230513_人が辞めない

人が辞めない会社になりました

平川宣秀 あさ出版

特定の企業に長く勤めていると、果たして自分の会社がブラックなのかホワイトなのかはわかりにくい。まあ単純にブラック/ホワイトと2分割できる訳ではないと思うが、自身の勤務している組織のどういった点がホワイトで、どういった点がブラックなのか。ある種のリファレンスを知るために本書を読んでみた。
本書の著者が経営しているエンパワーメント株式会社(以下、当社)は、社員満足度(今風の言葉で言えばエンゲージメント)が高く、かつ成長を達成しているという典型的なホワイト企業である。本書の中で筆者は、当社がなぜホワイトなのか。そのための具体的な施策を事細かに述べている。
まず筆者はマニュアルの重要性を説く。当社では新人からマニュアル通りに作業することを徹底させるという。マニュアルと言えば「堅苦しい」と思われがちだが、ある程度社会経験を積んだ人間はマニュアルの重要性を理解しているだろう。マニュアルがあるからこそ仕事の進め方に悩まないし、その中から創意工夫が生まれてくる。逆にマニュアルがなければ仕事が標準化されないので業務品質が安定せず、業務効率も悪い。マニュアルを重視しているという筆者の主張は十分に頷けるものである。
さらに筆者は福利厚生と会社の成長は表裏一体と説く。いくら福利厚生を強化しても、会社の成長が伴わなければそれを維持することはできない。さらに言えば福利厚生強化によるエンゲージメント向上は一時的なものに過ぎず、やがて社員はそれを既得権化してしまう。だから福利厚生はあくまでも会社の成長と一体でなければならないとする筆者の考え方は大いに共感できる。
最後にコミュニケーションの重要性。そのために当社では社内イベントや飲み会、社員旅行を重視しているという。「今さら社員旅行?」という声が聞こえそうで、私もそう思ったが、当社ではこれらのイベントを業務の一部として扱ってる。私自身、業務外時間で会社の人間と飲みたいとは思わないが、業務時間内なら飲み会や社員旅行も悪くないかな、と思ったりした。

お奨め度★★★

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