二百三高地
東映
1980年に公開された日本製の戦争映画である。この時期の東映戦争映画は、1981年の「連合艦隊」、1982年の「大日本帝国」といった作品があり、現在見直しても楽しめる作品群となっている。この「二百三高地」はタイトル通り日露戦争最大の激戦地となった旅順攻略戦を大河ドラマ風に描いた作品である。作品のスタートは満州のハルピンでロシア軍の2人の日本人が処刑される所からスタートする。横川省三と沖禎介。実在するこの2人の処刑が日本のロシアに対する抵抗の象徴として描かれ、その後にタイトルバックとなり、当時の東アジアの情勢説明となる。
この作品は、最前線で戦う兵士達と作戦指揮をとる高級司令部の2つの視点から旅順攻略戦が描かれている。最前線については、金沢第9師団の歩兵部隊に所属する本作の主人公小賀武志(あおい輝彦)と彼の部下たちの姿を通じて描かれている。当初は平和を愛し、ロシアに愛着の念を抱いていた小賀が、苛烈な戦闘経験を通じて次第に変貌していき、最後はロシア兵を激しく憎むように変化していくさまが本作の見どころの1つだ。また小賀達以外にも旅順攻略を戦う日本兵たちの悲惨な有様がこれでもかこれでもかと描かれ、特に前半のクライマックスであるカポニエールでの戦いは、トラウマになりそうな悲惨な景観である。
もう1つの見どころは旅順攻略を巡る作戦指揮の部分である。本作が公開されていた1980年代は、いわゆる「司馬史観」が幅を効かせており、本作で描かれている旅順攻略戦も概ね司馬遼太郎の名作小説「坂の上の雲」での史観に準拠している。つまり第3軍の司令部は頑迷固陋で徒に自軍の損害を増やす。苦戦する第3軍を救ったのは児玉源太郎の巧みな作戦指揮にあったとする説である。因みに児玉源太郎を演じるのは丹波哲郎。乃木希典は仲代達也が演じた。
BGMはさだまさし。「海はぁ、死にますか・・・」。当時もヒットした曲だが、今見ても映像と見事にマッチしていて心地よい、劇中では2度ほど流れるのだが、いずれの場面でも映像と音楽の融合が見事である。
今から40年以上も前の古い作品だが、現在の目から見ても十分の見ごたえのある作品である。歴史的な視点で言えば、現在の目から見ればやや古い見解(いわゆる「司馬史観」)も見受けられるが、その点を差し引いても見どころの多い作品である。
お奨め度★★★★
日露戦争の勝敗の分かれ目となった“二百三高地”をめぐる攻防戦を描いた作品。総製作費15億円の巨費を投じ、準備から撮影完了まで3年の歳月をかけて製作された。
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