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The DoomsDay Project Episode 2(以下、本作)は、CompassGamesが2023年に発表したSLGである。テーマは1985年を想定した東西両陣営の直接軍事対決で、実際には発生しなかった史実に基づいている。
この手のゲームは1980年代に数多く出版されたが、1989年の冷戦終結、1991年のソヴィエト連邦崩壊により東西両陣営の対決自体が「嘘くさい」設定になったため(我々人類にとっては慶賀なことである)、1990年代に入ると出版数が激減した(これにはウォーゲームブーム自体の終焉も影響があると考える)。
この種のテーマが再び注目され始めたのは2010年代後半からである。アメリカを中心とする西側諸国と中露等との対立(朝鮮半島ミサイル・クライシスがあったのもこの時期)が顕在化し、冷戦終了時に描いた平和な世界の幻想が崩れ始めた時期と重なる。この種の作品は、過去作品のリメイクという形式のものと、完全な新作で設定のみを過去の仮想歴史から持ってきているものの2種類がある。前者の例としては、CompassGamesの「NATO」や「The Third World War」等があり、また後者の例としては、MMPの「Iron Curtain」、GMTの「Blue Water Navy」や「Red Storm」、CompassGames社の「The Fulda Gap」等がある。今回紹介する「The DoomsDay Project Ep.2」は後者に属する新作グループのゲームである。
本作の紹介に入る前にThe DoomsDay Projectシリーズの内容について説明したい。このゲームシリーズは1985年に想定される東西両陣営による欧州大陸における直接対決をテーマとしたSLGである。ヘクス・ターン方式の典型的なウォーゲームで、1Hex=12km、1Turn=1日、1ユニット=連隊、旅団、師団(一部大隊規模)または飛行隊規模の航空機を表す。基本システムについては 以前の記事で紹介済 なので簡単に説明すると、司令部を活性化して麾下のユニットを活性化し、その単位で移動、攻撃を繰り返すというもの。ただしGame Journalの「激闘システム」とは異なり、1ユニットは原則1Turnに1度しか活性化できない(「激闘システム」では司令部の活性化に合わせて特定のユニットが1Turnに何度も活性化できる)。また司令部の活性化はランダムではなく、プレイヤーが望む順番に実施できる。さらにTurn構成もWP側とNATO側のプレイヤーターンに分かれているので、基本的には「I GO YOU GO」システムと言える。

今回プレイしたEpisode 2は、その名の通りシリーズ第2作目。イタリア、オーストリア、ユーゴスラビア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、ギリシア、トルコといった南欧一帯での戦いを扱う。WP陣営にとっては戦線南翼を形成する重要地域であり、さらに主戦線であるドイツ方面へのNATO側の戦力抽出を妨害するといった意味もある。



シナリオ5.バルカン半島の戦い

本作には計6本のシナリオが用意されているが、今回最初にプレイしたのは、シナリオ5.「バルカン戦争」である。このシナリオは、本作に含まれるすべてのマップを使用する大規模なもので、マップを広げると、アルプス山脈から南はトルコのイスタンブールまでの広大な地域が広がる。

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今回、私はバルカン方面(ギリシア、トルコ軍)を担当した。この方面の主敵はブルガリア軍、ルーマニア軍、そしてユーゴスラビア軍である。同じCompassGamesのWW3ゲーム「The Third World War」では、ユーゴスラビアは西側寄りの中立国という位置づけになっているが、本作ではWP側についている。このあたりの歴史解釈については、本作では意図的にソ連側に有利な状況に至ったと仮想設定している。

下図は第1Turn終了時のイスタンブール周辺の状況である。地図の右上部分、ブルガリア、トルコ国境付近が地図に含まれていないことがわかる。そのためにWP軍はイスタンブールへの最接近経路を使えず、わざわざトルコ・ギリシア国境付近からのトルコ領内進入を余儀なくされている。このためWP軍はこのあと大苦戦することになるのだが、実はこれはルールミスであった。そのことについては後に説明する。

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こちらはギリシア方面である。右上付近に青い駒が集結しているのがテッサロニキである。ギリシア第2の都市で、マケドニア地方の中心都市でもある。そこにオレンジの駒が近づいてきているが、これはユーゴスラビアのパルチザン部隊である。

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全般的な戦局としては、トルコ方面では国境線付近をトルコ軍がガッチリ固めているので、WP軍は突破口を形成できていない。ギリシア方面では、WP軍部隊がテッサロニキ付近に進出してきたため、東マケドニア地方一帯のギリシア軍が連絡線切れになってしまう。連絡線が切れると活性化ができなくなるが、1Turn1日スケールのゲームにしては連絡線遮断の影響が大き過ぎるように思う(空挺や特殊部隊で簡単に連絡線が切られるので)。ドイツの場合は、道路網が縦横に走っていて連絡線が切られること自体が少なかったが、本作では道路網が貧弱なため(特にギリシア側は)結構簡単に連絡線が切られてしまう。
下図は第2Turn終了時点での状況である。

写真03


第3Turnに入ると米空母部隊が登場。航空戦力ではNATO側が上回るようになる。今回は結局時間の関係もあって第3Turn途中で一旦お開きとした。

写真04


この時点での感想としては、ルールブックはわかりにくいけど慣れればプレイできる感じ。航空戦やミサイル戦などの要素も含んでいて、そこそこ面白いゲームではないか、という所であった。

つづく

トルコM60A3



The Fulda Gap The Battle for the Balkans NATO Designer Signature Edition The Third World War, Designer Signature Edition Blue Water Navy Next War Poland Game Journal 81-米中激突:現代海戦台湾海峡編 コマンドマガジン Vol.177『ヴュルツブルク』
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