(写真1)セットアップ時の状況
(写真2)煙幕を張って逃げる米艦隊と二手に分かれて追う日本艦隊
(写真2)煙幕を張って逃げる米艦隊と二手に分かれて追う日本艦隊
基本戦術
兵力の少ない米側から。史実通りの結果では負けになる。従って日本艦隊に何らかの打撃を与えなければならない。
勝利条件を見ると、敵を中破させた場合に得られるVPが米側が日本側の2倍になっている。であるならば、日本側の1艦を中破させ、あとは逃げの一手で勝ち逃げを狙うのが良かろう。ねらい目は軽巡である。船体数が少ないので中破に持ち込むのは比較的容易だし、駆逐艦のように命中修正もない。手ごろな所に軽巡「多摩」がいる。これをまず撃破しよう。
[解説]目標が駆逐艦級の場合、夾又後の命中判定で不利なダイス修正が適用される
日本側は兵力の優位を生かした戦いを行いたい。特に「ソルトレークシティ」を撃沈したら即座に勝利条件を満たすので、「ソルトレークシティ」撃沈を目標とする。最初の陣形が2列縦陣と不利なのでなるべく複雑な艦隊運動は避けたい。
ゲーム展開
第1ターン
このゲームは両者が既に視認距離に入った状態で開始される。お互いに相手を右舷前方に見た反航体勢で、米艦隊が1列縦陣、日本艦隊が2列縦陣で接敵する。
このターンの主導権は日本軍がとった。
那智、摩耶:距離20キロで射撃開始、目標敵重巡、はずれ
多摩:距離21キロで射撃開始、目標敵軽巡、はずれ
ソルトレーク:目標「那智」、距離20キロ(中距離)、夾又、1発命中、非装甲部、損害1ポイント
リッチモンド:目標「多摩」、距離21キロ、はずれ、
第2ターン
このまま直進すると両軍は近距離ですれ違うことになる。接近戦を嫌った米艦隊は左へ60度回頭。日本艦隊からの離隔を図ることにした。日本艦隊は120度右へ回頭。米艦隊と並行砲戦に入る。日本側3艦(那智、摩耶、多摩)、米側6艦が距離14キロで相対した。この距離なら駆逐艦の主砲も届く。米艦隊全艦隊が一斉に砲撃の火蓋を切る。
ソルトレーク、駆逐艦2が那智を、リッチモンド、駆逐艦2が多摩を狙う。しかしすべてはずれ。
日本艦隊はCP不足で射撃を控えた。
第3ターン
日本艦隊としては遊軍状態になっている第1水雷戦隊(軽巡1、駆逐4)を早く戦列に加えたい。主隊の右後方から続行していた第1水雷戦隊旗艦「阿武隈」が本隊最後尾の「多摩」に続行。ここで日本艦隊は単縦陣形を完成させた。米艦隊は直進運動を続ける。
ソルトレーク、駆逐艦2が「那智」を砲撃。ソルトレークの主砲弾が「那智」を夾又。2発命中。3ポイントの被害を与えた。「那智」小破
リッチモンド、駆逐艦2が「多摩」を狙う。リッチモンドの1弾が多摩に命中。1ポイントの被害
那智、摩耶がソルトレークを砲撃。「那智」の2弾が命中。ソルトレークの2ポイントの損害を与えた
多摩、阿武隈がリッチモンドを砲撃。しかし距離が遠くはずれ。
第4ターン
両者とも夾叉を得ているのでここは厳しいところ。米艦隊は敵の「那智」があと一歩で中破するので我慢することにした。日本艦隊はどうするか?。一旦回避して敵の射弾を回避したい所。しかし兵力で優位な日本軍としては一気に押し切りたい所。ここは「那智」を犠牲にしてもソルトレーク撃破を狙うことにした。
主導権は米軍がとった。
ソルトレーク、駆逐艦2隻が「那智」を狙う。ソルトレークは前のターンに夾叉を得ているので60%で夾叉する。
「外れろ」
日本側プレイヤーの願いも空しくソルトレークの射弾は「那智」を的確に捉えた。2弾が吸い込まれるように那智に命中。2ポイントの損害を与えた。さらに特殊損傷「主砲電路切断」が出たが、こちらは「那智」の対20センチ防御が効を奏し事なきを得た。
リッチモンド、駆逐艦2隻も多摩を狙う。リッチモンドも夾又率60%だったが、こちらは見事に外れた。
待ちに待った日本側砲撃である。那智、摩耶の2艦がソルトレークを狙う。「那智」は前回夾叉を得ているので60%。「摩耶」は集中射撃のペナルティで30%である。しかしなんたることか?。ダイスは7と9。日本艦隊渾身の一撃は、訓練不足のためか、空しく水柱を上げるだけだった・・・。多摩と阿武隈はそれぞれ敵軽巡、駆逐艦を狙う。しかし射程距離の短い14センチ砲は敵に命中することはなかった。
第5ターン
那智の危機である。あと一撃食らえば那智は中破してしまうだろう。しかしここで運命の女神が日本艦隊に微笑んだ。主導権を日本艦隊がとったのだ。全艦直進、敵重巡に集中砲火を浴びせろ。米艦隊はこのまま戦い続ける不利を感じていた。兵力は敵が上。しかも敵の射撃は次第に精度を増しつつある。マクモリス少将は全艦に加速を命じ(速度7)、さらに左60度一斉回頭。そして全艦煙幕の展張を命じた。これで一気に3CPを消費したが、今までの蓄えがあったのでなんとか捻出できた。米軍の展張した煙幕が戦場に広がる。射撃用電探を持たない日本艦隊は、米艦隊を攻撃する術を失った。
慌てた日本艦隊第1水戦を本隊から分離し、2方向から敵を追い詰めることにした。このターン、両軍とも砲撃なし。
第6ターン
米艦隊は再び右60度一斉回頭。日本艦隊と併走する。その距離は13ヘクスで、米重巡は中距離だが、日本重巡は長距離という微妙な距離(せ、せこい)。この間合いを嫌った日本艦隊は左60度回頭して距離を詰めた。那智、摩耶の艦首砲4門がソルトレークを狙う。那智の1弾がソルトレークに命中。1損害を与えた。ソルトレーク小破。これで米艦隊の持っていた速度の優越も失われた。
ソルトレーク、駆逐艦2が那智を狙ったがはずれ。リッチモンド、駆逐2が多摩を狙い、こちらはリッチモンドの1弾が多摩に命中した。多摩に1ポイントの損害。「多摩」小破。
第7ターン
主導権は日本側。第1水戦は一斉に速度を上げた(速度7)。米艦隊はソルトレークの損傷にあわせて速度を6に落とす。
米艦隊、左60度一斉回頭して日本艦隊からの離隔を図る。煙幕展開。その米艦隊の右舷後方から日本側重巡戦隊が、左舷後方からは第1水戦が追う。
ちょっとブレーク
今まで「煙幕越しの射撃は禁止」としていたが、これだと煙幕を張って逃げる米艦隊に対して日本側は手も足も出なくなってしまう。この時期、米側のレーダー射撃は-1のペナルティが適用されるが、中距離以下ならそれなりに当たる。これでは日本側としては踏んだり蹴ったりだ。そこで急遽ルールを変更。煙幕越しの射撃を-2修正で認めることにし、その代わりに煙幕越しの持続射撃は禁止とした。
第8ターン
距離17キロで追撃を続ける日本艦隊は煙幕の隙間から薄っすらと見える敵を砲撃した。那智がソルトレーク、摩耶がリッチモンド、阿武隈が敵駆逐艦を狙う。しかしはずれ。
ソルトレーク、駆逐艦2が「那智」を射撃。リッチモンドは「多摩」を狙う。こちらもはずれ。
第11ターン
米艦隊が久しぶりに主導権を取った。ヒットエンドランのチャンスである。煙幕展張を中止。右へ60度一斉回頭して舷側を日本重巡に向けた。日本艦隊はそれに呼応するかのように右へ回頭。舷側を敵に向ける。ソルトレークの射撃が那智を狙う。しかしスカである。那智、摩耶はソルトレークを集中射撃。しかしこちらもはずれだ。
第12ターン
再び主導権は米軍だ。米艦隊と日本艦隊は距離17キロで並行砲戦を行う。米6艦が一斉射撃。夾又率は悪くなかったがダイス目に見放されて命中はなし。日本艦隊は那智、摩耶、多摩がソルトレークに集中砲撃を浴びせるも、こちらもヒットがなかった。後方から迫る第1水戦は煙幕越しに最後尾の米駆逐艦を狙ったが、こちらも命中なし。
第13ターン
主導権は日本側。米艦隊は再び煙幕を展開して「逃げ」に入る。煙幕越しの日本重巡2艦による射撃ははずれ。しかし敵の左舷に回りこんでいた第1水戦旗艦阿武隈は、煙幕の向こうに敵艦の姿をハッキリと視認した。第1水戦(軽巡1、駆逐4)の射弾がリッチモンドを狙ったが、距離が遠すぎて有効打はなかった。第14ターン
主導権は米軍。煙幕展張をやめて後方から迫る日本重巡を狙う。丁度良いことに距離は13ヘクス。米側中距離、日本側遠距離という例の射距離だ。米艦隊は那智に集中砲撃。しかし運悪く全弾はずれ。対する日本艦隊は不利な条件にもかかわらず那智の射弾1発がソルトレークに命中した。第15ターン
夾又された米艦隊は右60度一斉回頭。日本側の砲火を回避すると共に舷側砲火を日本重巡に向ける。ソルトレークの射弾が遂に那智を捉えた。2弾命中。損害2。那智の累積損害は8に達し、同艦は中破。速度も4に低下してしまった。日本艦隊も集中射撃を浴びせたが、有効打はなかった。
第16ターン
那智の中破は日本艦隊に1つの決断を強いた。あくまで那智と行動を共にするか、それとも摩耶1隻でソルトレークに立ち向かうかだ。ソルトレークの累積損害は現在4。あと3損害与えれば同艦を中破させることができる。それは果たして可能だろうか?。日本艦隊は決断した。摩耶1艦で米艦隊に立ち向かう。無傷の摩耶は米艦隊よりも優速である。足手まといの那智を置いていくことになるが、この際やむをえない。
那智は「独航艦」に指定してその場から速やかに離れようとする。速度が違う2艦が同一ヘクスに存在していると衝突チェックをしなければならないのだ(確率20%)。那智は右へ回頭し、後続する摩耶を避けようとした。
「要するに2以下を出さなければ良いんだろう?」
しかしなんということか。一瞬のミスで那智と摩耶が接触した。2隻の重巡が轟音と共に接触する。摩耶の船体が那智に食い込んだ。舷側が破られ、大量の海水が浸入する。既に大きな被害を被っていた那智はこの衝撃に耐えられなかった。右舷へ急速に傾斜を深めた同艦は冷たいベーリング海にその姿を没した。
摩耶の被害は比較的軽微だったが(2ポイント)、旗艦を失った日本艦隊にもはや戦闘を続行する意思はなかった。生き残った摩耶、多摩、そして第1水雷戦隊は米艦隊から離れて行く。既に浅くない損害を被っていた米艦隊も戦場を離脱。こうしてアッツ島沖海戦は終了した。