もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

2020年06月

イメージ 1


ウォーゲーム日本史第13号「最後のサムライ-西南戦争」(以下、本作)は、1877年に起こった日本最後の内乱=西南戦争を扱ったシミュレーション・ウォーゲームだ。1ユニットは大隊~旅団だが、現在とは部隊規模が違うので、数百~数千人規模だと思われる。指揮官ユニットは登場しない(指揮官の名前入りカードはある)。1Turnの長さは不明だが、固定的な長さではなく1~数週間程度の幅のある長さだと思われる(Victory in the Pacificと同じ)。
システムは、WW1を扱った傑作"Paths of Glory"に近い。決まった枚数のカードをランダムに引いて手札を構築し、お互いにカードを出し合って作戦行動を行う。カードにはイベントで使うか、行動で使うかの選択肢があり、イベントで使う場合にはカードに記載されている内容をそのまま実施し、行動で使う場合にはカードに記載されている行動ポイントを消費して移動や戦闘を行う。それ以外にカードを「購入」するアクションもあり、有利なカードは「購入」しないと使えない。

余談だが、カードドリブンゲームの中で「自分でカードを選ぶ」ゲームはあまり好きではない。カード選択というゲームのテーマとは関係ない要素の巧拙でゲーム展開が左右されるのに違和感を感じるからだ。カードドリブンはランダムドローの方が良いと思う。もちろん何事にも例外はあり、カード選択型ゲームの中にも好きなゲームはある。

今回、本作をVASSALで対戦する機会を得た。下名は政府軍を担当する。

1Turn

薩軍は正規編成の5個大隊のうち、三番大隊を除く4個大隊が北上。熊本を目指す。熊本城外で微弱な政府軍守備隊(1-1-1、火力-耐久力-移動力、以下同じ)を撃破した薩軍。政府軍は熊本北部植木に布陣していた1個連隊が田原坂を通って南関まで後退。さらに本土から動員された第2旅団が戦略移動で佐賀に布陣する。予備隊としての布陣の他、佐賀の治安維持という目的もある。
薩軍は大胆な上陸戦を実施。宇土に布陣する五番大隊が兵力の一部を割いて天草灘、有明海を通って長躯長崎を急襲する。長崎には政府軍守備隊(1-1-1)がいたが、薩軍上陸部隊(2-2-1)は政府軍守備隊を撃破し、長崎を占領した。
WGJ13_Turn01


2-3Turn

薩軍は田原坂を超えて出撃。2個大隊(いずれも4-3-3)で南関の政府軍を攻撃する。政府軍第14連隊(2-2-2)が壊滅。残った政府軍は佐賀まで退いた。政府軍は直ちに反撃を実施。薩軍の2個大隊が半壊状態となり、生き残りは田原坂を超えて植木に下がっていく。長崎方面でも増援で登場した政府軍第4旅団(4-2-2)が長崎を攻撃。薩軍を撃破して長崎を奪回した。
薩軍は熊本で不平士族を集めて熊本隊を編成する。

WGJ13_Turn03


4Turn

薩軍は再び北上し、南関で政府軍を撃破。さらに北上して政府軍の拠点である久留米を攻撃。これを占領する。さらに池上四郎カードの効果で一時的にせよ小倉が薩軍の支配下になる。

「一帯コレハ何ヲしみゅれーしょんシテイルノデスカ」

と言い訳しつつも、残り士気値がいきなり"1"まで低下してしまい、後がない政府軍なのであった。

WGJ13_Turn04


57Turn

後がない政府軍は増援部隊で小倉を奪回し、さらに兵力を集結して久留米に攻撃を行う。久留米を守る薩軍は後退し、再び政府軍が支配地域で有利にたった。

6Turn

政府軍はさらに南下。南関を押さえると共に、豊後側から進撃した第2旅団(3-2-2)が竹田を超えて高森まで進出してきた。さらに政府軍は黒田清隆指揮の元、政府軍第4旅団(4-2-2)が長崎を出港。宮崎に強襲上陸を行って同地を占領する。これによって延岡方面にまで進出していた薩軍2個大隊は補給切れで壊滅、の筈だったが、神速桐野利秋率いる薩軍最後の正規編成である三番大隊(4-3-3)が宮崎に進撃してきた。桐野の果敢な攻撃により政府軍第4旅団は後退不可能にて壊滅(2/3以上の確率で生き残る筈だったのに・・・)。政府軍は薩軍を壊滅させる千載一隅の好機を逸した。

WGJ13_Turn06


7Turn

熊本方面の政府軍は南関から山鹿に進出。そこから熊本城外を攻撃する。激しい戦い。政府軍も大損害を被ったが、薩軍四番大隊(4-3-3)も大損害を受けて後退。熊本城外を政府軍が支配し、熊本城が包囲から解放された。この時点で薩軍と政府軍の支配地域の差が3点になり、薩軍は勝ち目なしとしてゲーム終了となった。

WGJ13_Turn07a

WGJ13_Turn07b


感想

結果的には勝利したが、後から振り返ると結構やばい展開であった。池上四郎カードの影響を見落としていたのが苦戦の原因で、最後にこれを長崎で使われていたら負けている所であった。池上四郎カードについては注意していれば容易に阻止できるので、これを有効活用させたのは失敗だったと言えよう。
ちなみに元々このゲームは政府軍が有利なので自慢にはならない。それよりも個々の場面で薩軍プレイヤーの手腕の見事さに唸った。政府軍をしてここまで追いつめられるとは正直予想していなかったから。
勝敗はとにかく、本作を対人戦をできたことは収穫であった。本作についてソロプレイをしたことはあるのだが、カードドリブンゲームではソロプレイと対人戦でまるで緊張感が違う。西南戦争自体は興味のあるテーマであったので、本作は長年プレイしてみたいと思っていた。そういった意味では念願が叶った感がある。

ゲームバランス的には政府軍有利と思われる。余程の事がない限り(例えば政府軍が初心者など)薩軍の勝利は難しいのではないだろうか。例えば運が味方して熊本城が陥落すれば勝機が見えてくるかもしれないが、熊本城にかまけていると他で押されてしまう。仮に熊本城を落としてもそれによって薩軍の兵力が底を着いてしまえば。政府軍の反撃を阻止できないだろう。そういった意味で勝敗を争うには不向きなゲームである。
ただ西南戦争という珍しいテーマを再現したというだけでも価値のある作品。プレイしていても波乱含みで面白く、薩軍も決して退屈しない。最後は華々しく散るとわかっていても、それまでに「十分に暴れまわってみせよう」

という訳でいつでも薩軍担当でお相手しますよ。「勝てる」とは言いませんが、華々しく玉砕してみせますよ。

WGJ13_Turn00

3

200612_山と渓谷

山と渓谷2020年5月増刊

特集は「最も美しい上高地へ」。上高地の魅力、上高地周辺の山々、上高地へのアクセス、さらに上高地周辺の蕎麦処などを紹介している。そういえば最後に上高地へ行ったのはいつだっただろうか?。そういえば10年以上行っていない。夏か秋の上高地へ行ってみたいと切に思う。
本書では上高地の美しい自然が写真で紹介され、見ているだけで癒される。また紹介されている様々なコースも登山意欲を駆り立てるものばかり。読んでいて楽しくなるような内容であった。

お奨め度★★★

写真02
写真01


Wings of the Motherland(Clash of Arms)(以下、WotM)は、Fighting Wingsシリーズ(以下、FW)の1作品で、テーマはWW2東部戦線における航空戦である。戦術級の航空戦ゲームで、1Turn=4秒、1Hex=100yd、1ユニットは航空機1機を表す。スケールを見ればわかるが、FWは電脳ゲームを除けば現在入手可能な最も精密なWW2航空戦ゲームといえよう。

WofMが、FWのシステムでWW2東部戦線の航空戦を再現する作品であり、登場する機種は、旧式のI-16から最新型はFw190A-8、Bf109G-14、La-7あたりまで。意外と登場する機体は少ない。本土防空戦で登場する様々な夜戦が登場していないせいもある。

シナリオブックは計120ページ以上という豪華さ。内容も多岐にわたっており、練習シナリオは戦闘機同士の1対1の対決、少数の戦闘機による爆撃機の迎撃、護衛を伴った爆撃機編隊に対する戦闘機による迎撃等、徐々にレベルアップしてくる。さらに地上攻撃シナリオや艦船攻撃シナリオも加わってくる。当然ながらルーデルによる戦艦マラート攻撃シナリオもある。

シナリオブック後半に登場してくるMission Scenarioになると、単なる空中戦や対地/対艦攻撃だけではなく、離陸から進撃、攻撃実施、帰投、着陸までの航空作戦の全てを再現するシナリオになってくる。PQ-17に対する航空攻撃、モスクワに対する独軍の夜間爆撃等に交じって、独ソ開戦初期におけるソ連軍機によるルーマニア港湾に対する攻撃シナリオが面白い。これは所謂「親子飛行機」による攻撃で、TB-3に搭載されたI-16が空中発進してルーマニアのコンスタンツァ港の港湾施設を爆撃するものである。

とにかくルールもシナリオもボリュームがあり、デザイナーであるJ.D.Webster氏の熱意(熱量)をヒシヒシと感じる作品だ。何とか氏の熱量に答えたいと思う今日この頃である。

4

200405_航空戦史

航空戦史-航空戦から読み解く世界大戦史

古峰文三 イカロス出版

第2次世界大戦(一部WW1に関する記事もあり)における航空戦について、様々な局面や視点から分析した計12篇の小論集である。記事の大半は雑誌「歴史群像」で一度紹介されたものなので、以前に読んだことがある記事が多くを占めている。
記事の内訳は、太平洋戦史関連が7本、欧州戦史関連が4本(WW1含む)、技術論が1本となっている。太平洋戦史でも陸軍関係が5本、海軍関係が2本と圧倒的に陸軍関係の記事が多く、著者の興味が日本陸軍航空隊に多く注がれていることが見て取れる。
記事はいずれも読みごたえがあって面白いが、個人的に面白かったのは後半の2本。ノルマンディ戦とアルデンヌ線におけるドイツ空軍の戦いに関する記事だ。ノルマンディ戦やアルデンヌ戦といえば、圧倒的な連合軍の航空兵力に苦しむ精鋭ドイツ装甲部隊というイメージが先行している。ウォーゲームをプレイしていても、ノルマンディ戦やアルデンヌ戦でドイツ空軍が活躍する作品は、私の知る所なきに等しい(え、OCSは違うって?)。しかし筆者によればノルマンディ戦やアルデンヌ戦では大規模なドイツ空軍が活躍しており、連合軍の激しい戦いを繰り広げたとしている。ドイツ空軍がこれらの戦いをどのように戦い、どのように敗れ去ったのか。これらの記事はそれらを明らかにしてくれる。
航空戦に興味のある向きにはお奨めしたい好著である。

お奨め度★★★★

写真00


コロナウィルス拡散による自粛状態が続く4月下旬の日曜日。VASSALによる通信対戦を行うことになりました。アイテムはGame Journal#70付録「第3帝国の盛衰」(以下、本作)。WW2における欧州戦域全体を1Turn=半年のスケールで描いた作品です。本作のシステムについては こちら の記事を参照してください。

今回下名は連合軍を担当することになりました。以下はその記録です。

1Turn(1939年冬)

ドイツ軍は定番通りポーランド陥落し、「電撃戦」カードによってポーランドを一撃で陥落させる。返す刀でドイツ軍の装甲部隊はフランスに進入する。またこのTurn、「外交交渉」にイタリアが枢軸陣営として参戦。南フランスに装甲部隊を前進させる。

写真01

2Turn(1940年夏)

再びドイツ軍の電撃戦が炸裂。パリが一撃で陥落する。フランスは「ヴィシーフランス」を樹立させ、フランスは親独陣営に加わった。引き続いてドイツ軍は空軍力を使ってノルウェーに侵攻してきた。北アフリカでは、英軍がエジプトから出撃してリビアに侵攻。リビアを守るイタリア軍を撃破して同地を占領する。

写真02


3Turn(1940年冬)

ドイツ軍はバルカン半島で電撃戦を仕掛け、ユーゴスラビアを支配した。英軍はチュニジアに侵攻したものの、チュニジアを守るヴィシーフランス軍の撃破には失敗する。出目の悪さが恨めしい。
北フランスにドイツ空軍4ユニットが集結する。ドイツ空軍の爆撃を受けて中央大西洋の英艦隊が壊滅する。

写真03


4Turn(1941年夏)

このTurnからソ連が連合軍側に立って参戦する。それを見越してドイツ軍はキエフに侵攻。同地を占領する。さらにキエフに要塞を築いて死守の構えである。
北フランスに展開するドイツ空軍が北大西洋の英艦隊を攻撃する。爆撃を受けて空母と戦艦各1ユニットが沈没してしまう。さらにその後の航空攻撃で北大西洋の英艦隊4ユニットはドイツ空軍の爆撃によって全滅してしまう。

ドイツ側の出目が良かったのは事実だが、「待ち伏せ」カードを使って迎撃しなかったのはこちらの失敗であった。「待ち伏せ」を仕掛ければ、貴重な敵航空兵力を2ユニット葬るチャンスだっただけに、戦術面での迂闊さが恨まれる。

写真04


5Turn(1941年冬)

北大西洋に進出したUボートが「ウルフパック」を発動して大暴れ。3ヒットが命中。連合軍はカード3枚を失う。さらにUボートを追いかけた英空母がドイツ空軍の爆撃を受けて沈没。別の英戦艦も「補給」によって復活したUボートの攻撃を受けて沈没。もうドイツ軍のやりたい放題である。英艦隊は艦隊を再編成してUボートを攻撃。Uボート3ユニットを撃沈したが、交換比で考えれば連合軍にとっては大敗北であった。

写真05


6Turn(1942年夏)

遅まきながら連合軍も「待ち伏せ」カードをデッキに入れてドイツ空軍に対抗できるようにした。しかし使い方が不味かった。先手を取って英艦隊が「電撃戦」カードを使って北大西洋のUボートに対して制圧戦を実施。一度はUボートを制圧できたものの、裏返しになって「待ち伏せ」が使えない英艦隊はドイツ空軍の餌食である。空母を含む2ユニットがお陀仏になり、またもや「不利な取引」をしてしまった。
ちなみに、このTurnからアメリカが参戦する。ようやく米海軍や米陸軍航空軍が欧州戦線に登場してきた。

写真06


7Turn(1942年冬)

連合軍は「レンドリース」を使ってソ連に戦車を送る。また護衛空母を実用化し、大西洋の戦いを有利に進めようとした。また「長距離爆撃機」も実用化し、ドイツ空軍に対してアウトレンジ攻撃が可能となった。
ドイツ軍は東部戦線に配備されていた装甲部隊を西部戦線に引き返させ、「電撃戦」で中立で残っていたオランダを占領する。ドイツと国境を接するデンマークは未だに中立を維持しているが、ギリシア、ポルトガル、スウェーデンは既に連合軍側に立って参戦。ギリシアにはドイツ・ルーマニア軍が侵攻し、同地を軍事占領していた。

写真07


8Turn(1943年夏)

ようやく米空軍の大部隊が英本土に集結。ドイツ空軍を圧倒できる布陣になる。とはいっても「待ち伏せ」カードの威力は絶大なので、こちらからフランスへ先制攻撃をかけるのは難しい。相手の出方を見ながら打つ手を考える。このTurnもUボート対策で奔走することになるが、唯一北アフリカでは米英軍が北西アフリカ一帯を制圧。リビア、チュニジア、アルジェリア、モロッコが米英軍の支配下となった。

写真08


9Turn(1943年冬)

連合軍は初めて「戦略爆撃」を実施する。ローマ、ルール、パリの3ヵ所を爆撃したが、成功したのはルールのみ。どうも出目が悪いなぁ・・・・。
東部戦線ではソ連軍は冬季反攻を実施。ミンスクを奪回したが、西ヨーロッパからドイツ本土には強力なドイツ装甲部隊が待ち構えており、ドイツ本土への侵攻は困難が予想された。

写真09


次の第10Turn途中でゲーム終了とした。直接の契機は「ウルフパック」攻撃が成功して「戦略爆撃」カードが流れてしまったからである。しかし仮にゲームを続けていたとしても、米英軍が大陸反抗を仕掛けるのはほぼ不可能であったろう。

感想

今回は、相手プレイヤーの巧妙さに舌を巻いた。対戦相手氏曰く「今回が初対戦」とのことであったが、正直初プレイとはとても思えないほど隙のないプレイであった。序盤の攻め口はまあ定番通りとしても、その後の北フランスへのドイツ空軍の集中配置、独ソ戦における迷いのない駒さばき等は、「見事なプレイセンス」いうしか言い様のない。
もちろん相手プレイヤーの見事さもさることながら、私自身のプレイについてはミスが多かったことは認めなければならない。特に前半はカードの使い方が不味かったので、そこを突かれたことが今回の敗因といえよう。文字通り完敗であった。
個別の事例を挙げれば、ドイツ空軍とUボートに振り回された感があった。特に序盤ドイツ空軍の跳梁を許したのは、こちらのデッキ構築のミスが大きい。「待ち伏せ」カードを手札に入れておけば、例え相手の航空機が1ユニットだけであっても攻撃側は躊躇したかもしれない。
あとUボートに振り回されたのも大きい。Uボートによる通商破壊戦を潰すために大西洋に対して爆撃を繰り返したが、Uボートを潰しても潰しても復活してくる(1ptで復活する)ので質が悪い。

プレイ中で問題になったのだが「待ち伏せカード」は戦略爆撃機やウルフパックに対して使えるのだろうか?。今回は「使えない」としてプレイしたが、ルールを素直に読めば「待ち伏せ」は有効としてプレイした方が良いかもしれない。


(ちなみに「ウルフパック」には「待ち伏せ」が使えないことが後に判明。いったいどないせえちゅうねん(訳:一体どうすれば良いのですか))

↑このページのトップヘ