自作空母戦ゲーム「海空戦、南太平洋1942」(以下、本作)。今回は、追加シナリオであるシンプソン湾強襲シナリオについて紹介する。
このシナリオは、2019年5月26日のゲームマーケット春で発売予定の「雑誌、海空戦No.2」に収録予定である。

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「海空戦、南太平洋1942」の概要については-->こちらを参照して下さい。
「海空戦、南太平洋1942」「雑誌、海空戦No.2」の入手方法については-->こちらを参照して下さい。
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シナリオのコンセプト

シナリオのテーマは、1943年11月5日に実施された米海軍第38機動部隊によるラバウル港(シンプソン湾)に対する空襲作戦である。当時ブーゲンビル島に対する米海兵隊による上陸作戦が進行中であった。日本軍は米上陸部隊を撃破すべく重巡を主力とする第1遊撃部隊のラバウル派遣を決定した。同じ頃。中部太平洋タラワ上陸作戦を控えていた米軍は、ソロモン方面で第1遊撃部隊に対抗できる水上兵力を持たなかった(戦艦、重巡は1隻もなかった)。そのため、第1遊撃部隊を阻止する任務は空母2隻を持つ第38機動部隊に託された。しかしそれは虎の穴に飛び込むのに等しい危険な任務であった。

このシナリオは11月5日の空襲のみを扱うシナリオである。いわばシナリオOp.1「ラバウル攻撃」の1943年度版といってよい。従って比較的難度が低く短時間でプレイ可能なシナリオに仕上がっている。

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初期兵力

イメージ 8主役の米第38機動部隊は、空母2隻(「サラトガ」「プリンストン」)、防空軽巡2隻、駆逐艦8隻からなり、艦載機は計11ユニット(計93機)である。他にニューギニアから発進する米陸軍航空隊が11ユニット(91機)、中部ソロモンから発進する米海軍や米海兵隊の戦闘機が22ユニット(176機)で、航空兵力の合計は44ユニット(360機)だ。
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イメージ 9対する日本軍は、当時「ろ号作戦」が進行中であり、ラバウル航空隊の陸上航空兵力に加えて空母艦隊所属の航空兵力もラバウル周辺に展開していた。その兵力は戦闘機19ユニット(171機)、艦爆8ユニット(72機)、艦攻5ユニット(45機)、陸攻5ユニット(45機)、その他2ユニット(18機)で、合計39ユニット(351機)である。総兵力では米軍とほぼ拮抗している。また米軍の基地航空兵力が航続距離の関係上限定的な任務にしか実施できないのに対し、日本側の基地航空兵力はほぼ主任務に全兵力を集中投入できた。その一方で基地における運用能力の制約のため、大量の航空兵力をやや持て余し気味である。その他、重巡7隻、軽巡2隻、駆逐艦6隻がラバウル・シンプソン湾に入港中だが、これらは米艦載機の目標でしかない。

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作戦方針

イメージ 10このシナリオは連合軍が主導権を握っている。日本軍による対基地攻撃はシナリオのルールにより禁止されている(シナリオに登場しない連合軍戦闘機兵力の影響を反映している)ため、日本軍から積極的にVPを獲得することはできない。その代わりラバウルに入港している日本艦隊の損害を一定レベル以下に抑え込めれば、20VPを獲得する。これは日本軍にとって勝利を得るためには十分な得点だ。また上記に失敗した場合、日本軍はラバウルに接近する米空母に対して反撃を行い、これを撃沈破(相手はなんせ宿敵「サラトガ」である)することでVP獲得を狙う。
一方の米軍はシンプソン湾に対する空襲を実施して日本重巡部隊を撃破しつつ、日本機の反撃を躱して戦場離脱を図る。米空母はラバウルにどれだけ接近するかがポイントとなる。遠方から小規模攻撃を繰り返しても大きな戦果は期待できないが、接近して反復攻撃を狙うと今度は日本機の強力な反撃に晒される。

プレイの例

1942年11月5日 0600

イメージ 11ブーゲンビル島西方約50海里、ラバウル・シンプソン湾から210海里(7ヘクス)の位置に到達したシャーマン少将麾下の米第38機動部隊は、歴戦の空母「サラトガ」、新鋭の軽空母「プリンストン」、それを守る防空軽巡2隻、駆逐艦8隻からなっていた。彼らの任務はラバウル・シンプソン湾に集結している日本軍第1遊撃部隊の撃破にある。
第1遊撃部隊。重巡7隻、軽巡2隻、駆逐艦7隻からなる水上打撃部隊。先のブーゲンビル島沖海戦では軽巡4隻からなる米メリル部隊が、日本重巡2隻を基幹とする連合襲撃部隊を撃退することに成功したが、米軍にとって今後も幸運が続くとは限らない。主力艦隊を中部太平洋方面に集中している米軍にとって、ソロモン方面に投入可能な水上部隊はクリーブランド級軽巡を主体とする2個の水上打撃部隊だけであった。戦艦や重巡は1隻もない。第1遊撃部隊の出現は、現在進行中のブーゲンビル島攻略作戦に対する重大な脅威であった。第1遊撃部隊を排除するため、シャーマン部隊は危険を冒して「ラバウル要塞」に接近しているのである。

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イメージ 12攻撃隊発進。2隻の空母から発進したのは、F6F戦闘機40機、SBD艦爆18機、TBF艦攻27機の計85機。第38機動部隊のほぼ全兵力に相当する。その時ラバウル上空には、第3艦隊、第11航空艦隊の零戦が合わせて100機以上が舞い上がっていた。そのうち約90機が米攻撃隊を迎え撃つ。護衛のF6Fは40機。2倍以上の零戦相手に奮戦し、3機を失ったが、3機を撃墜。さらに味方の艦爆、艦攻を零戦の攻撃から完全に守り切った。SBD艦爆、TBF艦攻は停泊中の艦船を「座り込んだアヒル」同然に攻撃を実施した。魚雷2発の命中を受けた重巡「筑摩」が浸水によりバランスを失って転覆する。重巡「高雄」は数発の爆弾が命中して大破する。重巡「熊野」には魚雷1本が命中して中破。さらに旗艦である重巡「愛宕」にも爆弾1発が命中して無視できない損害を被っていた。米軍の損害はSBD艦爆3機である。

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イメージ 13続いてラバウル上空に飛来したのはニューギニア東部地区を発進した米第5航空軍の攻撃隊である。ニューギニア北東岸のドボデュラ基地(ゲーム上はBuna基地)から発進したB-24リベレータ27機とウッドラーク島から発進したP-38ライトニング64機がラバウル上空で合同。日本軍航空基地を狙って攻撃を実施したのである。日本軍航空基地を制圧することで、日本軍航空機による反撃を抑止するためである。先の迎撃戦闘によってラバウル上空を守る零戦は30機前後まで減少していた。レーダーで敵機の飛来を探知した日本軍は、地上で待機していた零戦54機を緊急発進させ、計81機で迎え撃った。
高高度の空中戦。高空性能に劣る日本機は苦戦を強いられ、6機を撃墜したものの損失は9機に達した。他にも被弾機多数。地の利を得ていた空戦であったが、性能面での劣勢は覆せない。B-24の爆撃で地上で18機が大破又は小破した。

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イメージ 14日本軍の反撃が始まる。第1波はカビエン基地を発進した零戦18機、陸攻18機からなる攻撃隊である。「サラトガ」から発進したF6Fヘルキャット8機とニュージョージアから発進した米海兵隊のF4Uコルセア8機、さらにニュージーランド空軍のP-39エアラコブラ16機が艦隊上空を守る。零戦の奮戦でコルセア3機が撃墜され、陸攻隊は無傷のまま輪形陣内部に突入する。激しい対空砲火が攻撃隊を迎え撃つ。VT信管つきの猛烈な砲火だ。18機の陸攻のうち14機が突入前に撃墜された。残り4機が軽空母「プリンストン」に向けて魚雷を放つ。しかし魚雷は「プリンストン」の艦尾を通過。命中は得られなかった。

イメージ 15日本軍の第2波攻撃隊は、ラバウル基地被爆直前に発進した第3艦隊と第11航空艦隊の合同攻撃隊である。零戦18機、艦爆18機、艦攻18機の計54機だ。そのうち艦爆9機は最近実戦配備についたばかりの彗星艦爆だ。昨年10月の南太平洋海戦以来となる空母艦載機による対空母攻撃である。再び迎撃機がこれに向かう。「サラトガ」のF6Fヘルキャット8機、海兵隊のF4Uコルセア16機だ。零戦3機、艦爆6機が迎撃機により撃墜され、艦爆3機が爆弾を投棄して離脱していく。残った艦爆9機、艦攻18機は宿敵空母「サラトガ」に向けて突撃を開始する。
再び対空砲火が火を噴く。しかし大型で鈍重な陸攻とは異なり、小型で俊敏な艦爆、艦攻は対空砲火をかいくぐって目標に殺到する。彗星艦爆3機と艦攻3機が投弾前後に撃墜されたが、残りは「サラトガ」に殺到する。

10本以上の魚雷が「サラトガ」に向けて発射された。しかし「サラトガ」艦長ジョン・キャサディ大佐は魚雷回避の名人であった。艦攻隊の発射した魚雷は悉く回避され、命中魚雷なし。日本軍としては千載一遇の好機を逸した形となる。
彗星艦爆が投下した250kg爆弾1発が「サラトガ」の飛行甲板に命中した。致命傷ではなかったが、「サラトガ」の航空機運用能力に一部支障を来した。

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