221229_ロシアの

ロシアのウクライナ侵略で問われる日本の覚悟

グレンコ・アンドリー 扶桑社


ロシアによるウクライナ侵略は、21世紀の現代にあっても覇権主義的な国家が自らの目的を達成するために軍事力行使を厭わないことを明らかにした。本書は、ウクライナ国籍の筆者が今日のウクライナの事情を踏まえたうえで今後日本が目指すべき安全保障政策について提言したものになっている。
まず筆者はウクライナと日本の類似性について指摘する。筆者曰く、ウクライナは「平和ボケして」「国益を損ねる売国政権を生み出し」「愛国者にファシストのレッテルを貼り」「軍事力の価値を否定し」「弱腰外交を展開した」とする。そして筆者は、これらの多くが現在の日本と類似しており、2014年と2022年にウクライナを襲った悲劇が、決して日本にとって無縁ではないことを指摘する。
その上で筆者は、ウクライナを襲った悲劇に日本が見舞われないためには、核武装を含めた日本の軍事力強化を説き、軍事力強化こそが戦争を回避する手段だとしている。さらに単に軍事力を強化するだけではなく、歴史認識や人口問題などの課題と真摯に向き合い、これらに立ち向かって真に世界のリーダーとなることが日本の進むべき道だとしている。
評者である私自身は、筆者の主張を全面的に首肯するものではないが、日本と近隣諸国との関係を見るにつけ、「ウクライナ問題は決して他人事ではない」という部分については同意せざるを得ないと考える。そのためには、実効性のある安全保障政策を行い、日本に敵対的な諸外国の脅威に対抗する必要があることは全面的に合意したい。