今回紹介する「The Third World War」(以下、TTWW)は、GDW社が1984年に発表したシミュレーション・ウォーゲームです。本作のテーマは文字通り幻に終わった東西両陣営による第3次世界大戦で、想定年代は1990年です。ホメイニ師の死亡によるイランでの政変が引き金になって東西両陣営が欧州全域とペルシャ湾周辺で激突する、というのがTTWWの想定したシナリオです。
2022年にTTWWが「デザイナー復刻版」(Designer Signature Edition)としてCompass Gamesから再販されたことは、 以前に紹介した通りです。
本作について詳しくは、こちら を参照してください。
今回、本作のBattle for GermanyシナリオをVASSALでプレイすることになりました。筆者はNATO軍を担当します。またステルス航空機は、オリジナル版のF-19を使用し、さらにオプションの戦術核兵器ルールは使用しませんでした。
前回までの展開は、--> こちら
3Turn
初期セグメント
オーストリアがNATO側に立って参戦を宣言した。ハンガリーに待機していたWP軍部隊は、直ちにオーストリア領内への侵攻を開始する。航空機整備フェイズ。ここでWP側はやらかしてしまった。整備チェックのダイスが腐りまくってしまい、チェック対象全22個中、チェックに成功したのは半数以下の9個のみ(他に1ユニットが前Turnから使用可能状態)。成功率2/3なのに一体何が・・・。さらに先のクレーター攻撃によって3ユニットが地上待機となってしまい、結局WP側で使用可能な航空機ユニットは、たったの7個になってしまう。
苦しい状況のWP側だったが、天が味方した。天候はまたもや悪化し、「嵐」(Storm)となる。全天候能力を持たない航空機は運用できなくなり、NATO自慢のA-10攻撃機も地上で空しく待つしかなった。まあそれでも最悪の天候である「大嵐」(Severe Storm)にならなかっただけでもマシだとは思うが・・・。
ちなみに「大嵐」になると航空機の運用は一切禁止になる他、空中機動ZOCもなくなってしまう。NATOにとってはWP軍に対する阻止手段を失うことになり、由々しき問題である。ちなみに「大嵐」になる可能性は約5.6%。低い確率だが、無視できるほど小さいものではない。
WP第1インパルス
WP側の移動に先立ってNATO軍機による打撃阻止任務が行われる。まずオランダ空軍のF-16が集束爆弾を抱えてハノーヴァー西方で阻止攻撃を任じるも、対空砲火によって撃退されてしまう。
続いて米軍のF-15Eストライクイーグルの編隊が、ブレーメン前面に展開していたWP軍第2親衛軍上空に飛来した。ソ連軍はなけなしのMiG-23戦闘機で迎撃を試みるが、上空援護に当たっていたF-15Cイーグルがスパローミサイルを浴びせかけてMiGの大半を撃墜してしまう。ストライクイーグルは、WP軍機甲集団に爆弾の雨を降らせる。第2親衛軍は東ドイツ軍主体の精強部隊であったが(東ドイツ軍はソ連軍よりも練度が高い)、一連の攻撃により大損害を被ってしまう。
オーストリアが参戦したため、WP軍の後続波が陸続としてオーストリアに攻め込んできた。在ハンガリーのWP軍第21軍と第16軍、チェコに布陣する第10軍等が主体である。いずれも侵攻第2波用に用意されていた2線級部隊。練度も一部が"6"である他は、大半が練度"5"とか"4"といった低練度部隊であった。
オーストリア本土でソ連軍は圧倒的な規模の攻撃を行う。オーストリア軍も善戦したが、兵力の差は如何ともし難く、グラーツ、ザルツブルク、リンツが次々と陥落、首都ウィーンの命運も旦夕に迫っていた。
一方NATO正面のWP軍は、度重なる戦闘で消耗著しい状況のため、このインパルスは攻撃を控えて混乱の回復を行う。
NATO予備インパルス
NATO側は積極的な反撃は行わない。戦線の整理と消耗部隊の回復に努めつつ、イタリア戦線を整理し、WP軍のさらなる侵攻に備える。WP第2インパルス
休養によって戦力を回復したWP軍は、中欧戦線で再び攻勢を開始した。北方戦線ではソ連第2親衛軍と第7親衛戦車軍の計7個機械化師団が、ウェーザー側西岸に布陣する米第2機甲師団「スピアヘッド」を攻撃する。兵力で大きく劣り、さらに悪天候のため頼みの航空支援を期待できない状況の中、米軍部隊は奮戦したが、衆寡敵せず。4:1で戦闘結果"D/3DR"。米軍師団は後退を余儀なくされる。
南方では、シュタットガルト付近でソ連第13軍、第5親衛戦車軍等の機械化部隊が米英独仏の混成スタックを攻撃する。戦闘比4:1で戦闘結果 "-/DR"。NATO混成部隊は後退を余儀なくされる。
さらに第2梯団サブインパルスでは、戦線南翼に布陣するフランス軍を主体とする部隊を、ソ連軍を主力とするWP軍が攻撃する。戦闘比は6:1で、防御側全滅の危険もあったが、何とか全滅は免れてNATO軍は後退していく。
その間、ウィーンが陥落。西ベルリンは陥落寸前となったが、ギリギリで持ちこたえている。
NATOセグメント
NATO軍は、ウェザー川を渡河してきたソ連第7親衛戦車軍のスタックに対する反撃を計画する。西ドイツ空軍のF-4ファントムが第7親衛戦車軍に打撃阻止を実施するが、それが大外れ。1打撃も与えられない。これでは6:1の比率が立たないためNATO軍の反撃計画は頓挫してしまう。曇天のため航空支援も得られないのでNATOは反撃を諦める。特に南方戦線がWP軍の攻撃によって圧力を受けていたので、南方戦線を後退させた。さあいよいよ決戦か?。というところで今回は時間切れだった。
感想
今回のプレイ時間は2日間で約17時間。1Turnの所要時間は5~6時間であった。やはり時間のかかるゲームである。この時点でVPを計算すると、WP側の獲得したVPは37点であった。これは「NATOの実質的勝利」で、6段階の勝利段階のうちNATOにとっては上から2番目の勝利である。WP軍がこの時点でほぼ取れるのが確実なのが、西ベルリン、ウルツブルグ、カッセル。これを加えるとVPは41点になるが、これでも勝利段階は変わらない。
WP軍の敗因としては、ハンブルク、ニュールンベルグ、西ベルリンといった大都市攻略に手間取り過ぎたのが大きかった。特に西ベルリンは一番最初に兵力を集中して一撃で落しておくべきだった。そうすればトータルとしての手間は少なくて済んだだろう。逆にニュールンベルグとかハンブルクは、後続波に任せておく手もある。
それにしてもThe Third World Warは面白い。基本ルールはシンプルだけど、航空戦を含めた陸海空立体作戦を楽しめるのが良い。航空支援等で個々の戦闘が盛り上がる点。さらには機種別の航空機ユニット、練度に代表される地上部隊のキャラクター性も良い。
機会を見つけて是非再戦してみたい作品だ。