Game Journal 79-吾妻鏡&三国志 コマンドマガジン Vol.178『碧蹄館の戦い』