モンテリマール(以下、本作)は、Compass Gamesが精力的に発売を進めているCSS(Company Scale Series)の1作品である。同じシリーズの作品としては、以前に紹介したSaipanやGuam等がある。今までは太平洋における島嶼戦ばかりがテーマであったCSSに初めて欧州戦線が登場することになる。
繰り返しになるが、CSSの基本システムについて説明しておこう。CSSはそのタイトル通り中隊規模のユニットを基本とする戦術作戦級のゲームである。1Turnは2時間(夜間は除く)、1Hexは500mに相当し、1ユニットは1個中隊である。基本システムは所謂チットドリブンで、師団や連隊に相当する活動チットをカップに入れてチットに従って部隊が行動する。チットを購入するためには「発令ポイント」(Dispatch Point)と呼ばれるポイントを消費する。発令ポイントは毎Turn補充可能だが、ダイス目によって補充量は変動する。
タイトルとなったモンテリマールは、南フランスの都市の名前で、マルセイユとリヨンの間にある。第2次世界大戦中には米独の機甲部隊同士の激戦があったとされる場所なので、そのためにゲームタイトルとして選ばれたことは容易に想像できよう。それにしても太平洋の島嶼戦と南フランスの機動戦。全く異なるシチュエーションで同じゲームシステムが巧く機能するものかどうか、興味深い所である。
今回プレイしたシナリオは、シナリオ5「The Germans try to push through - again!」。1944年8月25日に行われたドイツ第198歩兵師団によるモンテリマール北方への突破作戦を扱う。ドイツ軍はモンテリマール北方に展開する米第36歩兵師団を撃破しつつ、北に向けた鉄道線の確保を図る。米軍は独軍の阻止が目的だ。
今回の参加者は計4名(米独各2名)。私は米軍を担当する。
1944年8月25日 0700
このシナリオはドイツ軍が北方へ突破するための鉄道線を確保するシナリオである。鉄道線はマップ中央を流れるローヌ川に沿って走っており、その途中に米軍部隊が守備隊を置いている。ドイツ軍の第198歩兵師団がトラックを利用してローヌ川を北上し、300高地に布陣する米第36歩兵師団第141連隊に攻撃を加える。1944年8月25日 0900
序盤にドイツ軍のチットが連続して出てくる。ドイツ軍の猛攻を受けてローヌ川沿いに布陣していた米軍歩兵中隊1個が壊滅した。300高地の西側はドイツ軍が制圧しつつある。米軍は川沿いを進むドイツ軍に火力を集中。その前進を止めんとする。また東の戦場では米第142連隊が戦線左翼から反撃を実施。モンテリマールに向けて前進を開始した。1944年8月25日 1100
300高地に対してドイツ軍が総攻撃を仕掛けてきた。稜線を超えて米軍砲兵陣地に殺到するドイツ軍歩兵中隊。しかし発令ポイントを貯めた米軍第141連隊が猛反撃に転じた。豊富な弾薬量を駆使して撃ちまくる米軍迫撃砲部隊。うなるBAR。山を越えてきたドイツ軍は浮足立って次々と潰走していく。300高地はドイツ兵の血で赤く染まった。1944年8月25日 1300
発令ポイント不足のため行動が鈍化した両軍であった。師団活性化チットを使って300高地のドイツ軍を掃討する。300高地の掃討はほぼ成功したが、その後方で回復しつつあるドイツ兵が反撃の機会を伺っている。1944年8月25日 1500
ドイツ軍が戦線中央で新たな攻勢を仕掛けようとしていた。戦線中央を突破し、後方のVPヘクスを狙う構えである。米軍は発令ポイント不足のため積極的な攻勢は仕掛けられない。Sauzet(26.44)前面で突撃の機会を伺うドイツ軍。1944年8月25日 1700
夕闇迫る戦場。突撃に備えて配置につくドイツ軍を悲劇が襲った。突撃準備に入ったドイツ軍が補給切れによってフォーメーションチットが使えなくなってしまった。不幸なイベントの影響である。敵を前にして唖然とするドイツ兵。そこへ米軍の突撃破砕射撃が降り注ぎ、突撃準備中のドイツ兵が次々と撃破されていく。このTurn、ドイツ軍は4個中隊を失う。1944年8月25日 1900
ドイツ軍は勝利得点を獲得するために突撃をしかけてきた。前線を守る米軍の塹壕線を抜けて戦線後方に躍り込む。米軍陣地から機銃と自動小銃の火線が飛び、ドイツ兵がバタバタと倒れていくが、生き残ったドイツ兵は戦線後方になだれ込んだ。米軍は師団直属の駆逐戦車中隊を投入し、戦線の支柱にする。
1944年8月25日 2100
いよいよクライマックスである。ドイツ軍にとってVP面での勝機は最早ない。しかしせめてVP目標を1個でも占領せんと300高地及びその隣接する稜線に突撃部隊を展開させた。米軍の猛烈な突撃破砕射撃で次々と撃破されるドイツ軍歩兵部隊。それでも生き残った歩兵部隊は高地へ向けた最後の突撃を敢行する。その結果は・・・。ドイツ軍突撃部隊全滅
ドイツ軍による最後の突撃は無残な結果に終わった。
感想
面白い。前日にプレイしたSaipanに比べると、動きが激しい分ゲームとしての面白さは圧倒的にこちらが上だ。ルールやシナリオの詰めにやや甘さを感じる部分もあるが(一部のイベントが意味不明等)、許容範囲内だろう。このシナリオで感銘を受けたのは迫撃砲の有効性である。通常迫撃砲は火力が小さく射程距離も短いので戦術級ゲームでは弱い存在として扱われている。しかし本作は違う。確かに火力は小さく、射程距離も短い。しかしそれを補って余りある柔軟性がある。師団直属の重砲兵部隊は師団フォーメーションチットを引かなければ射撃できない。しかし迫撃砲は連隊フォーメーションチットでも射撃できるので、射撃機会が2倍になる可能性がる。その分敵に打撃を与える機会が増える。
さらに重砲は自力移動できずトラックの力を借りて移動するしかないのに対し、迫撃砲は自力で移動できるのでより迅速な移動が可能だ。その結果随意有利な地点に移動できるので射程の不利を十分補える。
今回プレイしたシナリオでは、重砲火力では両軍大差がないが、迫撃砲火力は米軍8ユニットに対して独軍は3ユニットと大きな差がある。さらに米軍の迫撃砲は集中射撃が可能なためさらに火力が向上する。両軍の歩兵部隊の損害に差がついたのは迫撃砲火力の違いによる所が大きいと思われる。
さらに重砲は自力移動できずトラックの力を借りて移動するしかないのに対し、迫撃砲は自力で移動できるのでより迅速な移動が可能だ。その結果随意有利な地点に移動できるので射程の不利を十分補える。
今回プレイしたシナリオでは、重砲火力では両軍大差がないが、迫撃砲火力は米軍8ユニットに対して独軍は3ユニットと大きな差がある。さらに米軍の迫撃砲は集中射撃が可能なためさらに火力が向上する。両軍の歩兵部隊の損害に差がついたのは迫撃砲火力の違いによる所が大きいと思われる。
Saipanの時にも感じたが、戦車の役割は劇的である。今回登場したのは米軍のM10駆逐戦車3ユニットだけであったが、駆逐戦車であっても火力は歩兵に比べると圧倒的であり、かつFire Zoneを遠方に展開できるので、敵の連絡線を断つこともできる。また戦車が随伴することで歩兵の防御力は高まり、所謂「歩戦共同」の効果が期待できる。今回の対戦で最終Turnに米軍が独軍の突撃を撃退できた要因の1つに歩戦共同効果が挙げられよう。
少し気になるのは発令ポイントチェックの影響が大きいこと。毎Turnダイスチェックでチェックに成功すれば3ポイント、失敗すれば1ポイントの発令ポイントが得られる。成功率は部隊によって異なるが、20~70%ぐらいだ。今回のシナリオでは両方とも50%であった。
発令ポイントはアクションチット購入のために消費されるため、発令ポイントの大小は活性化できる部隊の大小に直結する。その影響が極めて大きいので、発令ポイントチェックのダイス目の良否によって結果が振れ易い。
あとイベントも一部派手なもの(発令ポイント3~4ポイント追加など)があり、イベントダイスの出目によって結果が決まってしまいそうな内容のものがある。このあたり、戦術級ゲームだから仕方がないといえばそれまでだが、競技用のゲームとしては少し疑問に感じる部分ではある(ソロプレイなら大いに盛り上がりそうだ)。
発令ポイントはアクションチット購入のために消費されるため、発令ポイントの大小は活性化できる部隊の大小に直結する。その影響が極めて大きいので、発令ポイントチェックのダイス目の良否によって結果が振れ易い。
あとイベントも一部派手なもの(発令ポイント3~4ポイント追加など)があり、イベントダイスの出目によって結果が決まってしまいそうな内容のものがある。このあたり、戦術級ゲームだから仕方がないといえばそれまでだが、競技用のゲームとしては少し疑問に感じる部分ではある(ソロプレイなら大いに盛り上がりそうだ)。
今回は歩兵中心のシナリオであったが、別のシナリオでは両軍に戦車部隊が登場し戦車同士の戦いを楽しめそうだ。次回は戦車部隊同士のシナリオを試してみたい。