ザ・コールデスト・ウィンター
デイヴィット・ハルバースタム 山田耕介/山田侑平訳 文芸春秋
今回紹介する本は、朝鮮戦争を扱ったノンフィクションです。とはいっても所謂戦記モノではなく、朝鮮戦争を巡る人間ドラマを描いたノンフィクションといった方が適切でしょうか。本書には様々な人物が登場します。米大統領ハリー・トルーマン、ダグラス・マッカーサー、チャールズ・ウィロビー、毛沢東、金日成、スターリン、マシュー・リッジウェイ、彭徳懐、、そして前線で戦った兵士達。それぞれの人々がそれぞれの視点で朝鮮戦争とどのように関わっていったかを本書は克明に記しています。人間描写が豊富な分、(我々が期待する)兵器の描写や戦略戦術の描写はそれほど多くはありません。シャーマン戦車やT-34/85は一応出てきますが、名前だけの感があり、F-86やF4Uといった航空機については殆ど固有名詞なし(F4Uがちょこっとだけ出て来たかな?)。仁川上陸作戦や海兵隊の長津湖からの撤退戦についても、軍事的な描写よりはどちらかといえば人間ドラマに焦点を絞っています。もし戦史的な面で朝鮮戦争を読みたい場合は、児島穣氏の「朝鮮戦争」(全3巻)の方が良いでしょう。
この作品は、朝鮮戦争に関わった人たちが如何に勇敢で、また臆病で、如何に有能で、あるいは無能であったかを明らかにしてくれます。歴史的な偉人であっても実はxxだった、なんてね。無論それは筆者であるハルバースタム氏のフィルターを通して得られた像であることも当然考慮する必要がありますが・・・
お奨め度★★★★