翔ぶが如く(9) 司馬遼太郎 文春文庫
「翔ぶが如く」もようやくここまで来ました。全10巻中9巻。そろそろクライマックスです。本巻では田原坂の攻防戦から政府軍の八代上陸、薩軍戦線の崩壊、そして薩軍の全面後退を扱います。その過程で薩軍主将の1人である篠原国幹が田原坂攻防戦で戦死し、薩軍に協力する熊本協同隊の宮崎八郎も八代近郊で戦死してしまいます。熊本北部を死守し続ける薩軍でしたが、熊本南部から北上を続ける政府軍部隊が熊本南部の薩軍戦線を突破するに及んで遂に熊本を撤退。熊本東部の山岳地帯を抜けて人吉盆地へと落ちていきました。
本巻はある意味「翔ぶが如く」における最大の見せ場、とも言うべき巻なのですが、さてさて何を書いて良いものやら・・・・。田原坂の攻防戦は確かに戦史に残る激戦だったかも知れませんが、戦場レベルではとにかく、作戦レベル以上の観点では「陣地を頑強に死守する薩軍を攻めあぐむ政府軍」という図式だけで、それ以上の面白い構図は見えてきません。政府軍の八代上陸は、今戦役の転機となった作戦といえますが、我々ウォーゲーマーから見れば「どうしてさっさと上陸しないの?。薩軍の海側面はがら空きなのに・・・・」という考えに囚われてしまいます。
とりあえず熊本城攻防戦の主な流れを時系列的に示しておきます。
<< 明治10年(1877年) >>
(1) 02/22 薩軍、熊本城を強襲するも失敗
(2) 02/26 高瀬の戦い
(3) 03/01 田原坂攻防戦開幕(~3/31)
(4) 03/19 政府軍、八代、日奈久に上陸
(5) 03/20 政府軍、田原坂を占領
(6) 04/13 政府軍、熊本城との連絡回復
(7) 04/20 城東会戦、薩軍人吉へ向けて退却
(1) 02/22 薩軍、熊本城を強襲するも失敗
(2) 02/26 高瀬の戦い
(3) 03/01 田原坂攻防戦開幕(~3/31)
(4) 03/19 政府軍、八代、日奈久に上陸
(5) 03/20 政府軍、田原坂を占領
(6) 04/13 政府軍、熊本城との連絡回復
(7) 04/20 城東会戦、薩軍人吉へ向けて退却
個人的な感想としては、「薩軍って結構粘っているなあ」ということ。政府軍が八代・日奈久に上陸し、田原坂の防衛線が破られても、なおも1ヶ月近く熊本城の攻囲を続け、その後も城東で政府の大軍と決戦を交えるだけの力があったのですから。城東会戦で破れた薩軍は人吉へと落ちていきますが、それでも総勢約8千人の兵力を有し、なおも半年近くに渡って政府軍の悩ませ続けることになります。
