「台湾海峡危機」(以下、本作)は、台湾のゲーム雑誌「戦旗」の付録ゲームを日本語化したものであり、Bonsai Gamesから発売されている。1950年代における台湾海峡を巡る国府軍(台湾)と共産軍(中共)との対決を戦略レベルで描いた作品だ。システムは、"Red Dragon Rising"(以下、RDR)のものを踏襲しており、両軍とも決められたアクション数の中で任意のアクションを実行する。
今回、本作をソロプレイしてみることにした。なお、選択ルールは採用していない。
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7Turn(1957年)
後半戦である。共産軍は南麑(島)に対して上陸を敢行。既に守備隊は全滅していたので共産軍は同島を無血占領した。これにより共産軍のVPは8VPに達し、あと2VPで勝利である。国府軍は「轟雷計画」で配備された重砲部隊を披山(島)に配置し、守りを固める。さらに共産軍を牽制するため、馬租付近の水上部隊を金門付近まで南下させた。そして駆逐艦による艦砲射撃を共産軍が占領する南日(島)に対して実施する。慌てて共産軍は南日(島)に陣地を構築し、艦砲射撃から身を守る形をとる。
ちなみにカウンターには何故か国府軍の重砲部隊が含まれていない(恐らくカウンター作成時のミスと思われる)。仕方がないので米軍の重砲を国府軍の重砲として代用することにした。
8Turn(1958年)
八二三砲戦が行われ、馬租(島)の国府軍防御施設が破壊されてしまう。慌てて国府軍は防御施設を再建する。その間両軍に軍事顧問団(国府軍はアメリカ、共産軍はソ連)が派遣され、空軍力が一新された。その新鋭機MiG-17を駆って共産軍は馬租(島)近海の国府軍艦隊に対して航空攻撃を仕掛ける。先の南日(島)攻防戦では出撃を見合わせた国府軍航空部隊も今回は迎撃のために発進。馬租(島)付近で両軍新鋭機同士が激突する。両軍とも4ユニットずつを失う激しい戦いであった。生き残った共産軍は国府軍艦隊を強襲。国府軍の機動砲艇(MTB)3ユニットを撃沈するという大戦果を挙げた。結果から言えば、国府軍は新鋭機配備前に共産軍の航空戦力と決戦を戦った方が良かった。何故なら新鋭機配備前と配備後では共産軍と国府軍の航空機間の性能差が配備後の方が縮まっているからだ。
9Turn(1959年)
最終Turnである。アクション数の出目は"2"と最小に近い数値であったが、それでは面白くないので、アクション数"6"としてプレイする。共産軍は主力艦隊を馬租(島)付近に突進させて国府軍の水上部隊と水上決戦を行う。当初は兵力の各個投入となる共産軍が苦戦を強いられたが、全兵力で勝る共産軍は兵力が揃ってくるにつれて優勢に転じる。最後は国府軍の駆逐艦3ユニットを殲滅して、台湾海峡の制海権を共産軍が確保した。引き続いて共産軍は朝鮮半島から転戦してきた機械化部隊を使って馬租(島)に対する強襲上陸作戦を敢行する。米軍の介入が懸念されたが、米アイゼンハワー政権は優柔不断であり、共産軍に対して積極的な行動は見せない。絶望的な状況下にあって、しかし馬租(島)の国府軍将兵は奮戦した。堅固に築かれた防御陣地も手伝って共産軍機械化部隊の攻撃は効を奏さない。そのうちに台中地区から出撃してきた国府軍空挺部隊が馬租(島)各地に降下するに至り、戦況は完全に逆転した。最後は島の一角に追い詰められた共産軍が国府軍に降伏し、馬租(島)の戦いは国府軍の完全な勝利に終わった。
国府軍の反撃は馬租(島)だけに留まらない。先に共産軍が占領した南麑(島)に対しても空挺部隊による逆侵攻を実施した。兵力と練度に勝る国府軍の空挺部隊は共産軍守備隊を撃破。南麑(島)は再び国府軍の支配する所となった。
結果と感想
最終結果は共産軍の7VPとなった。共産軍が勝利を収めるためには10VP以上獲得する必要があるので、今回は国府軍の勝利となる。なお史実通りの結果だと、共産軍は7~9VP確保になるので、共産軍は事実を超える結果を残す必要がある。共産軍は手数(アクション数)が足らないと苦しい。今回は比較的アクション数が少なかったため、共産軍が苦戦を強いられた。兵力で勝るのは共産軍だが、それを上手く使いこなさないと勝利は難しいようである。
今回、共産軍としては制海権の確保が遅れたのが失敗であった。共産軍としては大陳(島)を早期に占領しないと勝機を失うが、大陳(島)を占領した後は残敵掃討になるので制海権の確保に注力すべきであった。特に国府軍の駆逐艦が厄介なので、早めに水上決戦に持ち込んで国府軍水上部隊を殲滅すべきであった。集結した国府軍の水上部隊は手強いが、兵力の優位を生かすことができれば、海での勝利は共産軍のものだろう。国府軍の駆逐艦を殲滅できれば、今回行われたような国府軍水上部隊による艦砲射撃も実施できなくなるので、共産軍はより攻撃的なアクションを起こす余裕が生まれる。
ゲーム全般の感想としては、システムは非常にシンプルだが、多彩な状況を上手く再現している。詳細なシステムではないので個々の戦闘の細かいディテールを再現できるものではないが、戦争全体の流れを上手く再現している。プレイ時間も慣れれば1~2時間程度で終わるもので、1日何度でもプレイできる。
台湾海峡の戦いといえば、日本では(例えばF-86とMiG-17の空中戦や金門島での根本中将の活躍等といった)個々のエピソードとして紹介されることが多いが、紛争全体の経緯は日本では余り知られていない。余り知られていない戦いをゲームという手段で知ることができるのは、ウォーゲーマーの特権といえる。
一つ苦言を言わせて頂くと、国府軍の重砲兵ユニットが欠落しているのは困ったものだ。エラッタの形でも良いからフォローしてほしい。