Game Journal#69「南方作戦1941」(以下、本作)は、2018年に発売された1941~42年前半における日本軍の南方侵攻作戦を扱ったシミュレーションゲームである。システムは、同紙39号「真珠湾強襲」や60号「本土決戦1945」等でお馴染みの強襲システムで、陸海空の統合作戦を簡単なルールで再現できるのが特徴である。1Turnは約半月、1ユニットは連隊、主力艦1隻、巡洋艦以下2~数隻、航空機数十機である。

イメージ 11強襲システムについて簡単に紹介しよう。これはAHのアルンヘム強襲のようなシステムにデッキ構築型カードドリブンシステムの要素を加えたものと考えれば良い。アルンヘムシステムでは、個々のユニットは各Turnに移動又は攻撃を1回しか実施できず、しかも実施後は弱体化するため相手からの逆襲に対して弱くなる、というのが特徴であった。従って攻撃を行う場合は必ず複数の部隊を用意しておき、射撃によって相手を制圧する部隊と移動によって敵に近づく部隊を分ける必要があった。所謂「Fire & Movemant」の概念である。
一方強襲システムでは、移動又は攻撃を行った部隊は脆弱になる、という点は同じだが、、一度行動した部隊を表に戻す「補給」、同じグループが2回連続して行動できる「電撃戦」等のカードによって局所的な戦争資源の集中を再現していた。
またどのような部隊でも1Turnに必ず行動できるアルンヘムシステムとは違い、強襲システムでは行動するためにはカードプレイが必要である。通常は1枚のカードで1グループが移動又は攻撃できるとなっているが、「独立部隊」「共同攻撃」のように複数部隊を同時に活性化させるカードもある。さらに航空部隊はカードによる活性化なしで航空攻撃を実施でき、しかも攻撃範囲が広く攻撃力も大きいので、非常に便利である。ただし航空部隊は敵の航空攻撃に対しては脆弱であるが。
アルンヘムシステムは元々地上戦に特化したシステムであった。それにに対して強襲システムは陸海空立体作戦を扱っている。従って陸上部隊以外に艦船や航空機に関するルールも必要になる。まず艦船は海上エリアのみ移動可能である。陸上エリアには進入できない。艦船が陸上にいる航空機や地上部隊を攻撃することはできない。空母だけは航空攻撃力で地上を攻撃できるが、空母以外の艦船は地上に影響力を行使できない。従って艦船の地上戦に与える影響は極めて限定的なものになる。
逆に地上部隊が海エリアに進入することは可能である(輸送中とみなされる)。ただし海エリアにいる地上部隊は敵の攻撃に対して脆弱である。

イメージ 12強襲システムの解説は以上だが、本作の特徴について触れておく。本作では複数のカードを組み合わせて使用すること(所謂「コンボ」)は禁止されている。これはシステムの簡便化という観点からは好ましいと思う。そもそも「コンボ」というのは、カードゲームから出た概念だと思うが(カードゲームには詳しくないので間違っていたらゴメン)、現実との対比を重視するウォーゲームの世界では「コンボ」は現実のどのような事象をシミュレートしているのか良く分からない。さらにコンボの構築に頭を使うことでプレイの煩雑化、長時間化につながる。コンボをなくしたことでシステムが簡便となりプレイ時間の短縮につながるのであれば、良いことだ。
他には海上における陸上部隊の移動に大幅な制約が加わり、移動力2以下、同時に移動できるのが2ユニットまでとなった。またこれを補うために「上陸作戦」カードが加わり、マレー半島、リンガエン湾、ジャワ等への大規模上陸作戦が再現される。またボルネオ等で日本軍が実施した小規模部隊による挺身攻撃を再現するため「独立部隊」カードを使うことで移動力3での上陸作戦が実施できる。

とまあこんな感じのゲームである。システム解析だけではプレイ感覚がわからないので、早速実プレイを試してみた。ソロプレイである。選択ルールは一切使わなかった。

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1Turn(41Dec)

イメージ 7両軍とも基本的にはGJ本誌に書かれている手番に準じで行動する。本誌で具体的な手番の進め方が書かれているのは有難い。「ヒノデハヤマガタ」カードで南シナ海、フィリピンに対する航空撃滅戦が成功し、英極東艦隊、米極東航空軍は壊滅した。
その後「上陸作戦/海上輸送」カードでマレー半島、ルソン島に対する上陸を敢行した。フィリピン上陸作戦を掩護していた帝国海軍第3艦隊は、そのまま南下してセレベス海に進出。米アジア艦隊を捕捉し、「酸素魚雷」で同艦隊を撃滅した。これによりフィリピン包囲が完成。フィリピンの米比軍は連絡線を断たれる。
連合軍はボルネオ・セレベスに増援部隊を輸送。またマレー沖に集結した日本艦隊に対してゲリラ的な航空攻撃を仕掛けて駆逐艦1ユニットを撃沈した。さらにパレンバンで「油田破壊」を行ったが、油田マーカーを裏返したら「0VP」になった。

このTurn、連合軍は3.5VPを獲得した(ユニット除去0.5VP、要塞確保3VP)。

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2Turn(42Jan)

イメージ 8日本軍は香港攻略戦に着手する。「電撃戦」で帝国陸軍第23軍が九龍半島を渡って香港に進入し、要塞を撃破する。さらに台湾から飛来した航空部隊が残存部隊を急襲。仏印に展開する航空部隊もそれに協力し、香港は陥落した。切り札「Yesか、Noか」を使う余地もなかった。
マレー半島でも日本軍は順調に進撃を続け、「補給」や「電撃戦」を集中投入してマレー半島の英印軍を駆逐した。
その頃、バリクパパンで「油田破壊」を試みた連合軍はバリクパパンに有力な(=2VP)の油田を発見した。日本軍は破壊を阻止するためにブルネイを占領した川口支隊をバリクパパンに送り込んだが、連合軍の「待ち伏せ」によって川口支隊は後退を余儀なくされる。

このTurn、連合軍は2VPを獲得した(要塞確保2VP)。累積5.5VP

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3Turn(42Jan)

イメージ 9日本軍はバリクパパンへの海上連絡線を断つべく近藤中将の第2艦隊をジャワ海に進出させた。9ユニットの大艦隊。しかも必殺の「酸素魚雷」を持っている。ジャワ海にはドルーマン中将麾下のABDA連合艦隊が5ユニットを擁していたが、何するものぞ。酸素魚雷の錆にしてくれん。
必勝の信念で戦場に挑む近藤部隊だが、ダイス9個振って命中は4個。4以下で命中なんで最悪でも5個ぐらいの命中は期待したのだが・・・。酸素魚雷が早発でもしたのか・・・。おかげでドルーマン中将の旗艦である軽巡「デ・ロイテル」は生き残り、日本軍はジャワ海の制海確保に失敗した。さらに制空権のない海域への水上部隊突入であったため、近藤部隊は敵機による手痛い反撃を食らうことになる。駆逐艦2ユニットが沈没し、残る駆逐艦は1ユニット。艦隊の対潜警戒に不安を覚えることになる。
一方バリクパパンへは本土から送られてきた第2師団、先に撃退された川口支隊、さらに「空の神兵」第1空挺団を投入して奪取を図る。しかし増援を得て強化された英蘭軍の抵抗は激しく、日本軍は未だにバリクパパンを奪取できない。
マレー半島ではいよいよ日本軍がシンガポールに侵攻する。「Yesか、Noか」で要塞ユニットを除去した日本軍であったが、守備隊の抵抗は激しく、日本軍は未だにシンガポールを奪取できない。
フィリピンではルソン島エリアの米比軍が航空攻撃で壊滅。戦いの焦点はバターン半島とコレヒドール要塞に移ってきた。

このTurn、連合軍は3VPを獲得した(ユニット除去1VP、要塞確保3VP)。累積8.5VP

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4Turn(42Feb)

イメージ 10日本軍はシンガポールに対する総攻撃を開始した。「電撃戦」による激しい攻撃に英印軍は耐えられず、シンガポール陥落。史実通り紀元節でのシンガポール陥落であった。
ジャワ海に展開していた近藤中将の第2艦隊は、宿敵「デ・ロイテル」を「酸素魚雷」で撃破。ジャワ海の制海権を奪取した後、急速後退して空襲圏外へ退避。ミンダナオ沖の軽空母「龍驤」部隊と合流した。
フィリピンでは日本軍がバターン半島に侵攻する。しかし物資不足のため本格的な攻勢を仕掛けるには至らず。航空攻撃による嫌がらせに終始する。
このTurnの焦点はバリクパパンの油田である。第2師団を主力とする日本軍は「電撃戦」によってバリクパパン油田の確保を図るが、英蘭軍はギリギリの所で踏みとどまり、バリクパパンは未だに英蘭軍が支配している。しかし油田の爆破には失敗。バリクパパン攻防戦は次Turnに持ち越しとなった。

このTurn、連合軍は1VPを獲得した(要塞確保1VP)。累積9.5VP


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