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Draco社「Normandy - The Beginning of the End」(以下、本作)は、同社のWar Storm Series(以下、WSS)と銘打ったシリーズの1作品である。WW2の陸上戦闘を戦術レベルで扱った作品で、1Hex=150~200m、1Turn=12~15分、1ユニットは1個小隊を表す。
WSSのシステムは比較的オーソドックスで、中隊単位で交互にアクションを繰り返すというもの。1度のアクションで1個中隊が活性化でき、両方とも1個中隊単位で活性化を繰り返す。両軍ともパスを実施できるが、両軍が連続してパスをするとTurn終了となる。
戦術級なので、射撃戦、白兵戦、間接射撃、対戦車戦闘、航空攻撃、防御施設等があり、ルール量は決して少なくない。

という訳で早速チャレンジしてみた。

シナリオ1.Patrolling the Front

イメージ 81944年6月9日、米第101空挺師団に所属する1個大隊がカランタンに向けて前進中にドイツ軍の抵抗線に遭遇した場面を描いたシナリオである。米軍は空挺大隊に所属する3個中隊が登場。対する独軍にはやはり降下猟兵(第6降下猟兵連隊)に所属する3個中隊が登場する。ほぼ同兵力の両者による歩兵同士の遭遇戦闘だ。筆者は米軍を担当した。

イメージ 9先手を取った米軍は戦線中央の村落に前進し、そこに2個中隊布陣した。また戦線左翼からは1個中隊が前進し勝利得点ヘクスを押さえる。対するドイツ軍は勝利得点ヘクスを押さえつつ、米軍への攻撃チャンスを伺う。

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イメージ 13戦線左翼で両軍が接触する。1個中隊同士の歩兵戦闘だ。さらに戦線中央でもっ両軍が接触する。先手を取ったのがドイツ軍で米軍は1ステップを失ったが、米軍も直ちに反撃。独軍に4ステップの損害を与えた。地形の有利さと米軍の自動小銃の威力が遺憾なく発揮された。

WWSの射撃システムはファイアーパワー方式だが、戦闘結果はユニット固有の防御力に割り当てられるのではなく、目標地形によって割り算される。例えば平地は防御効果2、果樹園は防御効果3という具合に。射撃戦で"8"の結果を得たとすると、平地の目標に対しては4Hit(=8/2)となり、果樹園の目標に対しては2Hit(=8/3)となる。
付け加えると、地形効果は射撃のタイプによっても違っており、ソフトターゲットに対する直接射撃は地形の影響を最も多く受ける。だから市街地のように地形効果の大きな地形に対しては、歩兵による射撃戦よりも砲兵射撃の方が効果が出やすくなっている。

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さらに両軍は距離を詰めて白兵戦。しかしドイツ軍右翼の1個中隊がまず損害過多で撤退。さらにもう1個中隊も戦力を失う。全戦力の2/3を失ったドイツ軍がこの戦いを失った。

米軍の勝利
所要時間約1.5h

感想

地形効果の大きさを強く感じた。また米軍の自動火器効果(射撃結果表2D6でDRM-1)が結構大きいと感じた。

シナリオ3.La Nueve

イメージ 10"La Nueve"とは自由フランス軍第2機甲師団所属に所属する部隊名で、スペイン人を中核とする部隊らしい。このシナリオは、1944年8月に"La Nueve"がアルジャンタンに向けて南下中にドイツ軍の装甲擲弾兵部隊と遭遇した場面を描いている。
自由フランス軍はシャーマン戦車を装備した1個戦車中隊と機械化歩兵2個中隊、そしてM7プリーストを装備した機動砲兵1個中隊からなる。
ドイツ軍は、2個装甲擲弾兵中隊だが、そのうち1個中隊には強力無比なパンター戦車からなる1個小隊が含まれている。

筆者は自由フランス軍を担当した。

ここでWSSにおける対戦車戦闘について紹介したい。基本的なシステムは対歩兵射撃の場合と同じで、違いは対戦車火力を使う点と地形効果の違いだが、もう1つ大きな違いがある。それは装甲値の存在だ。AFVにはそれぞれ固有の装甲値が与えられており、また対戦車火力には固有の貫通力が与えられている。貫通力が装甲値未満なら原則として損害が出ない。救済ルールとして貫通力が装甲値-2以上ならラッキーヒットの可能性があるが、それ未満なら全く戦果の可能性がない。
例をあげると、貫通力が最大で9のシャーマン75mm砲なら、装甲値12のティーガーや同13のパンターに対して全く無力である。モラルチェック等の可能性すらない。シャーマン75が何台集めてもパンター1個小隊に傷一つつけられない。些か極端な気がするが、まあWSSでは戦車戦での勝敗はあまりシナリオの勝敗に関係ない場合が多いので、気にする必要はないのかもしれない。
これがもう少しスケールの小さなゲームなら側面に回り込む等の技が使えるのだが、そういう技が使えない本作の場合は、もう少し対戦車戦闘の結果に変化が欲しかったようにも思う。

イメージ 11幸い我がシャーマン戦車中隊には1ユニットだけ76mm砲装備の小隊が含まれている。これなら距離2ヘクス以内で貫通力13なので、装甲値13のパンターを撃破可能だ。そこで75mmシャーマンを弾除けに使いつつ、76mmシャーマンでパンターを始末しようと思う。

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上図は独軍の初期配置である。中央の森林地帯に陣取るのはパンター戦車を装備した中隊。左翼に陣取るのは歩兵中心の中隊である。当然ながら弱そうな左翼から叩くことにする。ちなみに自由フランス軍の勝利条件は、マップ中央部につながる2本の道路を確保し、そこに隣接する独軍を排除することである。

我々は機械化歩兵1個中隊を戦線右翼に回して牽制としつつ、主力となる戦車、機械化歩兵、機動砲兵各1個中隊を戦線左翼に回す。

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イメージ 12直接射撃でM7プリーストが砲火を開いた。砲兵2個小隊の射撃をまともに食らった独軍歩兵陣地は一気に5ステップもの損害を被ってしまう。ボカージュ地形は視認線を妨げる効果はあるものの、頭上から降り注ぐ砲火に対する耐性は弱い。さらにシャーマン戦車が榴弾射撃を浴びせかける。一連の射撃を受けて独軍装甲擲弾兵中隊は瞬く間に壊滅してしまう。

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イメージ 14残るはパンター戦車を含む1個中隊のみ。自由フランス軍は正面に戦車と機動砲兵を配置しつつ、左右から機械化歩兵が独軍を包囲するように回り込む。独軍も座して死を待つのではなく、パンター戦車を前進させてシャーマン戦車との射撃戦を挑んできた。パンター戦車の火力はすさまじく、シャーマン戦車は3ステップを失う大損害を被った。丸々1個小隊が壊滅した計算になる。

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しかし包囲された独軍歩兵が自由フランス軍機械化歩兵の近接射撃によって次々と撃破されていくと、さすがのパンター小隊も浮足立ってきた。自身は全く無傷でも、同じ中隊に所属する小隊が損害を被ると、中隊全体でモラルチェックを食らってしまうのだ。

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結局、独軍中隊がモラル崩壊を起こして壊滅。パンター小隊は敵の射撃によってではなく自身のモラル崩壊によって壊滅した。

自由フランスの勝利
所要時間約2.0h

感想

砲兵の直接射撃か強烈である。戦車戦の結果が実は大して意味がないという点、これまでのメカ対決中心の戦術級ゲームとは全く異なる感じがする。その方がリアルに感ずるのは事実。


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