2023年11月
「太平洋戦史」(CMJ)-シンプルなルールで太平洋戦争全域を再現する
角館駅前「お食事処 茶房 さくら小町」
Stalingrad'42(GMT)Little Saturn/Winder Stormをプレイする【4】
Stalingrad'42(以下、本作)は、2019年に米国GMT社が出版したシミュレーション・ウォーゲームである。本作のテーマは1942年夏から秋にかけて行われた青作戦とスターリングラード攻防戦、そしてウラヌス作戦までを扱っている。1Turnは実際の3~7日間、1Hexが10マイル、1ユニットが連隊~機械化軍団に相当する(基本は師団~機械化軍団)。
今回プレイしたのは、Expansionは、2022年に発売された追加キットで、1942年12月から始まったリトルサターン作戦とそれに続く冬嵐作戦、スターリングラード陥落を扱う。新たなルール、ユニット、シナリオが追加されている。このシナリオは1942年12月14日から翌年2月5日までの約2ヶ月間を計12Turnで描いている。史実において、スターリングラードでの第6軍降伏が1943年1月31日なので、このシナリオはスターリングラード陥落までの時期を描いている。
前回までの展開 --> こちら
43Turn(43/01/25-28)
赤軍Turn
天候は曇り。クルスク前面での赤軍の攻勢は一旦ストップしたが、その東方、スタールイ・オスコル(Staryy Oskol,1806)付近で赤軍部隊が攻勢を仕掛ける。同方面には最新鋭の重戦車ティーガーを装備した第503重戦車大隊(3-2-5)が展開していたが、赤軍はティーガーに支援された枢軸軍を撃破した。ヴォロネシ方面でも歩兵部隊を中心とした赤軍の攻撃でドイツ軍歩兵師団が遂にRemnat(基幹部隊)の状態となってしまった。最早ヴォロネシ陥落も避けられない情勢である。
カメンスク付近では、赤軍第5親衛戦車軍による容赦ない攻撃が続いていたが、ドイツ軍が友軍砲兵の支援を受けて辛くも赤軍部隊を撃退(断固たる防御に成功)。カメンスク付近での赤軍部隊の前進は一時的にストップさせられた。ただし、ロストフまで赤軍はあと7Hexにまで迫ってきており、予断を許さない。
コテルニコヴォ付近でも赤軍部隊が枢軸軍を撃破して前進を果たし、さらにコーカサス方面でも徐々に赤軍が前進してきた。
枢軸軍Turn
枢軸軍は、ティーガー重戦車を装備した精鋭の第2SS装甲師団「ダス・ライヒ」(12-10-6)が登場。危機的状況にあるKamenk橋頭保の第2線防衛ラインに配置する。他の戦線でも徐々に後退しつつ戦線の縮小を図る。が、如何にも兵力の感がぬぐえない。このTurnの終了時にヴォロネジを守るドイツ軍が降伏した。
44Turn(43/01/28-02/01)
赤軍Turn
天候は曇天。いよいよ残り2Turnである。勝利条件を見直すと、枢軸軍が12VP以上を獲得していれば勝利する。現状をみると、現時点で枢軸軍が確保しているVPは10VP。既に枢軸軍の勝利ラインを割っていた(あれ・・・?)。ここから枢軸軍が逆転するのは難しそうだが、それでも最後までプレイしてみよう。北方では、サドンデス勝利の都市であるクルスクに対して赤軍が1:1で攻撃を加えたが、これが失敗に終わった。
赤軍部隊が最も集中配備されているカメンスク付近の橋頭保では、赤軍第5戦車軍が南下攻撃。ロストフは無理でもその手前のシャフティ(Shakhty)を落とすべく猛烈な攻撃を仕掛ける。赤軍部隊は枢軸軍の第1線は突破したものの、第2戦を守る第2SS装甲師団「ダス・ライヒ」に進撃を阻止されてしまう。
コーカサス方面では、ヴォロシロフスク(Voroshilovsk,4549)に対して赤軍が2:1の攻撃を仕掛けたが、これが失敗に終わってしまう。
枢軸軍Turn
枢軸軍が勝つためには、クルスク北方のソ連軍を掃討する必要があった。これに成功すれば枢軸軍のVPが13VPとなり、ギリギリで勝ち逃げできる。そのために枢軸軍はとっておきの増援部隊である第1SS装甲師団「ライプシュタンダルテ・アドルフ・ヒトラー」(12-10-8)をクルスク方面に投入した。SS装甲師団の威力はすさまじく、赤軍第3戦車軍団(7-5-5)は大損害を被って撃退される。しかし赤軍歩兵師団が損害を出しつつ現地点を死守したので、「ライプシュタンダルテ・アドルフ・ヒトラー」の進撃がストップしてしまう。
シャフティ付近ではドイツ第2SS装甲師団「ダス・ライヒ」を主力とする枢軸軍装甲部隊が、赤軍第5親衛戦車軍に対して反撃を実施。素の戦闘比は1:1だったが、SS装甲師団による2シフトで3:1。さらにマンシュタインによる振り直しの特典を得て第5親衛戦車軍を撃破。これにより赤軍によるシャフティやロストフの占領は絶望的な状況となった。
45Turn(43/02/01-02/05)
赤軍Turn
天候は曇天。いよいよ最終Turnである。赤軍は枢軸側の勝利の可能性を完全に失わしめるため、クルスク南方で攻勢を仕掛けた。ここを突破しクルスク南方で盤端に到達すれば、枢軸軍は3VPを失い勝利の可能性はほぼなくなる。5:1の戦闘比で攻撃したものの、ドイツ軍はこの防衛ラインを死守。クルスク南方での赤軍の攻撃は失敗に終わった。シャフティ付近でも赤軍は攻撃主力の第5親衛戦車軍が先のドイツ側の反撃によって戦力を失っていたため、大々的な反撃は実施しなかった。局地的な攻勢によりロストフまであと5Hexまで近づいたが、ここが赤軍の限界だった。
スターリングラード南方コテルニコヴォからさらに下ったジモヴニキ(Zimovniki,4633)付近では、赤軍の猛攻を受けてドイツ軍第19装甲師団の残余が壊滅。ドイツ軍とルーマニア軍の残余部隊が赤軍の大部隊に飲み込まれて次々に壊滅。僅かに生き残ったドイツ第23装甲師団と第384歩兵師団の残余は、赤軍の大軍に取り囲まれて身動きが取れなくなる。
コーカサス方面では、赤軍部隊が再びヴォロシロフスクを攻撃。今度は部分的に攻撃成功。ヴォロシロフスクの市街地に赤軍2個師団が突入した。
枢軸軍Turn
ドイツ軍はクルスク北方で最後の反撃を仕掛ける。第1SS装甲師団、グロスドイッチュランド装甲擲弾兵師団等でクルスク北方に張り付いている赤軍部隊を攻撃。全てのスタックを排除すれば、枢軸軍が逆転勝利できる。5:1の戦闘比で攻撃を実施。戦闘結果がD1以上なら突破戦闘でクルスク北方の赤軍を全て可能性が残る。確率50%なので悪い賭けではない。しかし戦闘結果は無情のDRX。この時点で赤軍の勝利が決定した。他の戦線を見ると、ロストフ北方シャフティ付近ではドイツ第2SS装甲師団を含むドイツ、ルーマニア軍による反撃が炸裂。強力な赤軍部隊でもこの猛攻を防ぎきれず、赤軍の橋頭保は後退を余儀なくされる。
その南、スターリングラード南方からコーカサス方面では枢軸軍の戦線は事実上崩壊。完全に孤立化したドイツ軍のスタックを救援するすべはなく、東に開けた戦線も既に戦線の体を成していない。唯一コーカサス山脈付近を守るルーマニア軍だけがまとまった戦線を維持している。しかしこれも後方を遮断されると助かる術はない。そろそろ撤退が潮時だが、既に手遅れの感も…。
ということでこの時点でキャンペーンシナリオが終了した。枢軸軍の勝利得点は10VP、12VP以上で枢軸側の勝利なので、今回は赤軍の勝利となった。盤面の戦況を見ると枢軸軍はかなり絶望的だが、VP的には結構ギリギリ。クルスク北方で盤端に張り付いた赤軍部隊の存在が赤軍の勝因となったが、これがなければギリギリで枢軸軍が勝利していた所だった。
感想
結果的には赤軍の勝利となったが、赤軍も結構難しい。確かに盤面の状況は有利だが、漫然と攻撃しているだけではダメである。特にコーカサス方面が重要で、こちらである程度VPを稼いでおかないと、盤面で勝ってもゲームに負ける。序盤から中盤にかけてはドン河畔のソ連側機甲戦力(5個機械化軍団)が殆ど戦局に寄与していないかったので焦った。後半でロストフに突進して大いに枢軸軍を脅威したが、最後はSS装甲師団にストップさせられてしまった。ゲームとしては面白かった。ルールは比較的シンプルでわかりやすく、広い盤面で数多くのユニットを駆使して戦うのはこのゲームならではの快感である。1Turnの所要時間は2~3時間、全12Turnなのでシナリオ完遂するためには24~30時間必要。私の場合は約30時間(AAR作成の時間を含む)かかったが、時間を忘れる程面白かった。さすがは名作の誉れ高い作品である。現時点では作戦級ゲームの最高峰の1つと言って良いと思う。
次回は青作戦キャンペーンをプレイしてみたい。
書籍紹介「丸2023年7月号」
丸2023年7月号
潮書房
特集は「天山」&「流星」。日本海軍の後半戦を代表する艦上攻撃機2機種を取り上げている。両機種とも登場が戦争後半だったため、苦戦を強いられ、その高性能を十分に発揮できなかった。今回の特集では、両機種の技術的な解説と戦闘記録に関する記事が取り上げられている。さらに「丸」誌の強みとして、過去の「丸」誌に掲載されていた旧海軍関係者の手記を計5本掲載しており、往時の息吹を感じることができる。
第2特集は海上自衛隊「おやしお」型潜水艦。「そうりゅう」や「たいげい」のようなAIP機関こそ搭載していないが、在来型ディーゼル潜水艦では海自最高峰の「おやしお」型潜水艦を中心に、海自の潜水艦や対潜部隊を多角的に取り上げている。
全般に読む所が多く、読みごたえがあった。
そういえば最近の「丸」誌は以前に比べて連載記事が減ったような気がする。連載記事は個人的に興味がない部分も読まされる(読み飛ばす)ことになるので不要だと思っていたが、そういった意味では連載記事が減ったのは嬉しいことだ。
お奨め度★★★
月刊丸 2024年2月号 (2023-12-25) [雑誌] - 特集:紫電改
月刊丸 2023年7月号 (2023-05-25) [雑誌] - 特集:天山&流星