How Carrier Fought
Lars Celander CASEMATE
既に一度紹介済の書籍 である。今回再読してみたが、やはり面白い。今回は前回紹介しなかった点について少し触れてみる。
一つは空母艦載機の航法問題だ。我々の常識では、WW2期において専用のナビゲーターを持たない単座機は、単独の洋上飛行が困難となっている。これは決して間違った認識ではない。事実、日本の零戦隊は洋上飛行時には艦攻等の誘導機を必要としたし、英海軍でも航法問題に対応するために空戦性能で不利になることを忍んでフルマーやファイアフライといった複座の艦上戦闘機を採用している。日本海軍の複座以上の機体は、パイロットと航法士が別人物で、航法士が航法計算を担当していた。
ところが、である。米海軍の艦載機は、単座機のみならず複座以上の機体にも専用の航法士は搭乗していない。例えばドーントレスやヘルダイバーの後席は、無線と銃座を担当している。三座のアヴェンジャーもまたしかりで、専用の航法士は搭乗していない。米海軍の艦載機は、単座機だけではなく複座以上の機体でもパイロット自身が航法を担当する。だからスカイレーダーはアヴェンジャーを上回る大型艦攻ながら、何の問題もなく単座化できたのだ。
何故、米海軍の艦載機でこのような「芸当」が実現できたのか。その鍵はDalton氏が開発したE-6B Flight Computerと呼ばれる簡易航法装置だ。E-6B Flight ComputerがどのようなシステムかはWikipediaにも出ているので、参照して欲しい。とにかくこのシステムのおかげで米海軍では単座機の単独飛行が何ら困難なく実施できた。かつてFlatTopというゲームで我々を怒らせた「零戦索敵問題」についても、彼らの常識からすれば左程荒唐無稽な話でもないかも知れない。
そんなこんなで空母戦好きには絶対楽しめるこの本。洋書だということで敬遠せず、是非多くの人に読んで頂きたい1冊である。
お奨め度★★★★★