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GMT社の「Zero!」については改めて紹介する必要もないだろう。WW2期の空中戦を扱った傑作カード空戦ゲームである。空戦ゲームといえば、平面マップ上で3次元空間を再現するため「難しい」と言われることが多い。また単純な空戦ゲームの場合、空中戦の結果についての「発展性」が乏しいため、勝っても負けても「だから何?」という意識がつきまとう。
その点、この「Zero!」はカードを使うことで複雑な空中戦を簡単なルールで再現することに成功している。実の所ルール自体は「簡単」ということはなく、もし何も知らないプレイヤー同士がプレイした場合は「何をすれば良いのかわからない」ということになるかもしれない。「Zero!」が簡単というのは、プレイの仕組みがシステマティックに組み立てられているので、プレイ中に悩むことが少ない、という意味で簡単なのである。
また「発展性」についてはキャンペーンシナリオを用意することで対応している。これはミッドウェー海戦やフィリピン航空戦といった歴史上の戦い全体を再現するゲームである。この中ではプレイヤーは究極の勝利を目指して戦いことになるので、個々の空戦の意味を感じることができる。ちなみにこのキャンペーンシナリオは、厳密の考えると少しおかしい。というのも、例えばミッドウェー海戦やフィリピン航空戦は数十機から数百機単位での大航空戦であった。そのような戦いを数機の戦闘機、爆撃機の戦いのみで再現する「Zero!」のキャンペーンシナリオは、正しい歴史の再現とは言えない。しかしゲームとしてみた場合、該当する戦いの雰囲気を再現できるので、十分に魅力的な再現方法だと言える。

今回、Zero!のキャンペーンシナリオを1本、単独のドッグファイトを数回プレイしたので、その結果を報告する。

ビスマルク海海戦

C3i誌に掲載された追加のキャンペーンシナリオで、1943年3月のビスマルク海海戦を再現する。通常のキャンペーンシナリオとは違って目標の日本艦隊が駆逐艦「荒潮」、輸送船「旭盛丸」といった個艦別にレーティングされており、1隻単位での運命を追いかけることができるようになっている。史実では輸送船は8隻中8隻全部が沈没、駆逐艦も半数の4隻が撃沈された。史実通りの結果なら「引き分け」で、連合軍が勝利するためには史実を超える結果が要求される。一方の日本軍は損害を史実以下に抑えるか、又は連合軍に史実以上の損害を与えることで勝利する。
このシナリオは4回の任務よりなり、4回の任務が終わった時点で勝敗を決定する。

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登場航空機紹介

このシナリオには、個性的な機体が登場する。そのいくつかを紹介したい。

零戦21型、32型

イメージ 4「言わずと知れた「ゼロ戦」である。日米開戦当時は世界最強と謳われた戦闘機でもある。「Zero!」に登場する零戦は、空戦性能において連合軍機よりも優秀だが、防御力が貧弱なので、同時期の連合軍戦闘機に対して必ずしも有利ではない。F4F相手なら若干優位だが、P-40やハリケーン2型が相手ならほぼ互角、相手がP-38なら機体の頑丈さが違い過ぎるのでかなり不利である。スピットファイア1型やBf-109Eとも同程度の性能なのだが・・・。

一式戦1型

イメージ 3「隼」の名で知られている日本帝国陸軍の主力戦闘機である。運動性には優れている反面、火力が貧弱なので、多くの空戦ゲームでは「使えない」機体となっている。「Zero!」でもご多聞に漏れず火力値は最低の0。しかし火力以外は零戦並みの数値なので、使い方を間違えなければ、P-40やハリケーンクラスの敵が相手ならなんとか互角に戦えよう。

P-38G ライトニング

イメージ 5「双胴の悪魔」と呼ばれた双発単座戦闘機。「Zero!」の続編である「Corsares & Hellcats」で追加された機体である。山本五十六連合艦隊司令長官を死に追いやったのも、このP-38Gであった。Gモデルは比較的初期のモデルで、1943年のソロモン、ニューギニア戦区で零戦、一式戦、三式戦といった日本戦闘機と死闘を交えた。全般的に運動性は日本機と同等又はやや劣る(アジャイルが使えないため)程度で火力はほぼ同等。しかし機体の耐久性が極めて大きいので、全般的に日本機相手には優位に戦える。

B-25C-1/D ミッチェル

イメージ 6主に太平洋戦線で活躍した双発爆撃機である。いずれもC3i誌で追加された機体である。他国の双発爆撃機と比べると前方固定火力が強力で、特に50mm砲乃至75mm砲で武装したC-1型は「Zero!」では機銃掃射専用機として扱われている。「Zero!」では、「擾乱爆撃」が主任務のB-25は対艦船攻撃には不向きな機体という扱いであったが、追加ルールの反跳爆撃を採用することで有力な対艦攻撃機に生まれ変わる。

A-20A改 ハボック

イメージ 7こちらもC3i誌で追加された機体で、B-25よりも一回り小さく、その代わりに高速な攻撃機である。「Zero!」でも速度性能の優越を反映し、Speed値がB-25の"5"に対して、こちらは"6"になっている。「Zero!」におけるA-20Aは、機銃掃射可能な水平爆撃機として扱われている。その前方固定火力は強力で、通常の単座戦闘機が1火力なのに対し、本機は2火力となっている。

ボーファイターIC

イメージ 8英海空軍の長距離双発戦闘爆撃機で、本家英国では、主に沿岸航空隊の海上攻撃機として活躍した。この種の海上攻撃機の系譜は、戦後のバッカニアやトーネードといった攻撃機に引き継がれている。こちらもC3i誌で追加になった機体である。「Zero!」におけるボーファイターは、爆装できず、完全な機銃掃射専用機として扱われている。しかし実際のボーファイターは爆装可能なので、これはおかしい。多分ビスマルク海海戦におけるコンフィグレーションに合わせたレーティングとなっているのだろう。

B-17E/F フライングフォートレス

イメージ 9「Zero!」ではB-17EとFは同じ性能として扱うとなっている。言わずと知れた4発重爆。実戦では火力と防弾装備に劣る日本機相手に優位に戦いを進めたが、本シナリオでは集中攻撃を仕掛けてくる日本戦闘機に思わぬ苦戦を強いられる場面も・・・。

戦闘経過

第1任務 3月2日前半

連合軍の兵力はB-17E/Fが計4機、それを護衛するP-38Gが2機登場する。対する日本軍は3機の零戦21型/32型が登場する。このシナリオでは、特別イベントとしてMissed Escort(護衛失敗)とBad Weatherが適用される。前者は護衛戦闘機の到着が遅れるというイベント、後者は爆撃機の防御射撃の際、僚機の援護を受けられないというイベントだ。そのために防御力の劣った4機のB-17編隊は零戦の集中攻撃を浴び、2機が大破、2機が小破(再出撃可能)という損害を被った。それでもB-17の編隊は爆撃によって海軍の運送艦「野島」を撃沈、他2隻を中破させるという戦果を上げた。

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ちなみにこの時日本側にも"Late Arrival"(到着遅延)のイベントが適用されることになっているが、適用漏れが発生したため適用できなかった。もしLate Arrivalが正しく適用されていれば、B-17の損害はより小さくなり、逆に戦果がさらに増えた可能性がある。

第2任務 3月2日後半

第1任務で撃墜又は大破した機体を除くB-17が再出撃する。該当する機体は2機だけなので、2機のB-17が出撃する。今回は護衛戦闘機なし。対する日本側は一式戦1型が3機である。今回は"Cloud Over Target"(目標上空の雲)のイベントが適用され、ただでさえ命中率の低いB-17の対艦船攻撃が、より一層困難になる。今回はB-17が一式戦のなぶり殺しに近い状態になり、1機が撃墜、1機が大破した。返り討ちで1機の一式戦を仕留めたものの、明らかに交換比はこちらに不利であった。雲上から艦船を狙った爆撃も失敗に終わる。

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