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NATO(以下、本作)は1983年に米国Voctory Games社から出版されたシミュレーションゲームだ。テーマは1980年代後半を想定したNATO(北大西洋条約機構)とWP(ワルシャワ条約機構)との欧州大陸における地上戦闘だ。フルマップ1枚には東西ドイツとデンマーク、そしてオランダ、ベルギー、フランス、チェコ、ポーランドの一部が描かれている。1ユニットは連隊~師団で、基本的なユニット規模は師団である。海上部隊は登場せず、航空部隊は航空ポイントによって抽象化された形で登場する。1Hex=15マイル、1Turn=2日。

本作のシーケンスは移動・戦闘を繰り返す標準的なスタイルで、メイアタック、戦闘後前進あり、機械化部隊は2ヘクスの戦闘後前進可能、2ステップで弱ZOC、3ステップ以上で強ZOCを形成、スタックは6ステップまで、補給ルールあり。といった所だ。

本作で特徴的なのは、まず化学戦のルール。WP側のみが化学戦を実施でき、2~4シフトのコラムシフトを得る。また攻勢支援ルールがあり、攻勢支援下の司令部は麾下のユニットの攻撃力を倍加する。このゲーム、平地で3-1以上の比率が立てば相手に何らかの損害を強要できるレベルのCRTなので、攻撃力倍加は結構有効だ。他には移動スタイルに特徴があり、一般的な戦術移動、戦略移動の他、空輸、空挺降下、ヘリボーン、海輸、両用戦移動等がある。

忘れてはいけない戦術核戦争。特に負けそうになったNATOプレイヤーは、最後の手段として戦術核兵器を使用する可能性が高い。戦術核兵器の威力は絶大で、特に核運搬手段の過半が自走化されているNATOは有利である。NATO側が核兵器を先制使用した場合、恐らくWPの固定型核ミサイルサイロは一撃で全滅するだろう。前進を続けるWP機甲部隊も核ミサイルの攻撃には一たまりもなく壊滅する。つまり戦術核戦争の勃発は、地上における通常戦争の結果を無意味にしかねない程強力なものだ。
無論、無制限に核兵器を使える訳ではなく、戦術核を先制使用した側は、1/2の確率で破滅的な戦略核の報復を招き、決定的敗北を喫する。しかし確率1/2というのは敗色濃厚なプレイヤーにとっては魅力的な数字であり、これまで一方的に殴られていた鬱憤を晴らす機会を得るチャンスとなる。従ってデザイナーの意図に関わらず、本作では(何らかの紳士協定を結ばない限り)戦術核戦争に発展する可能性が極めて高い。

余談だが、筆者が本作を始めてプレイしたのは、確か30年以上前だと思う。その時、筆者はNATO側を担当したのだが、WPの機甲突破に戦線がズタズタに引き裂かれてしまい、ライン川までWP軍の戦車が迫ってきた。筆者は最後の手段として核使用を選択。それが見事に奏功して密集隊形で前進してきたWP側機甲集団に大打撃を与えた。これにより相手プレイヤーは戦意を喪失、筆者は勝利を得たのだが、その後しばらくこの対戦相手氏は現在戦ゲームの対戦に決して応じてくれなかった。つまり筆者は「ゲームに勝って、対戦相手を失った」のである。

今回はソロプレイなので、戦術核の使用は状況に応じて判断しよう。ただし対戦の場合は、戦術核の使用可否について予め対戦相手氏と合意を取っておくのが望ましいと筆者は考える。

今回プレイしたのは、一番バランスが良好と思われる「戦術奇襲」シナリオとした。

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第1Turn(X-2Day)

第1Turnは戦争直前の両陣営の移動を行う。WPは主力の機甲集団を鉄のカーテンの背後に前進させて突破に備える。また後方の西ベルリンは第2梯団の部隊で包囲。空中機動部隊は空輸によってフルダギャップ前面に展開する。

対するNATO軍。まず基本的な方針だが、最初は無理に戦線を張る必要はないと思う。というのも、国教守備隊ルールによってWP軍の侵攻部隊は国境線突破に4MPを消費してしまう。従って国境を越えてくるWP機械化部隊の移動ヘクス数はせいぜい2~3へクス。そこを計算に入れて包囲されないように注意すれば、戦線を張るよりはスタックして防御力を強化した方が有利だ。無論、ヘリボーンや空挺部隊を投入することでNATOのスタックを包囲することは可能。しかしその場合はこれら貴重な部隊をWP側に消費を強いることになるので、他方面でNATOに利する。特に空挺部隊はNATO軍りフォージャーヘクス(事前備蓄地点)を制圧可能な唯一の部隊なので、こちらに使いたい。
そのリフォージャーヘクスだが、初期配置では全くの裸である。これではWPの空挺部隊にとって格好の目標となってしまう。とはいえ、第1Turnの移動制限やフランス軍のやる気のなさによって通常移動でリフォージャーヘクスに移動できるNATO軍部隊は少ない。数少ない例外が3つの西ドイツ空挺連隊で、これらを使えばリフォージャーヘクスを守れる可能性がある。
だが、ここで厄介な問題が生じる。デンマークだ。デンマークには1つの主要都市と4つの小都市が存在する。そのうち主要都市1つまたは小都市2つが陥落したらデンマークは降伏する。主要都市(コペンハーゲン1310)にはデンマーク軍首都防衛師団が配備されているので簡単に陥落することはない。しかし4つの小都市はいずれも無防備で、WP軍の両用戦や空挺攻撃から完全に無防備だ。これを守るためには西ドイツ軍空挺連隊を投入する必要がある。しかしデンマークに彼らを投入するとリフォージャーヘクスが無防備となる。はてさてどうしたものか・・・。

NATO側の出した結論はリフォージャーヘクスの守備を優先することであった。その結果、デンマークの小都市群は無防備となるが、幸いこれらの小都市に連絡線を繋がなければWPはデンマークを屈服させることはできない。そこでNATOは1~2個師団程度の機械化部隊をユトランド半島に派遣し、ユトランド半島の根元を押さえることでデンマークの脱落を阻止する作戦を取った。これでもWP軍の全力攻撃からデンマークを守りきることはできないが、NATOにとって貴重な時間を稼いでくれるだろう。

後は南ドイツに展開する部隊を可能な限り北上させてラインへ突破を図るWP軍の阻止に回す。あとは運を天に任せるのみだが、ハテサテ・・・。

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第2Turn(XDay)

WPによる西ドイツ侵攻が開始された。バルト海を進撃するソ連海軍海兵師団は、西ドイツ海軍のトーネード攻撃機によって半数を失う損害を被ったが、残り半数がデンマークのフェリーヘクスを占拠し、ヘリボーン部隊2個、海兵隊がデンマークの2都市を占領した。この2都市に補給線を繋げることができれば、デンマークは降伏する。

NATOの航空攻撃はデンマークを目指すソ連第2親衛戦車軍に向けられた。戦車師団2個がステップロス。さらに攻勢支援マーカーが制圧される。そのため、デンマークを目指すソ連第2親衛戦車軍は、突破に失敗。キール(2116)を守る西ドイツ第6装甲擲弾兵師団(6-5-6)(攻撃力-移動力-防御力、以下同じ)は現地点を死守している。

WP空挺連隊4個がライン川後方のリフォージャーヘクスに降下する。降下は作戦は全て成功する。空挺部隊はそのままリフォージャーヘクスを守る西ドイツ空挺連隊(1-A-1)を4-1で攻撃。これを撃退して事前備蓄基地を蹂躙した。これにより米第3装甲騎兵連隊(3-4-3)と第1機械化師団(3-4-4)がヨーロッパ到着を前にして戦力を失った。

中部戦線では、ハノーバー(3117)とカッセル(3618)の間隙にWP軍の主力であるソ連第1親衛戦車軍と同第8親衛軍が攻勢支援マーカーの支援を受けて前進を開始する。西ドイツ第2装甲擲弾兵師団(6-5-6)は圧倒的兵力の攻撃を受けて文字通り壊滅した。

NATO軍はデンマークの陥落を回避するため、西ドイツ軍第11装甲擲弾兵師団(4-5-4)と同国民防衛連隊(HSK)を派遣した。そしてデンマーク軍の共同でユトランド半島とフェン島を結ぶハイウェーを抑えているソ連海兵連隊を撃退した。

その他、ライン川後方に降下したソ連空挺部隊3個連隊に対して西ドイツ軍第10装甲師団(8-5-5)他を主力とするNATO軍が包囲攻撃を実施。7-1の高比率攻撃によってソ連軍空挺部隊を壊滅させる事に成功した。

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第3Turn(X+2Day)

WP軍は化学兵器の使用を宣言した。全戦線に渡って大規模な攻撃をWP軍が実施する。
WP第2親衛戦車軍はユトランド半島付け根を守る西ドイツ第6装甲擲弾兵師団(4-5-4)を攻撃する。化学兵器を併用した攻撃は熾烈を極め、西独装甲擲弾兵師団は壊滅寸前になって後退していく。
その南、ハンブルク南方ではWP第2親衛軍が西ドイツ第3装甲師団(4-5-4)に対して化学兵器を併用した攻撃を実施する。第3装甲師団はたまらず後退。ブレーメン(2720)にて再編成を行った。
フルダ渓谷では、西ドイツ軍2個機械化師団(第5装甲師団=7-5-6、第1装甲擲弾兵師団=6-5-6)のスタックに対して、WP第8親衛軍が攻撃を実施する。ここでも化学兵器が使われ、西ドイツ軍は損害を最小限に食い止めるために後退していく。
NATOは防衛部隊を結集して防衛ラインを張る。このTurn、デンマークの防衛部隊が多数登場した。これについてWP側が予め知っていたなら、オーバーランして増援の登場を阻止することは可能だっただろう。
WP軍の航空攻撃によってフランス軍第1機甲師団(3-4-2)とベルギー軍第1機械化師団の残余(1-4-2)が壊滅した。化学兵器の使用によって航空優勢は再びWP側に移りつつあった。

化学兵器が使用されると、NATOの航空攻撃ポイントが半減する。化学兵器による航空整備要員の被害や防護服の効果だろうが、NATO側だけが一方的に減らされるのは釈然としないなぁ・・・。

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