
日本人だけが知らない戦争論
苫米地英人 フォレスト出版
本書の内容を一言で言えば「陰謀論的世界観」である。筆者曰く
「二度に渡る世界大戦はヨーロッパの大銀行家が金儲けのために起こしたものだ」
「2014年にウクライナで親ロ政権が倒されて西側寄りの政権になったのはヨーロッパの銀行家がロシアを追い詰めるためだ」
「日本と中国との対立を煽り、戦争を起こそうとしているのは米国の金持ち達だ」
ということらしい。
本書は、本来複雑で数多くの人々の考えや行動で動いている国際社会や歴史というものを極めて単純なモデル化し、それに当てはめて説明しようとしている。しかし人間社会はこの筆者の言うように単純なものではないし、戦争が起こる理由もそんなに単純なものではないと私は考える。無論、筆者の言う「金持ち」の意向が働いたこともあるかもしれないが、そのほかの様々な宗教や政治思想等が絡み合って歴史が形作られていることを忘れてはならない。
さらに本書の危険な所は読者に思考停止を強いる点である。例えば中国や北朝鮮の脅威、安全保障に関する議論に対して、この筆者は言う「またお金儲の話ですか」と。筆者がそう思うのは自由だが、そのような単純化した議論を読者に強いるのは、危険な考えだと私は思う。
コメント