シミュレーションジャーナル ゲームジャーナル別冊 激闘 関ヶ原 ~どうする家康?どうなる関ヶ原!?~
関ヶ原の合戦と言えば、日本戦史上屈指の大会戦で、ウォーゲーム界でも屈指のメジャーテーマの1つである。これまでに関ヶ原の合戦をテーマにしたゲーマは国内外で数多く出版された。今回取り上げる「激闘、関ヶ原」(以下「本作」)も関ヶ原の合戦を扱ったゲームの1つである。
本作は、1988年にツクダホビーから発売された作品で、慶長5年9月15日の関ヶ原の決戦当日を、1Hex=数百メートル、1Trun=約30分、1ユニットは300~400名のスケールで再現している。ルールはシンプルでプレイアビリティは抜群。関ヶ原の合戦を余すことなく再現しながら、フルキャンペーンでも1日あれば十分プレイ可能という本作は、間違いなく傑作ゲームと言えよう。
これまで長らく絶版状態が続いていたので再販が待たれていたが、2023年に実に35年ぶりにGame Journal誌の別冊として再販されることとなった。そこで再販を記念して本作を久しぶりにプレイしてみることにした。
今回プレイしたシナリオは、シナリオ2「史上最大の決戦」。いわゆるヒストリカルシナリオで、関ヶ原の戦いを史実と同じ兵力で再現する。ちなみに本作には2種類の参戦判定表があり、東軍有利の参戦判定表①と西軍有利の参戦判定表②がある。今回はヒストリカル性を重視し、参戦判定表①を利用することにした。また筆者は東軍を担当した。
1Turn
第1Turnは東軍の井伊隊、松平隊のみが移動可能であり、その他の部隊は移動できない。井伊直政が
「いま、上様のお言いつけで大物見に出るところだ」
と言ったとか言わなかったとか・・・。
2Turn
西軍は部隊前面に鉄砲隊を配置し、火力で東軍を阻止する防御の布陣である。対する東軍は、槍兵を前面に配置し、攻撃型の布陣で挑む。
井伊、松平両隊の抜け駆けに激怒した東軍諸隊は、大挙として西軍の布陣に突撃を敢行する。南翼に位置する福島正則隊と田中吉政隊が西軍宇喜多秀家の部隊に突撃を敢行。その北では徳川家康譜代の松平忠吉、井伊直政隊が小西行長隊に殺到する。その北側には、加藤嘉明、細川忠興各隊が並び、最右翼には福島隊と並んで東軍最強の黒田長政隊が布陣している。
突撃する東軍部隊に対して宇喜多、小西の各隊は激しい銃撃を浴びせかける。東軍先鋒の諸隊は激しい銃撃に一瞬怯むが、それでも激しく突撃していく。
福島隊の突撃は猛烈で、早くも宇喜多隊の先鋒を崩していく。また井伊直政隊は小西隊を崩して突撃していく。
当然西軍は激しく反撃する。突撃した井伊直政隊、福島正則隊の一部は西軍の包囲攻撃を受けて撃破された。
3Turn
このゲームでは、両軍とも自身の手番開始時に裏切りチェックを試みることができる。この時重要になるのが両陣営のVP。VPで勝っている側は裏切りチェックのダイス目に有利な修正が得られる。現時点でVPで勝っているのは東軍側であった。従ってこの時点で東軍は裏切りチェックに有利な修正が得られる。ここで東軍プレイヤー(つまり筆者)は悩んだ。大物小早川はまだチェック対象外であったが、赤座諸隊と長曾我部隊、吉川隊に参戦を促すことが可能だ。特に重要なのは吉川隊。2d6で3以下が出れば、吉川隊が東軍側として参戦する。吉川隊自体はそれほど大兵力ではないが、吉川隊が東軍につくと毛利秀元隊の中立化が決定し、以後毛利隊が西軍につくことがなくなる。しかもこの状況下では吉川隊が西軍側で参戦する可能性はゼロなので、東軍としては吉川隊について参戦チェックをするべきであった。
あと赤座諸隊の長曾我部隊。いずれも6ゾロが出れば西軍側で参戦することになるのだが、逆に赤座諸隊は6以下、長曾我部隊は3以下の目を出せば東軍側につく。長曾我部隊については事故った時のリスクが高いので必ずしも参戦チェックするべきかどうかは難しい所だが、赤座諸隊については東軍側につく可能性が高いし、万一西軍側についても大して痛くはない。だから赤座諸隊は参戦チェックすべきであった。
結局、東軍プレイヤー(筆者)はこの場面で参戦チェックをしなかったが、後でそのことを悔やむことになる。
福島隊はなおも宇喜多隊の前方を崩していく。侍大将である可児才蔵も突撃に加わる。福島隊の南翼では、京極隊も前進し、宇喜多隊の布陣を食い破っていく。しかし宇喜多隊の第2線を守る槍兵達はさすがに精強であった。福島隊、京極隊の猛攻にもよく耐え、あまつさえ逆襲で彼らの一部を討ち取っていく。戦場は正に乱戦の様相を呈してきた。
その北側では、井伊の赤備えが宇喜多・小西両隊の間隙をついて錐のように突撃していく。しかし井伊隊の両翼を固める田中隊、加藤隊の突撃が今一つ冴えない。井伊隊のみが単独で突出しており、極めて危険な状況であった。
4Turn
東軍の損害が嵩んできたので、VPで西軍側が逆転した。現状では東軍側から参戦チェックのダイスを振るのは危険である。逆に西軍はノーリスクで毛利隊や長曾我部隊の参戦チェックを実施できる。これは東軍にとっては極めて危険な状況であった。この状況で毛利、長曾我部のいずれかが西軍として参戦した場合、今まで日和見を決めていた小早川隊や赤座諸隊、さらには島津隊も西軍側で参戦することになる。これは東軍にとっては悪夢と言える。焦った東軍は各地で西軍陣地に猛攻を加えていく。しかし態勢を立て直した西軍部隊も頑強に提供し、逆に東軍部隊が討ち取られる兵がどんどん増えていった。このままではいけない。焦る東軍。しかし状況は好転する兆しを見せない。
つづく