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日露戦争1~8

児島襄 文春文庫

戦記作家として名高い児島襄(こじま のぼる)氏の作品である。日露戦争の開戦前から戦争そのもの、ポーツマスでの講話会談から日比谷の焼き討ち事件を経て終戦までの約3年間を描いたノンフィクション作品で、日露戦争における陸戦、海戦が詳細に描かれている。日露戦争を扱った作品としては、司馬遼太郎氏の「坂の上の雲」が有名だが、「坂の上の雲」があくまでも歴史小説であるのに対し、こちらはノンフィクション作品となっている。従って「読み物」としての面白さは、当然ながら「坂の上」が勝る。
本書は純粋に日露戦争史と読む事も可能だが、現在の東アジア情勢のルーツとして読むこともできる。例えば朝鮮半島と日本とのギクシャクした関係は何に起因しているのか。あるいは現在の日中、日露関係の起源は何か。そういった疑問に対してある種の答えを与えてくれるだろう。
本書を読んで興味深かったのは、なんと言ってもポーツマスでの講話会談である。小村寿太郎とウィッテの駆け引きも興味深いが、それよりも日本国民がこぞって反対した講話条約の今日的な意味について考えてみるのも良いだろう。
また最終章における日露戦争全般に関する考察も興味深い。動員兵力では日本の方がロシアよりも若干だが多かったという事実。にもかかわらず陸戦における死者数では日本はロシアの4~5倍に達し、人的被害ではむしろ日本側の方が多かったという事実。これらの事実を目にしたとき、日露戦争は決して日本側が「勝利を得た」戦争ではなく、ギリギリで何とか引き分けに持ち込んだ戦争というのが正しいのかもしれない。
現在でも容易に入手できる著作であり、廉価でもあるので、万人にお奨めできる作品である。

お奨め度★★★★