Red Storm(以下、本作)は、2019年に米国GMT社から発売されたシミュレーションゲームだ。テーマは1987年における東西ドイツ上空における航空戦闘である。実際に起こらなかった戦争を再現する本作は、一種の「仮想戦」ゲームといえる。ゲームシステムについては、 以前に記事や、以下の動画を参照されたい。



今回は、その中からシナリオRS12:Second Echelon Forcesをプレイしてみた。プレイスタイルは、VASSALを使った対人戦である。今回、私はNATO側を担当した。

シナリオの背景

1980年代におけるNATOの主要なドクトリンは、WP側の第2,第3梯団が最前線に到達する前に航空攻撃によって撃破することであった。WP軍の最初の攻撃を阻止したNATO司令官は、最前線に向けて移動中のWP第1親衛戦車軍麾下の第2梯団師団に対して大規模な航空攻撃を欲していた。繰り返し行われた夜間航空攻撃によってWP側の防空ネットワークを弱体化させたNATO軍は、悪天候の中、対空火器とSAMの嵐に立ち向かう。

セットアップ手順

ZZ_Cloud_LowDeck例によって準備に手間のかかるゲームである。1つずつ手順を追って進めるしかない。 最初に天候フェイズ。このシナリオでは、"Poor Weather"でダイスを振る。出目は"10"でDRM-2を適用した結果、天候は「Dense cloud at Deck/Low and Low/Med」(厚い雲がDeck/LowとLow/Medの間にあり)となった。厚い雲を挟んだ場合、LOSが通らない。

次に地上計画フェイズである。両軍当時に配置するが、WP側はWP側で独自に進めてもらった。当日いきなりスタートしても準備時間が勿体ないからである。NATO側は早期警戒レーダーが2基とHawk地対空ミサイル部隊が3個である。

Pic00a


次にISRフェイズである。諜報・監視・偵察の意味で、事前偵察で位置がバレているSAM部隊の数を決定する。NATOのダイス目は最悪で、結果はPoor。WP軍SAM部隊の20%しか位置を確認できなかった。

次に侵攻計画フェイズ。NATO軍の攻撃目標を決定する。実は既に事前に決定済で、今回の攻撃目標は今回のシナリオでは、NATO側は4個の攻撃編隊を有し、それぞれが1個所ずつの目標を割り付けられる。ダイス判定の結果、Armor(6413)、Armor(6911)、Mech(6810)、HQ(7011)となった。NATOは攻撃目標に対する攻撃針路を設定する。同時に登場する航空機を決定する。このゲームの準備段階で一番盛り上がる部分だ。NATO側。CAPが2個編隊と侵攻編隊1個編隊が登場する。

CAP機は西ドイツのF-4Fとオランダ空軍のF-16Aが登場することになった。F-16Aは有難いが、F-4Fはちょっと残念である。

次に侵攻編隊。Escort JammingはEF-111Aが2機。護衛戦闘機はダイス判定の結果米空軍のF-4Eファントムが8機(あちゃー)。SEADはこれまたダイス判定の結果カナダ空軍のCF-18が8機。爆撃本隊は西ドイツ空軍のトーネードIDSが16機。偵察機は米空軍のRF-4Cファントムが4機である。その他、無人機BQM-74C Chukar 16機が登場する。これはWP側にSAMを撃たせるための囮機だ。
CAP機が旧式のファントムというのがちょっと寂しい。ちなみに計算によると、制空戦闘機がF-15A/Cになる確率は42%、F-4E又はFGR2といった「ファントム系列」の機体になる確率は38%、CF-18は20%である(合計100%)。一番確率的な機体を外して外れをあてがうなんて、神様、そりゃないよ。

CF-18


またSEAD機のCF-18ホーネットについても、機体そのものは最新型だが、米軍機が搭載するHARMやShrikeといった対レーダーミサイルを装備していない。搭載兵装は昔ながらのロケット弾である。
爆撃本隊のトーネード隊も精密誘導兵器を搭載せずに通常型の爆弾を搭載する。そもそもトーネードは精密誘導兵器の搭載能力がないのだが(本ゲームの中での話です)、仮にトーネードではなく米軍のファントムやアードバーグといった精密誘導兵器搭載可能な機体であっても、通常型爆弾を使用していた可能性が高い。晴れ渡ったイラク上空とは異なり、悪天候が続くドイツ上空では精密誘導兵器は必ずしも有効とは言えない面があった。

Pic00b


とまあ、色々あるが、準備を終えてプレイ開始である。

NATO側の作戦

WG_Tornado_LukasNATO側の主目標はWP側第1親衛戦車軍に対する打撃阻止任務である。その中で一番重要なのが爆撃本隊。トーネード16機からなる爆撃編隊が1機も失うことなく爆撃を実施できるのが理想だ。そこで3段構えの囮作戦を行った。

第1陣は、セットアップで配置されているCAP編隊4機とダミー編隊である。これらの編隊は、味方最前線付近に進出、敵の戦闘機への攻撃のチャンスを伺いつつ、敵SAM部隊を刺激してミサイルを撃たせることを狙う。

第2陣は、爆撃本隊に随伴するSEAD機と護衛戦闘機。いずれも強力な内装式電子妨害装置(ジャマー)を搭載しており、敵SAM部隊を挑発してSAMを撃たせる。さらにSEAD機はチャンスと見れば搭載する空対地ロケット弾でSAMに対する制圧攻撃を積極的に行う。

第3弾は、無人機BQM-74C 16機の編隊。これはあたかも爆撃本隊であるかのように見せかけて敵SAMを受け付ける。バレるまで何発SAMを撃たせるかが勝負。

こうした囮による露払いの後、爆撃本隊が登場する。なお、囮も含めたこれらの編隊は、いずれも強力なスタンドオフジャミングによって守られることになる。

1Turn

US_EC130_BuZZCAP機4機がダミーを従えて敵方に前進する。その後方からは強力なスタンドオフジャミング能力を持つEC-130 Compass Callが広域電子妨害を仕掛ける。ちなみにこの時点で彼我の接触はない。

Pic01a


EC-130H


3Turn

NATO側の囮第2弾と第3弾が登場する。すなわち護衛戦闘機のF-4Eファントムが8機、SEAD機のCF-18ホーネットが8機、無人機BQM-74Cが16機、そして電子妨害を担当するEF-111レイヴンが2機だ。

BQM74C


NATO機の接近に対してWP側の戦闘機が狼のように襲撃のチャンスを伺う。それをNATOのHawkミサイル部隊が発見し、目ざとくミサイルを発射した。しかしミサイルは目標を逸れた。

4Turn

NATO側の戦闘機隊はこれまで超低空飛行を行ってきたが、このTurnに一気に中高度まで上昇し、次のTurnのチャンスを狙う。

Pic04a


5Turn

US_F4_DodgeこのTurn、NATOの爆撃本隊が盤上に登場する。
NATOとWP側の戦闘機同士が接近してきたので、戦闘機同士の交戦が始まった。まず米軍のF-4ファントムの編隊がMiG-23MLDフロッガーの編隊と交戦。AUM-7Fスパローミサイルによる視認距離外(BVR)戦闘を仕掛けるが、戦果なし。

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NE_F16_Vivier続いてオランダ軍のF-16Aとソ連軍のMiG-23MLDが超低空で交戦する。空戦機動力に勝るF-16が空戦を有利に進めるが、結果的には両軍共損害なし。ただし両軍とも格闘戦による疲労等によってDisordered状態となる。

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つづく





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