もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

2005年11月

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前回予告してから随分時間が経ってしまいましたが、ようやく水上戦ゲームの新シナリオができました。
タイトルは「見敵必戦」。開戦劈頭のマレー攻略戦で、英東洋艦隊と日本艦隊がマレー半島東岸沖で激突していたら、という仮想戦シナリオです。
両軍のオーダーオブバトルは結構悩みました。史実通りの編成では面白くないし、だからといって史実から余りにかけ離れた編成ならプレイヤーの感情移入が難しい。色々考えた挙句、以下のような編成を考えました。
まずは襲撃側の英国艦隊。
主力は「プリンス・オブ・ウェールズ」と「レパルス」の2戦艦、そして護衛する旧式駆逐艦4隻、ここまでは史実通りです。
そして英軍プレイヤーは任意で以下のいずれかを増援として使用できます。
 (a) 戦艦「ラミリーズ」
 (b) 重巡3隻(「ドーセットシャー」「コンウォール」「エクセター」
 (c) 軽巡2隻(エメラルド級)、駆逐艦4隻(ジャベリン級)
どれを選ぶかは英軍プレイヤーの任意です。運動性の低下を忍んでも戦艦を追加するか?。あるいは護衛兵力の強化を図るために強力なジャベリン級駆逐艦を増加するか?。まあエクセター、コンウォール、エメラルド等は当時インド洋にいた兵力だからシンガポールへ増援に赴いても不思議ではないのですが、ジャベリン級駆逐艦は少し強引だったかも知れません。

一方守る日本艦隊。
マレー本隊の「鳥海」「鬼怒」「狭霧」と第7戦隊の「熊野」以下重巡4隻、そして第3水戦の「川内」と駆逐艦7隻としました。隻数では有利なのですが、戦艦を含まないので苦戦を強いられるかも知れません。日本軍プレイヤーの任意で、「熊野」以下4重巡を「金剛」「榛名」の2艦に変更することができます。夜戦だから運動性に優る重巡にするか、それとも砲力を優先して戦艦2隻を投入するか、日本側としては悩みどころです。

あとはテストするだけですが、はてさてどうなることやら・・・。


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第5艦隊(VG)

概要

 「第5艦隊」は、Victory Gamesから発売されたフリートシリーズの第4弾です。フリートシリーズとは、20世紀末における海上戦闘を擬似再現するシミュレーションゲームシリーズで、第1作の「第6艦隊」から最終作の「第3艦隊」まで計5作品がVictory Gamesから出版されました。我が国ではHobby Japanがライセンス権を獲得し、初期3作品(第6、第2、第7)が日本語版として発売されました。1ターンが実際の8時間、1ヘクスが約50海里を表し、複雑な現在海戦を比較的簡単なルールで再現した好ゲームです。
 今回「第5艦隊」の舞台はインド洋。東はシンガポールから西はペルシャ湾までの広大な海域をフルマップ3枚で表現します。主役はいつもの通り米国海軍で、その敵役はこれもまたいつものソ連海軍です。脇役達は多彩な顔ぶれで、まず最有力なのがインド。空母2隻や潜水艦、ミサイル駆逐艦等を持つ有力な海軍です。これはシナリオの指定によって西側についたり東側についたりする蝙蝠のような存在です。またインドのライバル=パキスタンも登場しますが、海軍力が中心のこのゲームではパキスタン軍はやや影の薄い存在です。それでもF-16を持ち、潜水艦、フリゲート艦、ミサイル艇等を持つパキスタン軍は、地域勢力の中では強力な方かも知れません。
その他、この地方フランチャイズのサウジアラビア、イラン、イエメン、バーレーン、オマーン、クウェート、マレーシア、カタール、タイ、UAE、インドネシア等があります。いずれも空軍1ユニットとかミサイル艇1隊といった御登場ですが、サウジだけは(生意気にも)フリゲート艦等を持ち、空軍もトーネードやイーグル(米軍のよりも少し弱いのが笑える)を持っています。そういえばイランの空軍も数だけは多いのでそれなりに有力です。あとインドネシアが潜水艦を保有しているのも少し笑いました。
さらにさらに、遠く遠征軍として、オーストラリア、イギリス、フランス、イタリア軍も登場します。特にイギリス、フランスは空母まで投入するという気合の入れ様です。空母の数では米3、露2、英1、仏1、印2の合計9隻というのは、フリートシリーズでは最大の数ではないでしょうか?。(「第7艦隊」は両軍合わせてたったの5隻!)

システム

 基本的には前作「第7艦隊」のルールをそのまま踏襲しています。しかし細部ではかなり手を加えています。まず戦闘結果表が変わりました。低火力欄が今までよりも細分化され、その結果小さい火力でも敵に損害を与える可能性が高まりました。潜水艦探知表も改訂され、今までよりもより潜水艦が探知し辛くなりました(ただし捜索側のASW値が大きいとダイス修正を得られるため、単純に探知し辛いとも言えないのですが・・・)。そのASW値も、水上艦のそれが大きく減ぜられ、「第7艦隊」では「15」を誇ったロシア「キエフ」級軽空母もここでは「10」になっています。
 対艦ミサイルの種類で今までのシースキマーに加えて高速ミサイルが登場しました。ロシア製ミサイルの大半がこの種類です。また対艦ミサイルに対する防空能力が改正され、シースキマータイプ相手の場合は広域防空力1/2、高速ミサイル相手の場合は近接対空火力1/2になります。結果として、対艦ミサイルは「落としにくく」なりました。
 巡航ミサイルのルールも改訂され、上空にCAPがついている基地に対する巡航ミサイル攻撃は不利な修正が適用されることになりました。
 選択ルールには米海軍のスタンドオフ対潜兵器「シーランス」が登場します。これは3ヘクス離れた距離の敵潜水艦を攻撃できる兵器で、改ロス級とシーウルフ級のみが搭載しています。でも現実の世界では、確か「シーランス」はその後にキャンセルされたと思います。

シナリオ

9本の中級シナリオと3本のキャンペーンシナリオが用意されています。中級シナリオは今までのゲーム同様に短時間で楽しむことができます。キャンペーンはマップ3枚を利用する大規模なものですが、規模に応じて大中小の3段階が用意されており、一番小さいシナリオなら長さ12ターンなので1日あれば十分終わらせることができます。

登場兵器

米軍

 「第7艦隊」から大きく変わっていません。空母3隻、戦艦1隻、イージス巡洋艦2隻という布陣も前回同様です。ユニットのレーティングも大きな変化はありません。今回新たにシーウルフ級の潜水艦が登場しました。しかしその性能は改ロス級を大きく上回ることはなく、性能向上著しいソ連新鋭原潜相手に劣勢を強いられることになります(余談ですが、シリーズ最終版「第3艦隊」で再登場した「シーウルフ」は、ロシア新鋭原潜を上回る性能を獲得し、再び世界最強の原潜となりました。メデタシメデタシ)。
 1つ忘れていました。このゲームでは初めて米国のオハイオ級戦略原潜が登場します。ソ連の基地から遠く、またソ連主要部をその射程距離に収めることができるインド洋は、米戦略原潜にとって格好の隠れ場だったようです。そしてソ連原潜が米戦略原潜を追いかけるシナリオもあります。

ソ連

 初めて空母「トビリシ」が登場しました。前前作の第2艦隊で「クレムリン」という火葬戦記に出てきそうなソ連空母が登場しましたが、今回の「トビリシ」は実艦の姿がかなり明白になってきたということで、レーティングの精度も高くなっています。搭載機は、Su-27とMig-29の艦載機型がそれぞれ2ユニット。その他に電子戦機と早期警戒ヘリを搭載しています。搭載ユニット合計6枚は米空母の8枚に拮抗しうる数ですが、個々のユニットを構成する機数が少ないのでしょう。ユニット単体の能力は米軍機に比べてかなり低く設定されています。あとこの「トビリシ」には対艦ミサイル能力がありませんが、今ではこの空母「クズネツォフ提督」(「トビリシ」の現在名)が大型対艦ミサイル発射機を搭載されていることが確認されています。
 軽空母「キエフ」も健在です。しかしその搭載機Yak-36は航続距離6、空戦力3と殆ど「使えない」レベルにまで性能を下げられてしまいました。実機に対する評価としては妥当だと思います(「キエフ」ファンは泣くかな?)。というよりも今までが良すぎたのでしょう。
 巡洋艦はキーロフ級の「カリーニン」とスラバ級2艦(「マーシャル・ウスチノフ」「チェルボナ・ウクライナ」)が登場します。第7艦隊に比べれば随分豪華な布陣ですね。それでもスラバ級の広域対空火力がソブレメヌイ級駆逐艦以下なのは納得できないところです。これは数値を逆にすべきでしょう。駆逐艦以下については、第7艦隊からあまり変わり栄えしてません。
 とまあソ連水上艦の充実ぶりは旧ソ連海軍ファンにとって感涙モノなのですが、それ以上に旧ソ連海軍ファンを泣かせるのは、第5艦隊に登場する「赤衛潜水艦隊」の精鋭達です。今回新たに登場するのは、シエラ型が2艦、アクラ型が2艦です。シエラ型はヴィクター3型に巡航ミサイル搭載能力を付与しただけの平凡な潜水艦に過ぎませんが、アクラ型は違います。防御力9、速力4は、帝国主義者共が誇らしげに語る改ロス級やシーウルフ級を凌駕し、文字通り「世界最強」の原潜となりました。しかも「深深度潜行潜水艦」ということで静粛性もカウボーイ達のそれを上回っています。ロシアの艦船研究家アンドレイVポルドフ氏が、その著書「ソ連/ロシア原潜建造史」の中でアクラ型について「ソ連原潜の静粛性が初めて米原潜のそれを上回ることになった」と誇らしげに記していますが、その気持ちがわかるように思います。また同時にこの時期米国海軍がソ連潜水艦の急激な静粛化に如何に頭を痛めていたかもわかります。アクラ型と共に巨大なオスカー型原潜も防御力9と深深度潜行能力が与えられました。対艦ミサイル火力も30に強化され、今までに比べてより一層沈めにくい「海のモンスター」になったのです。ただ残念なことに「第7艦隊」で用意されていた65式航跡追尾魚雷のルールは、本作ではなくなってしまいました。

インド

 当時アジアでは唯一の空母保有国であるインド海軍。空母といってもシーハリアー搭載の軽空母に過ぎませんが、それでも洋上艦隊にエアーカバーを提供する貴重な存在です。シーハリアーの性能は、航続力8、空戦力3とYak-36に毛が生えた程度です。一応対艦ミサイル携行能力があるので、防御の弱い艦隊相手には有効です。護衛艦艇も充実していて、ソブレメンヌイ級やカシン改型といった駆逐艦、リアンダーや国産のフリゲート等、その装備(やや小粒ながらも)は米ソの艦隊に比べて左程見劣りしません。
 潜水艦はヴィクター3型の原潜2隻と、ソ連製、西ドイツ製等のディーゼル潜数隻があります。当時インド海軍の原潜購入プロジェクトは、その実体があまり詳しく判明しておらず、このゲームでも半ば推測で1992年~1994年の間に2隻のヴィクター3型原潜をインドは保有することになるであろう、としています。実際にインド海軍が手にしたのは、ヴィクター3型ではなくチャーリー1型で、リース契約によってインド海軍が入手したことが今日では知られています。
 インド空軍は、Mig-25、Mig-29、Mirage2000、Jaguar等を装備する有力な戦力です。ただ航続距離に難のある機体が多い関係上、広大なインド洋で作戦行動するのはやや荷が重いかも知れません。

英、仏、豪

 イギリスは軽空母「アークロイヤル」と護衛艦艇3隻、そして原潜「タービュラント」が登場します。「タービュラント」は1984年就役の新鋭艦ながら、その性能は米海軍の旧式潜水艦「スタージョン」級と同程度でしかありません。
 フランスは空母「クレマンソー」と護衛艦艇3隻、原潜「カサビアンカ」、そして若干の基地航空兵力が登場します。旧式空母「クレマンソー」の搭載機は、しかし新鋭のラファール戦闘機になっています。原潜「カサビアンカ」は、これまた1987年就役の新鋭艦なのですが、そのゲーム上での評価は悲惨なもので、特に対潜戦能力は皆無に等しいです。
 オーストラリアは、水上艦艇数隻とディーゼル潜1隻が登場します。ディーゼル潜は西側の新鋭艦共通の性能で、原潜と戦うにはやや力不足ですが、敵旧式潜水艦や対水上阻止戦ならば十分使えます。航空兵力はF-111とP-3Cが登場します。余談ですが、F-111の空戦力6は、Su-24の空戦力4と並んで本ゲームで納得できないレーティングの1つです。アードバーグでどうやって空対空戦闘するんだあ・・・?。

最後に

 うーん、もう少し各国の兵器に触れたかったのですが、もう紙面がなくなってきました。最後に一言。
 この「第5艦隊」は、フリートシリーズで培ってきたノウハウが集大成された、いわばフリートシリーズの決定版とも言えるゲームです。舞台となるインド洋は一見地味ではありますが、そこには多種多様な国家があり、多種多様な海軍があります。古いゲームなのでデータの古さは否めませんが、逆にこのゲームがテーマとしている1990年前後は、米ソ対決という「ゲーマーの夢」(おいおい)を実現できる可能性があった最後の機会です。「第5艦隊」をプレイし、今や過去となった冷戦時代に思いを馳せるというのも、悪くないのではないでしょうか。

追伸1:第5又は第3艦隊のシステムで「第2艦隊」を作って欲しいと思うのは、私だけではないでしょう。
追伸2:せっかくだからインド洋にJMSDFの補給艦と護衛艦を出しましょうか・・・?


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第7艦隊:ユニット列伝(潜水艦、航空機)

 前回紹介した水上艦に引き続き、潜水艦と航空機について解説してみたいと思います。

潜水艦

ソ連

 ソ連潜水艦はオスカー型、ヴィクター3型、それからマイク型に御登場願いました。
 オスカー型原潜は、対艦ミサイル力26-S6が光ります。この火力は米原潜を抜き、ゲーム中最強の火力です。またASW値、雷撃値も並以上です。ただしその他の性能は米最新鋭原潜の改ロス級には及びません。水中排水量15000トン以上の巨艦が、その性能において排水量7000トンの中型艦に劣るというのは、ある意味ソ連原潜技術の限界なのかも知れません。
 ヴィクター3型はソ連海軍の標準的な攻撃型原潜です。西側の新鋭原潜に比べるとASW値がやや劣りますが、その他の点では西側新鋭艦に左程見劣りしません。ただ対艦ミサイルや巡航ミサイルの装備がなく、対水上雷撃とASW戦に特化した能力は、多目的化しつつある米新鋭原潜に比べると寂しい感は否めません。
 一番右の艦はマイク型です。「世界で最も深い海まで潜れる」艦とされたマイク型原潜は、当時西側からは謎のベールに包まれていました。実際のマイク型は実用艦というよりも実験艦的な性格が強く、就役艦はわずか1艦のみ(K-278)。その艦も1989年にノルウェー海で事故により失われました。ゲームにおける評価は概ね妥当(速度4は疑問の余地がありますが)だと思われますが、実験艦的性格の強い本艦がソ連の切り札的存在として振舞うことには、若干の違和感があります。
 ちなみにこのゲームでは、ソ連の潜水艦にもすべて艦名が付けれています。実際の所、冷戦時代のソ連潜水艦には一部例外を除いて固有艦名がなく(「クルスク」等の艦名が付いたのは冷戦終結後)、本ゲームで登場する艦名はすべて「デタラメ」です(そのことはゲームデザイナー自身が告白しています)。

日米

 左から「スプリングフィールド」(改ロス級)、「バットフィッシュ」(スタージョン級)、「せとしお」(ゆうしお級)です。
 「スプリングフィールド」は、対潜、対水上、対地攻撃のいずれにも優れた万能潜水艦です。速力、防御力、対艦ミサイル力等、部分的に「スプリングフィールド」を上回る性能を持つ潜水艦は他にもありますが、総合能力的には最強の原潜であり、その能力は他の追随を許しません。
 「バットフィッシュ」はやや古い世代に属する原潜です。ソ連のヴィクター型潜水艦に類似した性能を持っていますが、対艦ミサイルが使用可能な点と、ASW値が高い点でヴィクター型を凌駕しています。
 「せとしお」は通常型潜水艦なので、原潜に比べると能力が一回り小さくなっています。それでも防御の弱い敵輸送船団等を攻撃するには手頃な艦です。なお「せとしお」には対艦ミサイルがありませんが、ゆうしお級の後期型にはハープーンが搭載されており、ゲームでもその能力が認められています。

航空機

ソ連

 左からMig-31、Tu-26、Yak-36です。
 Mig-31はゲーム中最強のソ連戦闘機です。空戦力10はSu-27と同等で、航続距離32はSu-27を大きく上回ります。実際、その航続距離はF-15をも凌駕し、世界で最も足の長い「迎撃戦闘機」です。ゲームでは長い航続距離を生かし、戦略航空任務や長距離援護に多用されることになるでしょう。
 Tu-26はいわずとしれたバックファイヤー。対艦ミサイル力75はゲーム中最強です。
 Yak-36フォージャーは軽空母「ミンスク」「ノボロシスク」の艦載機。空戦力4は悲しいほど弱いですが、護衛の伴わない敵爆撃機相手なら撃退することも可能で、場合によってはF-14やF-18の編隊をも追い返したりすることができる「意外性」があります。

米軍

 米軍は空母艦載機を並べてみました。F-14、F-18、A-6です。
 F-14は防空と制空戦闘の主力です。爆撃力に乏しいのでF-18ほどの多用途性はありませんが、F-18よりもわずかに長い航続距離とわずかに高い空戦性能は、援護戦闘では重宝するでしょう。
 F-18は空対空、空対地、空対艦いずれも使用可能な万能機です。欠点は航続距離の短さ。空母からの実質的な攻撃範囲は8ヘクスまで。対艦ミサイルを搭載することによって若干の距離は稼げますが、いずれにしても足が短いことには変わりありません。
 A-6は空対地、空対艦用の攻撃機。単能機ながらF-18を上回る航続距離と対地攻撃力は、多くの場合本機を重宝な機体とします。実際問題許されるのなら、F-18の1枚を母艦から降ろし、代わりにA-6を1ユニット追加したい気分です。

日本

 左からF-15、F-1、P-3です。前2者は航空自衛隊、後者は海上自衛隊の所属です。
 F-15は世界最強の空戦力と長大な航続距離を誇る文字通り「世界最強」の戦闘機である。特にその広大な航続距離は、北海道を基点とした場合に沿海州や樺太一帯、さらには千島列島の過半を行動半径に収めます。その気になれば、航空自衛隊は、独力でソ連極東空軍を叩き潰すことも不可能ではありません。
 F-1は対地、対艦攻撃機です。その攻撃力は悪くないのですが(決して良くもない)、致命的なのはその航続距離の短さ。行動半径がわずか7ヘクスでは、三沢を基地とした場合、北海道の沿岸海域が辛うじて攻撃圏内に入る程度です。
 P-3は海上自衛隊の主力対潜哨戒機です。性能的には対潜、対艦攻撃力にも優れた優秀な哨戒機なのですが、それよりもこのような優秀な哨戒機を合計7ユニットも持つこと自体が一種の驚異です。

最後に

 以上、駆け足で第7艦隊の登場兵器を紹介してきました。紹介した兵器の中には今でも現役のものも数多くあります。また一方で(特にソ連製兵器の多く)、今では退役してしまった兵器も数多くあります。これらの兵器の多くが本来の力を発揮することなく今日に至っていることは誠に喜ばしいことです。そしてそれらの兵器の隠された能力について、ゲームという世界の中で振り返ってみるのも決して悪いことではないと思います。
 今からまた10年が経過し、2015年を迎えた時、これらのユニットを見る我々の目線が今とは少し違っているのでしょうか?。それとも今と何も変わらないのでしょうか?。私は恐らく「何も変わっていない」と思いますが、それはその時になってからの楽しみにとっておきます。


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前回までのあらすじ

 根室海峡でのソ連情報収集船沈没に端を発した日ソ戦争は、米軍をも巻き込んだ大規模海戦にエスカレートした。
 北海道へ向かう増援部隊を乗せた米輸送船団に対し、空中、海上、海中から激しい攻撃が加えられる。数隻の輸送船とフリゲート艦が撃破され、多数の兵員が海の藻屑となった。しかし日米合同軍の反撃は数隻のソ連潜水艦を撃破することに成功した。
 一方カムチャッカを目指すソ連輸送船団に対し、米空母「カールビンソン」の艦載機と三沢基地の航空部隊が数度に渡って攻撃を加えた。しかし艦隊の対空防御は堅く、合同軍の戦果はわずかに巡洋艦1隻を撃沈したのみであった。無傷のままカムチャッカに近づくソ連輸送船団に対し、日米の潜水艦がようやく追いつこうとしていた。


第4ターン:戦略航空作戦

分析

ソ連軍
「オホーツク海ゾーン」。味方の輸送船団と機動部隊がいる。これは発見されたくない。投入可能な戦闘機はMig-31と空母のYak-36が2枚。
「北海道ゾーン」。敵輸送船団2個と空母機動部隊がいる。これもなんとか発見したいが、空母機動部隊と輸送船団には「局地索敵」マーカーが乗せられているので、仮に発見できなくてもなんとかなる。投入可能な戦闘機はMig-31と樺太、千島のMig-23が合計2枚。
「北西太平洋ゾーン」。味方潜水艦が3隻いる。見つかりたくはないが、見つかる可能性は大きくないし、仮に見つかったとしてもそれほど致命的ではない。

日米軍
「オホーツク海ゾーン」。敵輸送船団と機動部隊がいる。特に敵機動部隊はなんとか発見したい(輸送船団は遠すぎて手を出せない)。投入可能な戦闘機は千歳のF-15が2枚。
「北海道ゾーン」。味方の全水上艦隊がいる。できれば見つかりたくない。投入可能な戦闘機は千歳のF-15の他に、三沢のF-16が2枚、「カールビンソン」のF-14とF-18が各2枚である。
「北西太平洋ゾーン」。敵潜水艦3隻がいる。重要度は小さいが、敵戦闘機が飛んでくる可能性は小さいので、P-3Cを1枚ぐらい配置しても良いかも知れない。

展開

ソ連軍
オホーツク海:Mig-31,Tu-16E
北海道   :Mig-23,Tu-16D,Il-38

日米軍
オホーツク海:F-15,F-4G,S-3,P-3C
北海道   :F-15(ステップロス)

結果

北海道ではステップロスしたF-15と樺太を発進したMig-23が対決。結果は空自F-15の大勝利。Mig-23は2ステップを失って壊滅。ソ連哨戒機部隊はF-15の追撃を辛くもかわして基地へ引き上げていった。
オホーツク海では共に電子戦機の支援を受けた空自F-15とソ連Mig-31が対決。結果は相打ち。両者とも引上げ。日米軍の哨戒機は敵艦隊に「戦略索敵」マーカーを置くことに成功した。

第4ターン(D+2日午前)

「カールビンソン」を発進したF-14,F-18,A-6,EA-6の混成編隊が「ノボロシスク」の機動部隊を襲った。ソ連艦隊は戦闘機による迎撃を諦め(オッズに差がありすぎる)、対空砲火で迎え撃った。火力40の対空砲火は凄まじい威力を発揮し、A-6部隊は壊滅、F-18は巡洋艦「タシュケント」を狙って爆弾を投下したが、有効打はなかった。
三沢の空自F-1は米軍F-16の護衛の下で択捉島を攻撃。迎撃するMig-23をF-16は蹴散らし(1ステップロス)、F-1は爆撃コースに入ったが、対空砲火を受けて1ステップロス。爆撃も失敗に終わった。
八戸の海自P-3C部隊がソ連ディーゼル潜を攻撃。2度の対潜攻撃を両方とも成功させてこのディーゼル潜を撃沈した。先ほどから対潜部隊の奮戦が光る。
カムチャツカを目指すソ連軍輸送船団に対してようやく日米の潜水艦が追いついた。「バットフィッシュ」の雷撃で輸送船1ユニットをステップロスさせたが、ソ連対潜部隊の攻撃で海自の「せとしお」が損傷した。その他、Tu-16Gのミサイル攻撃で海自の「しらね」が轟沈。

第5ターン(D+2日午後)

今まで良い所のなかった「カールビンソン」の戦闘機隊が初めて戦果を上げた。「ノボロシスク」機動部隊を攻撃した際、敵迎撃機Yak-36と交戦。これを一方的に叩き落して壊滅させた。F-18が発射したハープーンミサイルも濃密な対空砲火をかいくぐって新鋭駆逐艦「ベズプレチュイ」(ソブレメンヌイ級)に命中。同艦を撃沈した。CAPの傘を失った「ノボロシスク」機動部隊に八戸基地から飛び立った海自P-3C×2個飛行隊が襲い掛かった。長射程距離の対空ミサイルを持つ打撃巡洋艦「リガ」の対空砲火は猛烈であったが、P-3Cが発射したハープーンは巡洋艦「タシュケント」を捉えてこれを大破させた。
オホーツク海では海自潜水艦が意地を見せた。「せとしお」のハープーンが巡洋艦「フォーキン」に命中。同艦が大破。

第6ターン(D+2日夜間)

最終ターンである。先手を取った日米軍はCAPの傘を失った「ノボロシスク」機動部隊に攻撃隊を送り込んだ。海自P-3C部隊がまずハープーン攻撃を実施。巡洋艦「タシュケント」を撃沈した。続いて「カールビンソン」からF-14×1ユニットとF-18×2ユニットがEA-6の援護下で出撃していった。空母の弾庫にハープーンミサイルは既に残っていなかったので、各機は通常型爆弾を搭載していた。対空砲火でF-18がステップロスしたが、残った各機が新鋭駆逐艦「ヴィリヤテルヌイ」(ソブレメンヌイ級)に爆弾を命中させてこれを大破した。
残ったソ連艦はカムチャッカ半島へ後退。日米軍の輸送船団も傷だらけになりながら、生き残った何隻かが函館港に入港した。

両軍の損害

ソ連軍

完全損失  :巡洋艦×2、駆逐艦×1、原潜×2、通常潜×1、Su-27×1、Mig-23×1、Yak-36×1、B-12×1
ステップロス:巡洋艦×1、駆逐艦×1、原潜×1、輸送船×1、Mig-23×1

日米軍

完全損失  :駆逐艦×1、フリゲート艦×1、輸送船×1、海上事前集積船×1、A-6×1
ステップロス:通常潜×1、フリゲート艦×1、輸送船×2、F-15×1、F-14×1、F-1×1、F-18×1

= 勝利条件
ソ連軍は輸送船3.5ユニットが回航に成功し+11VP。潜水艦3隻が北西太平洋でプレゼンスを行い+6VP。敵に与えた損害+3VP。合計で20VP。
日米軍は無傷の海上事前集積船1ユニットとステップロスした輸送船2ユニットで合計9VP。敵に与えた損害14VP。合計で23VP。
結果的には-3VPで日米軍の辛勝に終わった。

感想

結果的には日米軍の辛勝になったが、対潜哨戒機の奮闘に助けられた感が強い。撃沈した2隻の原潜のうち、1隻でも生き残っていれば、ソ連側の勝利に終わったのだから。日米軍の失敗は、最初の段階でソ連輸送船団に対する攻撃に固執したことであろう。「カールビンソン」の機動部隊を味方船団の援護に回さず、敵輸送船攻撃に当てたことが結果的には味方の損害を増やす結果になってしまった。敵船団攻撃には固執せず、むしろ可及的速やかに味方船団の援護に回った方が良かったかもしれない。
ソ連側の失敗は、「ノボロシスク」機動部隊を敵に突出させすぎたことかもしれない。打撃巡洋艦「リガ」や軽空母「ノボロシスク」が如何に強力な艦であったとしても、わずか5隻の機動部隊では抵抗力には乏しい。対する日米の機動部隊は、「カールビンソン」部隊だけで5隻、船団護衛艦が8隻、海自の対潜部隊5隻の合計18隻で、隻数で比較すれば日米軍が3倍以上も優勢である。わずか1/3の戦力では、たとえ潜水艦6隻の援護があったとしても、正面から戦えば最終的な敗北は避けがたい。ここは適当にあしらった後、速やかに後退、「ミンスク」機動部隊と合同して戦力の結集を図るべきだったのかもしれない。
いずれにしても両者の戦術如何で展開は千差万別。もし「ミンスク」機動部隊が味方輸送船団援護に回らずに「ノボロシスク」部隊との合同を図れば、今度はソ連輸送船団が弱点になる。日米軍はそこをつくか、あるいは強化されたソ連機動部隊と正面から決戦を挑むか。

ゲームとしてみた場合、この「フリートシリーズ」はプレイアブルに現在海戦を楽しめる好ゲームである。キャンペーンシナリオになると、扱うマップも広く(第7艦隊の場合、フルマップ3枚)、期間も長くなり(最大36ターン)、ちょっとしたビックゲームになる。その点シナリオの場合、マップは1枚、ターン数も少なく(最大6ターン)、ユニット数も手ごろなので半日程度でプレイを終えることができる。登場するユニットが古くなっているので、その点少し興ざめではあるが、「ああ、こんな艦があったんだ」とちょっとしたノスタルジーに耽ることができる。
システム的にも索敵や戦闘のルールがシンプルにまとめられていて、それでいて現在海戦の雰囲気がそこそこ出ている。私が持っているゲームは英語版だが、英文ルールがとても読みやすく、英語に自身がない私でもそれほど苦痛なく読むことができた。
ただ細かい点を見ると変だと思う点もある。例えば対艦ミサイル戦。敵の防空火力が強力な場合、対艦ミサイルは飽和攻撃を期して全弾発射が原則である。しかし本ゲームの場合、水上艦は手持ちの対艦ミサイルを全弾同時に発射することはできない。大型対艦ミサイル20発と搭載したキーロフ級打撃巡洋艦にしても、1回の戦闘ではミサイルを2発づつしか発射できない。また全般に対艦ミサイルが非力なようにも思う。例えば大型爆撃機20数機を持つソ連軍の長距離爆撃機連隊が50発以上の大型対艦ミサイルを発射したとしても、せいぜい1~2隻に損害を与えることができる程度である。
対潜戦についても文句をつけたい。潜水艦の防御力が大きいので1撃で撃沈することはまず不可能。1回の攻撃1で損傷状態にし、次の攻撃で撃沈するという手順になる。でもタイフーン級の巨大原潜ではあるまいし、対潜魚雷を食らった潜水艦が生き残ることができるとは通常考えがたい。運がよければ生還できるかも知れないが、普通は一撃でお陀仏だろう。
空戦についても、強力な空対空レーダーを搭載し、フェニックスやスパローといった強力なミサイルを装備したF-14やF-18が、初歩的なレーダーしか持たず、機動性も並以下のYak-38に撃退されるというのも考えにくい。逆にわずか数機のF-18がCAPについているだけでバックファイヤーが全く米空母に近づくことができない、というのも変である。
とまあ文句を書けばキリがないが、現在海戦という難しいテーマを比較的簡単なルールで再現しているというのは評価してみたいと思う。




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(写真上)971型(アクラ級)原潜。本級ははじめて米原潜に匹敵する静粛性を獲得したソ連原潜である。

ソ連/ロシア原潜建造史



 ロシアの艦船研究家アンドレイVポルドフ氏が「世界の艦船」誌に連載していた同名記事を1冊にまとめたもの。ロシア側から見た自国の原潜建造史ということで内容的には非常に興味深いものがある。今まで西側の情報機関経由で知るしかなかったソ連/ロシアの原潜建造の実態が、当事者の視点から、しかも日本語で読めるということは素晴しいことだと思う。本書では、ロシア原潜にまつわる技術的な特徴、数多くの栄光、あるいは数多くの悲惨な事故が紹介され、その内容はどれも新鮮であり興味深いものがある。
 技術的な注目点を1つ上げると、従来「騒々しい」と言われていたロシア攻撃型潜水艦が、実は静粛性においても米原潜にそれほど見劣りしていなかったということ。671(ヴィクター)型はその静粛性を生かして何度も米英の対潜部隊を出し抜くことに成功し、971(アクラ型)は米ロス級原潜よりも静かであるという。氏自身の自国兵器に対する身贔屓があるかも知れないが(でも本書を読む限りその種の「身贔屓」は殆ど感じさせない)、実際ロシア製の原潜が静粛性の点においても極めて優秀であり(その一因が例の東芝スキャンダル)、米原潜に比べても今やその個艦性能はほぼ拮抗していると考えてよいのではないだろうか。
 一方ロシア原潜にまつわる事故については、近年になって大型原潜クルスクの沈没事故やミサイル原潜K-19、K-219の悲劇的な最期が映画や文書で紹介され、ロシア潜水艦の危険な実態が次第に明らかにされてきた。しかし本書を読めばそれらの事故が実は氷山の一角に過ぎず、ロシアにおける潜水艦開発がある意味で事故の戦いであったことを知らされることになる。また事故を防ぐためにロシア潜水艦の設計が、次第に居住性や乗員の精神衛生を配慮したものに変化していったという点は興味深かった。
 いずれにしても現在海戦に興味のある方には必読の1冊だと思う。
 余談だが、筆者はロシア人だが、日本語で書かれた彼自身の文章は非常に読みやすく、氏の非凡な語学力を感じさせてくれる。

評価★★★★★

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