自作空母戦ゲーム「海空戦、南太平洋1942」(以下、本作)。今回は、追加シナリオであるビスマルク海海戦シナリオについて紹介する。
このシナリオは、2019年5月26日のゲームマーケット春で発売予定の「雑誌、海空戦No.2」に収録予定である。
このシナリオは、2019年5月26日のゲームマーケット春で発売予定の「雑誌、海空戦No.2」に収録予定である。
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「海空戦、南太平洋1942」の概要については-->こちらを参照して下さい。
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「海空戦、南太平洋1942」の概要については-->こちらを参照して下さい。
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シナリオのコンセプト
シナリオのテーマは、1943年3月初旬に実施された日本軍による「第八十一号作戦」である。ビスマルク海海戦とは連合軍側の名称であり、日本側に海戦としての固有の名称はない。「ダンピール海峡の悲劇」とも呼ばれている。ネットで「ビスマルク海海戦」とでも入力すれば詳しい情報は入手できるので、ここでは簡単に説明しよう。1943年2月のガダルカナルからの撤退以降、日本軍は東部ニューギニア方面での作戦を重視していた。しかし同方面での連合軍の反撃は強力であり、1月には日本軍のブナ守備隊が玉砕。戦闘の焦点はラエ・サラモア地区に移ってきた。日本軍は東部ニューギニア方面を担当する第18軍を新設し、その麾下の3個師団を東部ニューギニアに送り込まんとした。その輸送作戦が「第八十一号作戦」である。
2月28日夜半。ラバウルを出港した輸送船8隻、駆逐艦8隻がラエに向けてラバウルを出港した。船内には日本陸軍第51師団に所属する将兵約7,000名が乗船していた。船団はラエに向けて航行したが、3月2日から連合軍機による攻撃が始まり、3月3日にはそれが最高潮に達した。連合軍がこの戦いで初めて実施したとされる反跳爆撃(スキップボミング)は極めて有効で、日本軍の輸送船8隻がすべて撃沈された。他に護衛の駆逐艦も半数の4隻が撃沈され、日本軍の輸送作戦は完全な失敗に終わった。「ダンピール海峡の悲劇」と呼ばれる所以である。
シナリオのコンセプトは色々悩んだ。史実があまりに一方的なのでそのままゲーム化しても面白くないと思えるからだ。しかし考えてみれば、例えばフリートシリーズでは一方が輸送船団を率いて目的地に向かい、もう一方が潜水艦なり航空兵力なりで迎撃するタイプのシナリオがいくつかある。空母も戦艦も登場しない地味なシナリオだが、それはそれで結構面白かった。バランスさえ調整すればプレイ時間が短く面白いシナリオが作れるのではないか。そう思えてきた。
それにもう1点。この戦いには興味深い点がある。それは他のシナリオでは殆ど活躍の機会がない基地航空部隊がこのシナリオでは主役となって活躍できることだ。さらに他にシナリオには登場しない興味深い機体、例えば日本陸軍の一式戦闘機「隼」、「空の通り魔」こと百式司令部偵察機、米陸軍のB-25C-1ミッチェル、オーストラリア空軍のボーファイター等である。ちなみに「隼」の性能は、空戦性能ではP-40やF4Fと互角で、零戦には劣るという評価にしてある。航続距離はP-40、F4Fには勝るが、零戦21型やP-38には劣るという具合。
そして最後に1点捻りを加えた。それは日本軍輸送船の目的地をラエに決めず、マダンの可能性もあるとした。日本軍プレイヤーは原則として目的地を自由に決定できず、上級司令部の指示通りに行動するしかない。しかし連合軍は日本軍の目的地自体も不明である。従って日本軍輸送船団の動きを見ながら目的地を類推し、それに合わせて行動しなければならない。
オーダーオブバトルについては、両軍との当時の保有機数ではなく稼働機数を中心に決定した。しかし日本側の機数には若干の下駄を履かせている。史実通りの兵力では、どう考えても史実通りの結果にしかなりそうになかったからだ。一応両軍の兵力を列挙しておこう(戦闘用航空機のみ)。
初期配置
このシナリオは1943年3月2日から始まる。最初に日本軍プレイヤーは目的地を決定する。ラエかマダンかどちらか。ダイス判定の結果、ラエが目的地になった。危険性は高いが、作戦成功時のVPがより大きくなる。続いてセットアップ。日本軍は輸送船団をラバウルから6ヘクス以内の任意のヘクスに配置できる。今回は素直にラエに近い所に配置した。基地航空兵力については、戦闘機の配置が重要である。計14ユニットの戦闘機を以下のように配置した。
・ラバウル:3xA6M2
・カビエン:1xA6M2,2xKi43
・ガスマタ:1xKi43
・ラエ :4xA6M3
・マダン :3xKi43
(数値はユニット数)
・カビエン:1xA6M2,2xKi43
・ガスマタ:1xKi43
・ラエ :4xA6M3
・マダン :3xKi43
(数値はユニット数)
日本軍の輸送船団はラバウルから6ヘクス以内に配置し、一路ラエを目指す。
3月2日0600
このシナリオは輸送船団が出港してから2日目の3月2日早朝から開始される。既にニューブリテン島西端のグロスター岬北に到着していた日本軍輸送船団をオーストラリア空軍のカタリナ飛行艇が発見した。その位置はポートモレスピーから300海里(10Hex)。単発戦闘機の航続距離圏外ではあるが、P-38やボーファイター等の双発戦闘機や双発爆撃機にとっては航続距離圏内である。ポートモレスピー、ギリギリ、ブナの各基地からは連合軍の攻撃隊が発進していく。最初に目標上空に到達したのは戦闘機24、双発爆撃機27の計51機からなる攻撃隊である。この攻撃隊は日本船団を目標としたものではなく、ラエの日本軍飛行場を目標とするものであった。日本軍の輸送船団の目的地がどこにせよ、ラエ基地を無力化しておくことは重要である。ラエ基地上空には零戦約30機が警戒中であり、直ちに迎撃に向かっていく。戦闘機同士の空中戦は日本軍の勝利に終わり、3機のP-39が撃墜された。しかし敵の爆撃機に襲い掛かった零戦隊はB-26の反撃を受けて2機を失った。爆撃隊の阻止は失敗。爆撃隊はラエ基地に打撃を与えた。
さらにギリギリを発進した27機のA-20が、8機のP-38に護衛されてラエを襲う。これを迎え撃つ27機の零戦は、6機のP-38と9機のA-20を撃墜し、空中戦は日本軍の勝利に終わった。しかし生き残ったA-20はラエ基地に対する爆撃に成功。ラエ基地は一時的にその機能を失った。
さらにギリギリを発進した27機のA-20が、8機のP-38に護衛されてラエを襲う。これを迎え撃つ27機の零戦は、6機のP-38と9機のA-20を撃墜し、空中戦は日本軍の勝利に終わった。しかし生き残ったA-20はラエ基地に対する爆撃に成功。ラエ基地は一時的にその機能を失った。
続いてブナを発進した16機の爆装したボーファイターが、8機のP-38の護衛を受けて日本船団を襲った。しかし駆逐艦からの対空砲火は激しく、ボーファイターは命中弾を与えることはできなかった。
日本軍も黙って叩かれっ放しではない。ガスマタを発進した18機の陸軍双発軽爆撃機が9機の一式戦の護衛の元、ブナの連合軍航空基地を襲った。超低空から近づく日本軍の攻撃隊に対して計16機のP-39、P-40がこれを迎え撃つ。中高度以上では「カモ」のP-39であったが、超低空では手強い相手であった。3機の一式戦と6機の双軽が撃墜され、ブナ基地に対する日本軍の爆撃も失敗に終わった。
連合軍の本命は、次の攻撃隊である。すなわち24機のP-38に護衛された、18機のB-25C-1ミッチェル双発爆撃機と9機のオーストラリア空軍ボーフォート雷撃機である。上空援護の日本機は完全に出し抜かれた形となり、米豪連合の攻撃隊はそのまま日本船団に殺到する。さらに護衛のP-38も機銃掃射で攻撃隊を援護すべく船団に突入する。正に連合軍にとっては絶好のチャンスであったが、またもや駆逐艦の対空砲火がこれを阻んだ。さらに対空砲火を突破した爆撃隊も命中弾を与えることに失敗。日本船団は未だに無傷である。