WaW87_表紙


Netherlands East Indies(以下、本作)は、米国Decision Games社が2022年に発表したSLGである。本作は、ゲーム付き雑誌シリーズのWorld at War誌第87号の付録ゲームで、World at Wat誌はWW2をテーマとしたゲームを毎回添付している。

本作のテーマは、太平洋戦争初期における日本軍によるオランダ領インドネシア(以下。蘭印)侵攻戦。ボルネオ、スマトラ、ジャワ、セルベス等の巨大な島々からなる蘭印は、当時世界有数の油田地帯である。日本が戦端を開いた目的の1つが蘭印油田確保による石油の安定供給確立にあった。

本作は日本軍による蘭印攻略戦を1Turn半月のスケールで描いている。ゲームシステムは2008年に発表されたRed Dragon Risingのシステムを採用している。これは、アクション実施を基本としたシステムで、毎Turn実行できるアクション数を決定し、アクション数だけ任意のアクションを実施する。アクションには、地上移動、海上移動、航空攻撃といったシンプルなものから、空挺降下、強襲上陸、艦砲射撃、統合作戦など特殊な内容のものもある。いずれにしてもアクション数の範囲内であれば、好きな内容のアクションを実施できるのが特徴である。

マップは8x12のマス目で区切られており、1マスの大きさは実際の400km四方に相当する。マップの範囲は、インドネシアの主要4島(ジャワ、ボルネオ、スマトラ、セレベス)は勿論、サイゴン、パラオ、西部ニューギニア、ダーウィンなども含まれている。ユニットのスケールは、大隊~師団規模の地上部隊、同型艦数隻からなる水上部隊、数十機の航空機、といった所か。

今回、本作を対面対戦することとなった。まずは筆者が連合軍を担当してみた。



最初の対決

レッドラシステムの特徴として、兵力を集中した方が圧倒的に有利になる、というものがある。攻撃側は移動スタックの大きさ制限があるので極端な兵力集中は難しいが、防御側は原則スタック制限なしなので、兵力集中によって攻撃側を圧倒することが可能だ。そこで今回連合軍は、スラバヤとパレンバンの2ヶ所を兵力集中ポイントと見極め、そこを要塞地帯とすることにした。

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しかし極端な後退配備と局所集中は早くも裏目に出る。第1Turn、日本軍がボルネオの各地を電撃侵攻。サラワク、ブルネイ、タラカン、バリクパパンといった油田地帯は、無傷のまま日本軍の手中に落ちてしまう。

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こりゃいかん。バリクパパンに進出した日本軍を叩くべく、スラバヤから発進したオランダ空軍機でバリクパパンへ空襲を仕掛けるも、戦闘機と防御砲火によって2ユニットを失い、攻撃は失敗に終わった。

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日本軍はポンティアナに巨大な航空要塞を築き、次の侵攻作戦の拠点とした。ちなみにポンティアナのエリアには飛行場がないためそもそも航空基地を展開することは不可能だったのだが、そのことに両軍プレイヤーが気づいたのはゲームが終わった後だった。

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第4Turnにはシンガポールが陥落。ジャワ島中部のチラチャプに上陸。連合軍側の集中配備が仇となってチラチャプの防備は手薄であり、日本軍はチラチャプに橋頭保を築く。連合軍も艦隊を出撃させてチラチャプのインド洋側から艦砲射撃で日本軍地上部隊をかく乱する。

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その後チラチャプを拠点としてスラバヤ、バタビアを日本軍が次々と攻略。こうしてジャワ島一帯を手に入れた日本軍は、さらにスラバヤのパレンバンに上陸。スラバヤ一帯を制圧した所でゲーム終了となった。

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最終的に日本軍はボルネオ、ジャワ、スラバヤを制圧、セルベスやチモール一帯は連合軍が支配し続けている。ABDA艦隊もほぼ無傷で残存していたので、史実の連合軍に比べれば随分マシな状況だと思う。しかし勝利条件的には日本軍の戦域レベルの勝利。日本軍の決定的勝利の一歩手前という敗北であった。

つづく

Game Journal 69-南方作戦1941 もりつちブランド