2021年1月7日。首都圏1都3県に第2回目となる緊急事態宣言が発令された。新型コロナウィルス感染拡大に伴う措置である。その日、私は某ゲーム会に参加の予定であったが、緊急事態宣言を踏まえて参加を中止。その代わり参加プレイヤーとVASSALによる通信対戦を行うことにした。
その日予定していたゲームは、Compass Gamesの"Saopan - The Bloody Rock"である。1944年6~7月におけるサイパン島の戦いを中隊規模で描いた作品で、CSS(Company Scale Serise)と呼ばれる共通のルールで構成されている。Saipanの概要については こちら を参照されたい。
Saipanについては既に何度かプレイしたことがあるが、その結果はいつも「海岸線で米海兵隊が大損害を受けて敗退」というものであった。史実では、大損害を受けながらも海兵隊は橋頭保を確保している。何かがおかしい。
そう思っていた我々に朗報が届いた。CSSの最新版"Little Land"では、間接射撃に関するルールが改定されているとのこと。その改定内容は、「既に弾幕マーカーが置かれているヘクスに対しては、それよりも強力な弾幕マーカーを置く可能性がない限り砲撃マーカーを置けない」というものである。要するにあるヘクスに対して軽砲による間接射撃を行った場合、そのヘクスに対しては中砲又は重砲でしか砲撃できないというものである。海岸に集まる海兵隊に対して間接射撃を複数回加えることが難しくなったのだ。
また射撃についてもルールが明確化され、あるヘクスから実施される射撃は1アクション1回まで。スタックしていても個別射撃は禁止。さらに第2アクションで再度射撃を行うことも禁止となっている。
これらの改定によって海岸線の海兵隊が殲滅される可能性は大幅に減少した筈だ。
という訳でSaipanを再戦。選択したのはシナリオ3「犬の日」である。これはサイパン上陸当日を扱ったシナリオだ。今回参加したのは3名。日本軍は2名、米軍は1名で担当する。私は日本軍を担当し、陸軍第43師団を受け持った。ちなみに日本軍の残りは独立混成第47旅団(独混47)と海軍陸戦隊である。
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猛烈な艦砲射撃の後、米海兵隊2個師団の先鋒部隊がサイパン島南西部に上陸してきた。海岸に伏せていた日本軍は激しい防御射撃を実施。第2海兵師団の2個中隊が海岸線で防御射撃を受けて壊滅する。さらに水陸両用戦車2ユニットが相次いで日本軍の攻撃を受けて撃破。海岸に屍を晒す。このTurnに除去した海兵隊は、歩兵2個中隊と水陸両用戦車2個中隊である。0900
米軍の上陸を迎えて水際撃滅の念に燃える我が第43師団が反撃に出る。しかし先鋒で上陸に成功した海兵隊が散開して橋頭保を固める。水際で反撃する日本軍の猛烈な射撃にも臆することなく上陸を続けていく。チャランカノア飛行場前面では指揮官、水陸両用戦車を含む3ユニットスタック(1個大隊相当)が"0"の目を出して壊滅する所(既に"Supressed"状態だったので、"Supressed"が重なると壊滅する)所であったが、「バーボン」を使用して振り直し要求で辛くも壊滅を免れた海兵隊なのであった。このTurnに除去した海兵隊は、歩兵2個中隊と水陸両用戦車1個中隊である。米第4海兵師団の先鋒がチャランカノア市街地に突入した。やばい。同市には第43師団の司令部がある。このままでは潰されてしまう・・・。
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チャランカノアが危ない。歩兵2個中隊をチャランカノアに突入させて同市の守備を固める。これで一応危機は去ったか・・・。いや、まだわからないぞぉ。チャランカノア海岸では海兵隊がオーバースタックで大混乱。まさに「三密」状態である。そこに日本軍の砲弾が降ってきた日には・・・。さらに日本軍の射撃が冴えまくり、小さい目を連発(0の2連発で壊滅した海兵隊のスタックも出た。バーボン・・・、は、もうない)。逆に海兵隊は士気チェックで高い目を出しまくり、潰走によって除去される中隊が続出である。このTurn、海兵隊は歩兵8個中隊、水陸両用戦車3個中隊、迫撃砲4個中隊の計15個中隊もの損害を被った。まるで「東京都内爆発的感染」のような損害の出し方である。サイパン西部、チャランカノア海岸は米兵の血で真っ赤に染まった。
午前中の戦いで海兵隊が失った戦力は計22個中隊。対する日本軍は支援火器数個を失っただけで失われた歩兵、戦車、砲兵中隊は1個もない状態。この段階では日本軍が圧倒的に勝利していた。
感想
海兵隊の損害はこれまでのプレイにない程の規模になってしまった。ルール改定前よりも酷い状態である。このシナリオでは海兵隊の第2海兵師団と第4海兵師団が登場し、その兵力は以下の通りである。午前中に登場する海兵隊は、第2海兵師団が歩兵12、水陸両用戦車4、迫撃砲4である。第4海兵師団も同じ。米軍の損害はその約2/3に達する。いやはや・・・。
ちなみに午後に上陸する兵力は、第2海兵師団が歩兵10、工兵3、迫撃砲2、加えて戦車小隊が8個と各種支援火器6が登場する。また第4海兵師団は歩兵15、工兵3、迫撃砲4、戦車小隊8、各種支援火器6が登場する。つまり午後の増援部隊の方が多いのだ。だから午前中の大損害が必ずしも海兵隊全体の敗北とする必要もないのかもしれない。
今回は日本軍のダイス目が良く、"0"を連発してしまった。"0"の目が出ると自動的に"Supressed"状態になり、それが2回出るとスタックは壊滅する。"Supressed"状態の前に回復アクションを実施できれば回復できるのだが、日本軍に連続して"0"を出されるとどうしようもない。
もう1つは"Rout"(潰走)チェックである。Routチェックは一種の士気チェックだが、これに失敗したユニットは潰走する。潰走先は所属部隊の司令部(HQ)なのだが、HQがサイパン島に上がってくるのは夕方である。それまでに潰走したユニットは潰走先がないので壊滅するしかない。ただし"散開"状態(要するに戦闘隊形のこと)が存在するスタックについては、潰走チェックに失敗しても"Pin"(釘付け)状態になるだけなので、壊滅することはない。
そして今回の決定的な要因となったのが日本軍守備隊の損害の少なさである。塹壕を掘って地形に籠る日本軍歩兵は極めて頑強であり、空爆や艦砲射撃でも制圧するのが困難である。これを潰しておけば日本軍の直接射撃は黙らせることができるのだが、今回、日本軍守備隊は殆ど損害を受けていなかった。塹壕("Trench")の防御効果が大き過ぎるのではないか、セットアップで塹壕を置くのはやり過ぎか、等、色々と思えてくるのだが、果たしてどうなのだろうか。
これは是非ソロで再戦してみたいものだ。