NATO表紙


CompassGamesの「NATO: The Cold War Goes Hot - Designer Signature Edition 」(以下、本作)は、2021年に米国CompassGames社から発売されたSLGである。テーマは冷戦時代に欧州正面で想定されていた東西両陣営の直接軍事対決。設定年代は1983年と1988年の2種類があり、後者の方がNATOにとって有利である。

今回、「戦略的奇襲シナリオ」の1988年版をプレイしてみた。これはWP側が何の前触れもなくいきなり西ドイツに侵攻してくるというNATO側にとっては悪夢のようなシナリオである。しかしWP側も十分な準備をしないまま攻勢を仕掛けたので、兵力が十分ではない。果たして勝利を収めるのはどちらか?

今回、私はNATO側を担当した。

前回までのあらすじは --> こちら

2Turn

WP側手番

デンマークでは、首都コペンハーゲンにデンマーク軍2機械化旅団が入城した。これでコペンハーゲンが簡単に落ちることはないだろう。それでもWP側は航空兵力を投入して強引にコペンハーゲンを攻撃したが、所詮は軽装備の海兵隊と空挺部隊である。正規の機甲旅団であるデンマーク軍を撃破できる筈もなかった。

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西ドイツ領内でも防御を固めたNATO側の前線に対してWP軍はさらなる猛攻を加えてきた。例によって化学兵器と航空部隊が大量投入されたが、序盤の混乱から立ち直りつつあるNATO軍は化学兵器に対する抵抗力を増していた。また制空権もNATO側が早くも取り戻しつつあった。その状況を打開するため、西ドイツ各地のNATO側航空基地に対してソ連軍は中短距離弾道ミサイルに搭載した化学兵器を大量に散布し、相応の成果を得た。(2航空ポイント減少)

写真08_除染訓練


北ドイツ平原では、ハンブルクとブレーメンの間に布陣したオランダ、イギリス連合部隊が、WP第20親衛軍の3個戦車師団の猛攻を受けて後退を余儀なくされた。これでハンブルクとブレーメンの連絡線は遮断され、ユトランド半島とドイツ本土は事実上分断された。

写真09


ハノーヴァーの南北では、英軍部隊とベルギー軍部隊がWP第2親衛戦車軍と第3打撃軍の攻撃を受けて後退を余儀なくされた。これによりハノーヴァーは事実上孤立する。

写真10


NATO手番

北ドイツ平原では、ハンブルクへの連絡線回復は諦め、オランダ第1軍団はブレーメン以北のウェーザー川沿いに布陣した。その南ではハノーヴァを事実上放棄。撤退を諦めた米軍の第2機甲師団の戦車連隊を残し、残りはハノーヴァの西方に後退した。

フルダギャップ南部では、米軍第3機甲師団、第11装甲騎兵連隊等が突出してきたソ連軍戦車連隊(2-2-6)を包囲攻撃し、これを殲滅した。

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3Turn

WP側手番

NATO軍の航空戦力が初めてWP軍を上回った。NATO軍が制空権を確保したのか?。ウェーザー川に突進するソ連軍、さらにニュールンベルグに集中攻撃を加えるソ連軍に対し、NATOの航空部隊が激しい攻撃を加えた。

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航空部隊の奮戦もあってウェーザー川防衛ラインは陥落せず。要域ブレーメンを守るオランダ軍部隊もWP側の猛攻を耐えた。ただし南方のニュールンベルグが陥落した。

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NATO手番

兵力不足に苦しむNATO軍は、新たに前線に加わったフランス軍第1軍団を前線に投入した。わずか3個師団の小兵力だが、ないよりマシだ。早速フランス軍には、フルダギャップ、西ドイツ軍と米第5軍団の間隙に布陣させた。

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そしてNATO軍は初めて本格的な反撃を行った。まず南方フルダ渓谷では、米第5軍団が東ドイツ第7戦車師団(8-5-6)を攻撃。航空機と化学兵器の支援を受けて同部隊を半減せしめた。

北方では、WP軍のスピアヘッドであったソ連第12親衛戦車師団(10-6-6)がウェザー側のすぐ手前まで進出。それに対してNATO軍は航空戦力を集中してこれを叩く。まず航空攻撃により戦力半減、混乱状態とした所で、オランダ第1軍団の4個旅団が包囲攻撃。第12親衛戦車師団を完全に撃滅した。これはWP軍にとっては初の師団規模部隊の壊滅であった。

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4Turn

WP側手番

航空戦のダイスが1である。NATO側にとっては最低の出目だ。航空戦力の優越がNATO側のバックボーンになるので、航空戦力の出目が悪いのはちょっと痛い。

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ここで本作の航空戦システムを説明しておこう。
本作での航空戦力は「航空ポイント」の形で与えられる。航空ポイントには、戦術航空ポイントと作戦航空ポイントの2種類があり、毎Turn開始時にダイスを振って両陣営が使用できる航空ポイントを決定する。航空ポイントの使用方法は、敵ユニットに対する直接攻撃で、結構強力である。例えば平地にいる無傷のソ連軍戦車師団を目標に爆撃を実施した場合、平均して0.67ステップが失われ、97%の確率で目標が混乱状態になる。これが例えば森に潜むNATO軍1個旅団を目標とすると、損害平均が0.17ステップ、67%の確率で混乱状態になる。平地で進撃するソ連戦車部隊が如何に航空攻撃に脆いか、おわかり頂けたと思う。

Su24


航空ポイントの量はダイスで決まるが、ダイスが小さいとWP側が有利、逆だとNATOが有利になる。例えば最もNATOが有利な出目の場合、NATO側が使用できる航空ポイントは計8ポイントに対し、WP側が使用できる航空ポイントは5ポイントとなる(戦略級シナリオの中盤戦の場合)。逆の場合は6対7なので、出目の差は結構大きい。

EF-111A_Raven


なお、記事の冒頭で化学兵器をNATO側飛行場に撃ち込む描写があったが、化学兵器を使ったNATO航空基地に対する直接攻撃もしっかりルール化されている。これは、化学兵器を1ポイント使用することで、NATO側が使用できる航空ポイント数が最大2ポイント減少するというもの。NATO側にとっては踏んだり蹴ったりだが、それでもVictory Games版では、WP側が化学兵器使用を宣言するだけでNATO側の航空ポイントが半減したので、それに比べればまだマシだと思える。ちなみにこのTurn、WP側はNATO航空戦力に対して化学兵器攻撃を仕掛けてきたものの、WP側の出目が悪かったので航空戦力に被害はなかった。助かり・・・。

WP軍はフルダ地区で空挺部隊による奇襲攻撃を仕掛けてきた。しかしNATO側戦闘機が事前にこれを発見。空中戦で撃墜したので、事なきを得た。(出目4で撃墜)

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WP軍は攻撃の主軸を北ドイツ平原からその南、ミンデン、ビーレフェルト付近の西ドイツ軍に向けてきた。NATO側も防御航空支援を同方面に集中して迎え撃つ。NATO側を損害を出して一部後退を余儀なくされたが、WP側機械化部隊にも相応の損害を与えた。もう今までのように一方的にやられっ放しじゃないぞ。

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一方、さらにその南、ニュールンベルグ付近では後退戦闘中の西ドイツ軍部隊をチェコ方面軍が追撃。米軍と西ドイツ軍各1ユニットが壊滅してしまう。局所的には未だに劣勢を覆い隠せないNATO軍であった。

NATO手番

NATO軍は戦線が拡大し反撃兵力の捻出が困難なので、部分的に戦線を後退させて戦線を整理した。反撃は専ら航空戦力を以て行う。狙い目は平地に展開するWP側のスタックだが、WP側もさるもの。条件に当てはまるスタックはそれほど多くはない。そこで最前線に前進している無傷のソ連戦車師団を次の目標として対地攻撃を行う。
一連の航空攻撃でWP軍2ステップを撃破し、戦車3個師団相当を混乱状態とした。

写真17


つづく