Draco社「Normandy - The Beginning of the End」(以下、本作)は、同社のWar Storm Series(以下、WSS)と銘打ったシリーズの1作品である。WW2の陸上戦闘を戦術レベルで扱った作品で、1Hex=150~200m、1Turn=12~15分、1ユニットは1個小隊を表す。

今回、本作にチャレンジしてみた。前回は歩兵中心のシナリオと、戦車や砲兵が出てくるシナリオにそれぞれ1本ずつ挑戦してみた。

シナリオ11.Heading to Saint-Lo

イメージ 10時間があったので、もう少し大きなシナリオに挑戦してみた。今度のシナリオはマップ2枚を使う本格的なものである。1944年7月26日、米軍の連隊戦闘団がサンローの西でドイツ軍第275歩兵師団と戦車教導師団の残余が守る防衛ラインに挑んだ。
米軍は機械化歩兵6個中隊、自走迫撃砲2個中隊、そしてシャーマン戦車2個中隊だ。さらに航空支援が登場する。
対する独軍は、歩兵4個中隊、迫撃砲1個中隊、対戦車砲1個中隊(75mmPak40装備)、駆逐戦車1個中隊(4号駆逐戦車ラング装備)だ。

筆者は独軍を担当する。

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イメージ 11独軍の配置については上図を参照されたい。画面中央の村落には歩兵4個中隊が集中配備されている。その前面には1個中隊ずつがスタックして配置されている。画面上から迫撃砲中隊、対戦車砲中隊、駆逐戦車中隊である。道路を扼する所に布陣しているのが、4号駆逐戦車装備の駆逐戦車中隊だ。

今回は守備側なので米軍の出方に対応することになる。米軍は我が左翼(写真の下側)を突く姿勢を見せたので、町を守る歩兵中隊から2個を左翼に向けた。また最前線に突出している駆逐戦車中隊は、3個小隊のうち2個小隊を後退させて守りを固める。

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イメージ 7米軍の攻撃を固唾を飲んで待つ独軍部隊に対して、米軍は航空攻撃を差し向けてきた。A-20ハボック攻撃機の中隊が飛来する。対空砲火が迎え撃つが、外れ。敵攻撃機は密集隊形の我が対戦車砲中隊を襲った。75mm対戦車砲中隊はこの爆撃により壊滅。防衛ラインの中核が撃破された。

対戦車砲を集中配備したのが間違いだった、損害を避けるために分散配備しておけば、航空攻撃の一撃で壊滅することはなかっただろう。

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イメージ 9米軍は引き続いて最右翼の独軍迫撃砲中隊を狙う。8cm迫撃砲GrW34装備の2個小隊とNG42機関銃装備の1個小隊からなるキラースタックだ。平地に布陣した米軍歩兵中隊1個がこのキラースタックから射撃を受けて半身不随になる。別の歩兵中隊がスタックで突撃戦闘をしかけるが、米軍にとって出目悪く白兵戦によって独軍キラースタックを排除できない。結局本シナリオの最後までこのキラースタックは無傷のまま残った。

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イメージ 8ゲーム中盤になって独軍歩兵1個中隊が撃破されて後退。これで独軍の損害は先の対戦車砲と合わせて2個中隊になった。また米戦車中隊が前進してきて突撃支援を実施してくる。戦車の突撃能力は半端ないが、しかし白兵戦時に独軍歩兵による近接突撃を受けて米戦車にも損害が出始める。4号駆逐戦車も戦闘に加入し、米戦車の損害は増加。米軍の戦車1個中隊が戦闘能力を失って後退していく。

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その後米軍は歩戦連合による近接突撃を続ける。独軍は懸命に反撃を行うが、ここにきて戦闘や士気チェックの出目が悪い。独軍歩兵中隊1個が戦闘力を失って後退。これで独軍の右翼が破られた。そこから突破を図る米軍と、それを阻止せんとするドイツ軍。
という所で時間切れでお開きとなった。

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全10Turn中6Turn途中で終了。
米軍有利の状況。
プレイ時間約4時間

感想

正直な所、このまま続けても勝てないと思う。
心残りは先にも書いた対戦車砲の配置の他、駆逐戦車の射撃時にベテランによる右シフトと対戦車車両による右シフトを完全に失念していたこと。これを適用していれば、米戦車の損害がもっと増加したと思うが、残念である。

全般の感想

イメージ 6まず気になった点から。
やや近接突撃が有効過ぎるように思う。防御射撃がやりにくい(リアクションマーカーが置かれているユニットのみが防御射撃を実施でき、1度しか実施できない)ので、突撃部隊の接近が容易。突撃前に攻撃側はモラルチェックが必要だが、モラル値が8とか9とかあると、成功率が高い。歩兵の移動力も5と大きめなので、敵歩兵の射程距離外から一気に接近して突撃に持ちこむことも可能である。例えばCompass社のCSSのように一旦敵に隣接してから、次のTurnに突撃を実施できる、といったような制約を設けた方が良いようにも思える。(1Turn=12~15分なので、突撃前に一時停止があっても不自然はないだろう)

もう1点。小隊規模のゲームながらモラルチェックが中隊単位なので中隊規模のゲームのような感じのゲームをプレイしている感覚になる。確かにユニットは小隊規模なのだが、小隊が集まって行動するので中隊規模のゲームと同じようなプレイ感覚になる。

最大の問題点は完全版の和訳ルールが未だ未整備であることだろう。その点については個人的に本作の和訳ルールを作成したいと思うのだが、なかなか時間が取れないで・・・。

とまあ気になる点ばかり書き連ねたが、今まで戦車同士の撃ち合いばかりが着目されてきた小隊規模戦術級陸戦ゲームの世界で、歩兵戦闘の重要性を表現できている点は感心した。さらに歩兵を制圧するための砲兵の重要性も旨く表現されており、その点はリアルに感ずる。戦車戦自体はかなりアッサリとしているが、本作についてはそれで充分である。

シリーズとしても整備が進んでおり、戦場やシナリオも多彩である。今後の展開が楽しみなゲームシリーズの1つだ。

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