写真00


Red Storm(以下、本作)は、2019年に米国GMT社から発売されたシミュレーションゲームだ。テーマは1987年における東西ドイツ上空における航空戦闘で、所謂「第3次世界大戦モノ」のゲームだ。フルマップ2枚には東西ドイツ国境地帯のその周辺が描かれてい。マップの西端にはライン川が流れ、エッセン、デュッセルドルフ、ボン等が描かれている。マップ東端は東ドイツの都市エアフルト。南端はヴュルツブルク、北端はミュンスターあたりになる。1Hexは実際の2.5海里、1Turnは実際の1分間、1ユニットは1~4機の航空機を表している。

今回プレイするシナリオは、シナリオ6「Sanitized Corridors」(「消毒回廊」かな?)。シナリオの解説によると、NATO側の洗練されたSEAD戦術に対して、物量攻勢による対空制圧を本旨とするWP軍は、大量の対レーダーミサイル、チャフ散布、さらには遠隔ジャミングの組み合わせにより、「対空防御無力化地帯」の形成を試みる。それは幅50km、深さ200kmにも及ぶ巨大な回廊で、形勢された回廊を通過してWP側航空機はNATOの後方地域へ自由に攻撃が仕掛けられるようにすることが目的であった、とのこと。
そのためにWP側は、攻撃本隊だけで24機の長距離戦闘爆撃機を用意し、それを護衛する戦闘機が28機、対レーダーミサイルを搭載した大型SEAD機(TU-16Kバジャー)が8機、各種電子戦機(ジャミング、チャフ散布等)が7機、そして戦果確認のための偵察機が2機と、合計69機にも及ぶ大編隊を投入してきたのである。

Tu16


対するNATO側は、6個大隊のナイキ・ハーキュリーズ長距離地対空ミサイル、3個大隊のホークC中距離地対空ミサイル、そして僅か8機の戦闘機でこれを迎え撃つ。果たして「消毒回廊」の形成は成功するのか否か・・・。

Nike-Hercules


今回、私はNATO側を担当した。

本作で一番楽しくかつドキドキするのはセットアップである。特に登場する航空機を決める瞬間ほどドキドキするものはない。しかも重要度も大きい。例えばNATOの場合で言えば、自身の指揮する戦闘機が、最新鋭のF-15、F-16の場合と、旧式のF-104、F-5の場合、戦力がどれほど違ってくるか。考えなくてもその違いは理解できよう。

今回、迎撃側である我がNATO軍には、CAPにつく戦闘機が2隊4機、他に地上待機の戦闘機が2隊4機が登場する。攻撃するWP側航空戦力は戦爆連合約70機の大編隊。戦力的には些か寂しいが、最新鋭機が登場してくれれば何とかなる。
そう思ってダイスを振ったが、結果は今一つであった。
WG_F4_Otto戦闘機は西ドイツ空軍のF-4Fファントムが4機、英空軍のFGR2ファントムが4機。まさに「ファントム三昧」。しかし西ドイツ空軍のファントムは、何故がファントム最大の武器であるAIM-7スパローの運用能力がオミットされたモデル。何でドイツ人はこんな中途半端な機体を採用したのが。今さらながら意味不明である。

WG_F4F


NATO_Nike-Herc_13愚痴っていても始まらないので、取りあえず配置を続ける。今回の主役はどちらかといえばSAM。戦闘機は脇役と考えよう。そこでNATOとしては防空エリアを3分割し、前線直後の領域を「第1SAM防御帯」、その後方地域を「戦闘機防御帯」、さらにその後方の中核部分を「第2SAM防御帯」とした。そして第1SAM防御帯の主役はホークC地対空ミサイル部隊、第2SAM防御帯の主役はナイキ・ハーキュリーズ長距離地対空ミサイル部隊とした。

Map01


果たして、NATOの防御策は吉と出るか凶と出るか・・・。

WP_AF_U序盤、WP軍の攻撃隊はマップの北端沿いに進入してきた。NATO側としては些か厄介な展開である。というのも、WP側が広正面から侵攻してくれれば、敵の侵攻路を横切るように配備されたSAM部隊が全力発揮できる。しかし狭正面から侵攻されれば、SAMの一部が遊兵化してしまう。何とかして敵の戦争資源を消費させたい。幸い攻撃本隊以外の護衛やSEAD部隊は広く散開してきたので、主攻勢軸から外れたエリアのSAMは、SEAD機やCAP機に対して攻撃の姿勢を示した。敵がそちらに対SAM戦力を少しでも割いてくれれば良いと考えたためである。

Map02


RU_Tu16_Elena幸い敵はその手に乗ってきた。NATOのSAMがWP側のCAP機やSEAD機をレーダーで追尾する度にARM(対レーダーミサイル)を発射してNATOのSAMを制圧してきたのである。NATO側はARMが発射される度にレーダーをシャットダウンしてその攻撃を躱す。レーダーシャットダウンしている間はSAMは敵機を追跡できないが、ARMが着弾した後は再びレーダーのスイッチをオンにできる。敵SEAD機のARMは数に限りがあるので、これを繰り返せばいつか弾切れを起こすはずだ。

写真01


その間、NATOの要撃戦闘機は超低空飛行で敵のレーダー探知を避けていた。超低空飛行ではレーダーに探知される可能性が著しく小さくなることに加え、NATO機の場合Turn終了時に超低空にいるとレーダー探知が自動的に解除されるという特徴がある。そのためTurnが進むにつれてWP側編隊は次々と発見されたが、NATOの戦闘機は非発見状態を維持していた。

UK_F4M


NATOが狙っていたのは、WP側のSEAD機が爆撃編隊のような「高価値目標」をCAP機で撃破すること。そのためには敵の護衛戦闘機を避けて何とか「高価値目標」に肉薄したい。とはいえ、WP側も簡単にはNATOの戦闘機を近づけさせてはくれない。両プレイヤーの丁々発止の駆け引きが続く。

NATO側が勝負に出たのは、第7Turnのことであった。これまで超低空飛行を続けていた戦闘機隊のうち、英空軍のFGR,2ファントム2個編隊計4機をズーム上昇で中高度に占位させ、その攻撃圏内にWP側高価値目標を捉えようとしたのである。

写真02


次のTurnに主導権を取った方が勝つ。

RU_MiG29_Stepanovそして運命の第8Turn。主導権を取ったのはWP側だった。上昇することによって姿を晒した英空軍のファントム隊に対し、ソ連空軍最新鋭のMiG-29フルクラムが襲い掛かる。R-27中距離ミサイルの攻撃を辛くも躱したファントム隊だったが、続いて突入してきたフルクラムとの激しいドッグファイトに巻き込まれてしまった。練度では勝る英空軍パイロット達であったが、機体の性能差は如何ともし難く、1機のファントムが撃墜されてしまう。

さらに別の空域では、MiG-23フロッガーの編隊が西ドイツ軍F-4Fファントムを低空格闘戦に巻き込み、ファントム1機を撃墜する。フロッガーは1機が被弾したのみである。

UK_F4_AxeNATOも一矢を報いる。生き残ったFGR.2の別編隊がソ連軍のTu-16バジャーの編隊にSkyFrash空対空ミサイルによるBVR攻撃を仕掛けたのである。ミサイルは惜しくも外れたが、突然の攻撃に驚いたTu-16バジャーの編隊は、搭載していたARM全弾を投棄して逃げていった。このバジャー隊は、後にHawk地対空ミサイルの攻撃を受けて1機を失っている。

その後の展開は、NATOのSAM部隊とWP軍SEAD部隊との交戦。その隙を狙って西ドイツ空軍のファントムが高価値目標を狙う。それを阻まんとするWP側のMiG-23、MiG-29戦闘機。最後は西ドイツのファントムがチャフ散布中のMiG-23を捕捉。ドッグファイトの末、AIM-9Lの攻撃で1機を撃墜した。

写真03


感想

今回のプレイは、11Turnで終了した。WP側の編隊は攻撃航程の半ばぐらいであり、目標まではまだまだ遠い。ただしNATO側の戦闘機は、約半数が戦闘能力を失っている状況なので、この先はSAM部隊とWP側攻撃隊との交戦になるだろう。ちなみにWP側のSEAD部隊は2部隊あったが、1部隊は先述した通りNATO戦闘機の迎撃を受けて撤退。もう1部隊は搭載しているARMを全弾撃ち尽くしたため、これまた撤退中であった。従ってこの後のWP軍はSEAD機の援護を欠いた状態で目標に向けて侵攻する必要があるので、苦戦を強いられることが予想される。

ちなみに今回のプレイ時間はセットアップも含めて7~8時間。それも事前にNATO側の初期配置は準備していての時間である。今回はWP側が敵中奥深くに侵攻するシナリオだったので時間がかかったが、例えばシナリオ3のように最前線を爆撃するだけのシナリオならもう少し短時間でプレイできただろう。今回のような1日だけの例会なら、シナリオ3の方が良かったかも知れない。

まあそうはいってもRedStormはやはり面白い。機会を見つけて再戦したい作品の1つである。

ちなみに、今回プレイしたのは、こんな場所でした。

写真04
写真05


Blue Water Navy The Third World War, Designer Signature Edition Next War Poland Interceptor Ace 2
図解 戦闘機の戦い方 イラン空軍のF-14トムキャット飛行隊 F-15イーグル Flight Manual & Air-to-Air Weapon Delivery Manual F-15C EAFLE UNITS IN COMBAT
A-10サンダ-ボルトII 世界の名機シリーズ 航空戦史-航空戦から読み解く世界大戦史 航空戦 シリーズ戦争学入門 世界の最強軍用機図鑑