SSMによる構造化知識マネジメント
田村泰彦 日科技連
本書はSSM(Stress Strength Model)というモデルに基づいて行う不具合解析手法の解説本である。SSMとは、不具合に関する知識を整理するための入れ物だと思えばよい。SSMは以下の5項目から構成されている。・定義属性:不具合が起こったアイテム。たとえば特定の部位、部品、ソフトウェア等
・不具合モード:不具合の現象。たとえば止まる、固まる、脱落する、燃える、暴走する等
・ストレス要因:不具合を発生させた外的な要因。例えば異常低温、連続した負荷、大量の通信データ等
・ストレングス要因:不具合を防止するために本来機器が備えていなければならない属性のうち、不具合の発生要因となった脆弱さ。例えば耐温度性の不足、ソフトウェアにおけるエラー処理欠如
・制御属性要因:ストレングス要因を作りこんだ具体的な作業の拙さ。たとえば設計上におけるエラー処理欠如、購入品の選定ミス等
SSMでは、これらの知識を不具合1件につき1枚づつ作成していく。これだけなら単なるバグレポートなのだが、SSMの凄い所はこれらの知識を繋げわせることができる点にある。たとえば特定部品の不具合がより大きな機器の不具合原因となっている場合、2つの知識(部品の不具合と機器の不具合)を繋ぎあわせて表現できる。このように複数の不具合における知識を組み合わせて膨大な知識データベースを作ることにより、過去不具合を未来に向けた不具合未然防止活動に結びつけることができる。
話を聞くだけ、本を読むだけでは、素晴らしい考えに思える。実際にトライする場合はデータベースをどう構築していくか、あるいは過去トラをDBに1つ1つ発生する作業が発生するので簡単にはいかない。それでも不具合情報を体系づけて整理できるという点で、SSMは素晴らしい考え方に思える。
品質に関わる業務に携わる方は必携の著作に思える。
お奨め度★★★★★