Flying Pig Games社のOld School Tactical(OST)シリーズは、WW2における陸上戦闘を分隊規模で描いたシミュレーションゲームシリーズである。1Hexは実際の50mに相当し、1Turnのスケールは不明だが数分と思われる。1ユニットは歩兵1個分隊、車両1両、支援火器や火砲1基/1門を表す。指揮官もユニット化されている。
ゲームシステムは、アクションポイント(APs)を消費してユニットを移動させたり、射撃させたりする。Turn開始時にダイスを振り、そのTurnに使用できるAPsを決定する。各ユニットは1APを消費する毎に射撃又は移動を1度実施できる。1ユニットは原則として1Turnに2APsまで消費できる(例外あり)。1APの消費で1回の射撃または移動を実施できる。ただし移動は1Turnに1回に制限されている。従って1ユニットは移動と射撃の組み合わせ又は2回の射撃を実施できる。
射撃システムはソフト目標と装甲目標で異なったシステムを採用している。
ソフト目標に対しては、火力と防御力の差を求めて、それに応じてICT(歩兵戦闘結果表)で2D6を振って結果を求める。結果にはモラルチェック系のものとユニット除去系のものがある。射撃戦闘は原則として1対1だが、指揮官が介在すると2ユニットによる共同射撃が可能になる。単独の射撃ではなかなか敵ユニットを除去できない場合でも、共同射撃では容易にステップロスや除去に持ち込める。
対装甲車両の場合、命中判定と損害判定の2段階を踏んで解決される。徹甲弾の命中率と破壊力は火砲の性能によって個別に設定されており、長距離でも精度や威力が下がらない兵器やその逆など、火砲の種類による性格の違いが表現されている。例えば75mmシャーマンでティーガーやパンターといったドイツ製重戦車に損害を与えるのは至難の業である。
今回、OSTシリーズの1作品である「Ghost Front」をプレイしてみた。これはOSTシリーズにおける2番目のエクスパンションモジュールで、1944年12月のアルデンヌ攻勢における米独軍の戦いを11本のシナリオで再現する。
Lausdell Crossroads
米第2歩兵師団が守る交差点をドイツ軍第12SS装甲師団が突破を試みるというシナリオである。ドイツ軍の兵力は、歩兵10個分隊、パンター戦車3両が主力。一方の米軍は各種歩兵8個分隊と多数の支援火器。そして交差点付近に埋設した地雷原と道路障害物が防御兵力の全てだ。私はドイツ軍を担当する。
攻撃側はドイツ軍。戦闘地域の東側から侵入する。米軍は隠し玉として隠匿されたユニットと地雷原がある。特に後者は厄介。地雷を踏まないためには、安全が確保された経路を歩くことだ。
米軍が南北軸に展開しているのを見たドイツ軍は、米軍戦線の翼を付くことにした。このシナリオでは吹雪の影響で視認距離が4Hexに制限されている。そこで「我が全力を以て敵分力を撃つ」の鉄則通り主力を北側から侵入させ、火力集中で敵部隊を1つ1つ制圧しながら前進していく。米守備隊は前進するパンター戦車に対してバズーカ砲で反撃するも、バズーカの威力では重装甲を誇るドイツ戦車には歯が立たない。パンツァーファーストでもあれば良かったのだろうが・・・。
ドイツ軍は着実に米軍部隊を撃破しながら前進していく。米軍戦線の北翼を突破したドイツ軍。戦線背後に回り込む。結局ドイツ軍は自軍の損害が殆どない状態で米軍を撃破し、勝利を収めた。
Daredevil Tanker
次に選んだのは戦車戦シナリオである。ドイツ軍の戦車6両と米軍の戦車12両の激突だ。兵力的には米軍の方が2倍の優位に立っているが、ドイツ軍はエリート戦車兵(第1SS装甲師団所属である)である上、強力な新型ティーガー重戦車(キングタイガー)とパンター戦車を合計3両も持っている。特にキングタイガーは、非力な米戦車にとっては荷が重い。対する米軍は、強力な90mm砲装備のM36ジャクソン駆逐戦車2両を持っているが、それ以外は「そこそこ使える」76mmシャーマンが4両、あとは重防御だけが頼りも75mm砲搭載のシャーマンジャンボが1両、対戦車戦では非力な75mmシャーマンが4両、そして「数合わせ」のM5スチュアート軽戦車が1両だ。私は米軍を担当したが、この戦力で強力なドイツ戦車とどのように戦えというのか・・・。
序盤、早くもドイツ戦車の射撃を受けてシャーマン1両が炎上する。米軍の方は、この距離から撃っても有効打は期待できないということで、我慢するしかない。
さらに前進する米戦車だが、ドイツ戦車の長距離射撃を受けて次々と撃破されていく。それでも米軍も反撃を実施。虎の子である特殊徹甲弾を使ってパンター1両を撃破。他に2両のドイツ軍4号戦車を撃破した。
さらに激しく打ち合う両軍。米軍はさらに4号戦車1両を撃破した。しかし米軍も6両の戦車を撃破されていた。残りは米軍が6両に対してドイツ軍は2両。この時点では勝機ありと判断した米軍ではあったが・・・。
残ったドイツ軍がパンター戦車と厄介なキングタイガーである。しかもキングタイガーには装甲指揮官が搭乗している。そこから繰り出される射弾が米軍戦車を苦しめた。既に特殊徹甲弾を使い果たし、頼みの駆逐戦車M36ジャクソンも撃破されていた米軍は、射撃に耐えて敵中に飛び込むしかない。敵中に飛び込めば勝利条件的には米軍の「勝ち」なのだ。
結局米軍は全戦力の75%に相当する9両の戦車を失い、ドイツ軍戦車4両を撃破した。損失比率でいえば米軍の敗北だが、勝利条件的には米軍の勝利となった。ドイツ軍に一定の損害を与えた上、勝利条件となる道路網を切断することに成功したからだ。
感想
戦術級ゲームなのでルールはそれなりに多い。それでも分隊クラスの戦術級ゲームとしてはシンプルな部類に入るだろう。歩兵同士の戦闘から戦車戦、砲兵射撃や航空攻撃等、陸上戦闘の主要な部分が再現できるのも良い。西部戦線以外にも東部戦線や太平洋戦線もゲーム化されているので、プレイしてみたい。つづく