「砲兵」から見た世界大戦
古峰文三 パンダ・パブリッシング
「第二次大戦の本質は機動戦ではなく火力戦だった」。ウォーゲームをこよなく愛し、ドイツ流電撃戦の美しさに魅了された我々にとっては甚だ違和感を覚える言葉である。しかし筆者は様々な事例を引きながら第二次大戦における陸の王者が、戦車に代表される機動部隊では決してなく、砲兵に代表される火力戦部隊であることを、様々な事例を引き出して説いていく。その説明は軽快であり小気味が良い。所謂「通説」を打破していく視点には爽快さすら覚える。しかしちょっと待って欲しい。この著作は論文ではない。確かに数値は引用されているので定量的な根拠はあるのだが、最大の問題はその出典が明かされていない。従って数値の信憑性を確かめる術はない。例えば「1944年以降の北西ヨーロッパで撃破された英戦車は、その約40%が間接砲撃と航空攻撃であり、22.7%が対戦車砲によるものであるのに対し、ドイツ戦車によって撃破されたものは14.5%に過ぎない」と言われてもどこまで信じて良いのかわからない。
何はともあれ、欧州大戦における戦車や砲兵の価値について一石を投じる著作であることは間違いなく、これによって欧州大戦史についてより深く理解が進む事を願ってやまない。
お奨め度★★★★
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