NATO表紙


CompassGamesの「NATO: The Cold War Goes Hot - Designer Signature Edition 」(以下、本作)は、2021年に米国CompassGames社から発売されたSLGである。テーマは冷戦時代に欧州正面で想定されていた東西両陣営の直接軍事対決。設定年代は1983年と1988年の2種類があり、後者の方がNATOにとって有利である。

今回、「戦略的奇襲シナリオ」の1988年版をプレイしてみた。これはWP側が何の前触れもなくいきなり西ドイツに侵攻してくるというNATO側にとっては悪夢のようなシナリオである。しかしWP側も十分な準備をしないまま攻勢を仕掛けたので、兵力が十分ではない。果たして勝利を収めるのはどちらか?

今回、私はNATO側を担当した。

前回までのあらすじは --> こちら

5Turn

WP側手番

WP軍も今までのような全正面を対象とした広域攻撃を行うような兵力の余裕はなくなってきた。そこで攻撃をウェーザー川上流部のミンデン以南に絞り、ルール工業地帯に向けた最短距離でライン川目指した。

NATO軍はドムトムント前面とフランクフルト前面を最重要地点とみて航空兵力を投入。WP軍の阻止を図る。
激しい戦い。例によって両軍共損害を強いられ、NATO軍も一部で後退を余儀なくされたものの、最重要のフランクフルトは守り切った。

写真18


NATO手番

WP軍が兵力をドイツ中南部にシフトしてきたので、手薄になった北ドイツ平原でNATO軍が反撃に転じてきた。
ウェザー川西岸に布陣していたオランダ第1軍がウェザー川を渡河し、対岸に布陣するソ連第16戦車師団を包囲攻撃する。既にステップロスしていたソ連軍戦車師団は、オランダ軍の猛攻を支えきれずに壊滅。これによりNATO軍は、ハンブルクとブレーメンの間の連絡線を再確保した。

さらにその南では、イギリス第1軍団がウェーザー川越えにソ連第32親衛戦車師団を攻撃した。こちらも既にステップロスしている上、航空攻撃によって弱体化していたため英軍の攻撃に抗しきれず壊滅する。

写真19


西ドイツ軍もミンデン南方での反撃に成功させ、

その南では、最前線に登場してきたフランス軍は、ルール工業地帯東方の高地帯で3個師団を投入して反撃を実施。東ドイツ軍第7戦車師団を撃破した。

写真20


南部では、マンハイム東方30マイルまで迫ってきたソ連第31戦車師団(10-6-6)に対して、米第8機械化歩兵師団を主力とする米軍が包囲攻撃。米軍は化学兵器でソ連軍を弱体化させた後、集中攻撃を加えてこれに大損害を与えた。

写真21


6Turn

WP側手番

NATO軍による北ドイツ平原での反撃が功を奏した。WP軍はユトランド半島を前進中の部隊に後退を命じ、ミンデン、ハノーヴァー付近のWP軍を北上せしめて防衛ラインを敷く。さらにデンマークのコペンハーゲンを包囲中であったWP軍のヘリボーン部隊と海兵隊を東ドイツへ後退させて予備兵力とした。

それでもWP軍は南ドイツで進撃を継続する。WP軍は空挺部隊2個を投入してフランクフルトに対する再度の攻撃を試みる。空挺部隊の1部隊は途中で撃墜されたものの、もう1部隊は降下に成功した。

NATO軍はフランクフルトを最重要拠点とみなし、その前面に防御支援の航空兵力を集中する。さらに米軍のヘリ部隊も投入してフランクルト死守を図る。フランクフルトの戦いはギリギリで米軍が勝利し、フランクフルトを守り切った。

写真22


NATO手番

フランクフルト前面に展開中のWP軍4個戦車師団に対し、米軍とフランス軍が反撃を仕掛ける。北からはフランス軍が攻撃し、南側からは米軍が攻撃する。一連の攻撃で、フランクフルト前面にいたWP軍4個師団は、1個師団を残して壊滅。さらにフランクフルト南西に降下したポーランド軍空挺部隊も米軍部隊の反撃により壊滅してしまう。

この段階でWP側は突破力を失ったと判断。WP軍の投了でゲーム終了となった。

写真23


感想

プレイ時間は2日間でトータル14時間ぐらいであった。基本ルールはシンプルだが、対応移動や化学兵器、航空攻撃等でテクニカルな部分が多く、ルールも多いのでそれなりに難易度は高い。中級から上級の間ぐらいか。

ゲームとしては面白い。駒数が多いのでプレイ時間はそこそこかかるが、指揮系統のルールが比較的シンプルなので、部隊運用で細かい制約に悩むことは少ない。ただ、NATO側の国籍制限が厳しいので、その点はややストレスが溜るかもしれない。この戦略奇襲シナリオは、WP軍が様々な面で優遇されているので、序盤はWP側の一方的な展開となる。そのような状況下でNATO軍としては如何にして反撃の機会を掴み、そして主導権を奪い返すかが腕の見せ所と言えよう。

今回のプレイでもお互いにいくつかルールミスがあった。例えば避難民の影響についてはNATO側が完全に無視していたので、戦略移動について実際よりも多く移動できたきらいはある。逆に都市を巡る戦闘では、戦車師団の戦力を半減せねばならない所を、半減し忘れていた部分がある。例えば最終Turnのフランクフルトを巡る戦い等がそれで、あとで戦闘比を計算し直したら、戦闘比は1-3となり、WP側にとっては完全に勝ち目がない戦いであることが判明した。

今回を含めてこれまでは2度「戦略的奇襲シナリオ」をプレイしてみた。このシナリオは面白いのだが、NATO側としてはややフラストレーションがたまるシナリオでもある。機会があれば、別のシナリオ(例えば「神経戦」)等もプレイしてみたいと思う。

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