レッドストームライジング(上下)
トム・クランシー 井坂清訳 文芸春秋
トムクランシーの初期作品。現代戦を扱ったフィクション作品は数々あるが、本作よりも面白い作品を私は知らない。メインテーマは海戦で、大西洋を巡る米ソ両軍の戦いは臨場感抜群である。特に圧巻なのが水上艦と潜水艦との戦いで、米海軍のフリゲート艦とソ連潜水艦の戦いや、米ロス級原潜とソ連ASW部隊の戦いは、読む者を飽きさせない。他にも空対空、空対艦の戦闘、地上戦闘、地対空/空対地の戦闘等もリアルに描かれている。設定年代が1980年代後半なので、登場する兵器がやや古いのが気になると言えば気になるが(湾岸戦争は1991年で、その時活躍したF-117AやF-15Eは本作にはほとんど登場せず、逆に本作の中ではファントムの登場機会が妙に多い)、別に本作の欠点ではなくその辺りは現代戦物の宿命とするべきだろう。娯楽作品としては、今でも通用する作品と言える。お奨め度★★★★