North Africa'41(以下、本作)は、2023年に米国GMT社から出版されたシミュレーション・ウォーゲームである。テーマは、WW2の北アフリカ戦線で、1Turn=半月、1Hex=8マイル、1ユニット=大隊~旅団のスケールで描いている。デザイナーはマーク・シモニッチ。Stalingrad'42、Uktaine'43、France'40等、WW2の陸上戦闘を扱った数多くの名作を生みだした辣腕ゲーム・デザイナーだ。
他の北アフリカ戦線ゲームが1940/41年から42年までを描いているのに対し、本作は1941年のみを扱っているのが特徴である。従ってガザラ戦やトブルク陥落、エルアラメインの戦い等は、本作には含まれていない。
今回は本作のプレイ風景を紹介するが、まずは基本システムを紹介したい。
基本システムは移動、戦闘を繰り返すもので、断固たる防御、機動強襲等のシステムもシモニッチ氏の前作Stalingrad'42と同様になっている。攻撃力と防御力の最大値上限が設定されているのもシモニッチ氏による最近の作品と同様で、本作では攻撃力上限が30、防御力上限が15となっている。
本作に特徴的なルールとしては、戦車シフトのルールがある。これは戦車が参加した戦闘に適用するルールで、双方の戦車値を比較し、戦車値の差分だけコラムシフトするというもの。例えば攻撃側の戦車値が3で防御側が1の場合、攻撃側が有利なように2シフトする。なおシフトの最大値は2シフトまで。さらに防御側が優越している場合は、シフトが発生せず、その代わりに攻撃側の戦車ユニットの戦闘力が半減する。
なお戦車値自体はドイツ軍が有利で、多くの場合ドイツ装甲師団が参加する戦闘ではドイツ軍が有利に戦いを進めることができる。ただし英軍のマチルダ戦車だけは例外で、マチルダ戦車はドイツ軍装甲部隊と互角の戦車値が与えられている。従ってマチルダ戦車を含むスタックに対してはドイツ軍と雖も苦戦を強いられることになる。
アクション・インパルスのルールも本作の特徴で、1Turnが通常3回のアクション・インパルスに分けられる(夏場は2インパルス)。各インパルスで両軍が移動、戦闘を実施できるので、事実上1Turnに2~3回のサブターンが存在するイメージになる。単純にプレイの手間が2~3倍に増えると考えれば良いと思う。
攻勢補給に関するルールも本作に特有のもので、攻撃を実施する際には補給ポイントを消費する必要がある。補給ポイントは最大でも1Turnに2ポイントしか得られないので、大攻勢を行うためにはある程度補給ポイントを蓄積しなければならない(小規模戦闘では補給ポイントの消費を免除される場合がある)。如何にも北アフリカ戦らしいルールと言えよう。
他に海上輸送や港湾に関するルール、輸送船団に対する攻撃ルール等もある。さらに枢軸側が月の暗い夜を狙ってマルタ島を発進する英軍機を避ける輸送などを試みる事もできる。
今回、本作のシナリオである「クルセーダー作戦」をプレイしてみた。このシナリオは17Turn(1941年11月後半)~19Turn(12月後半)までの計3Turnを描くシナリオである。
第1回戦
まずは筆者が英軍を担当してみた。英軍の兵力は、戦車ユニットが11個(4個旅団相当)で、そのうち1つが強力なマチルダ戦車である。歩兵は約5個師団の兵力である。英連邦軍で厄介なのは指揮系統ルール。同一の攻撃には2個の国籍までしか参加させることができない。英連邦軍といっても、英本国部隊の他には、ニュージーランド、インド、南アフリカなどの諸国があり、統合運用が難しい。
取りあえずニュージーランド第2歩兵師団と戦車部隊でハルファヤ峠を攻撃する。出目良く6の目が出てD1の戦闘結果を得た。枢軸側はハルファヤ峠に固執せず、同地は英軍が支配した。まずは1勝。
ドイツ軍は第15装甲師団を投入して早速反撃を実施してきた。西側に突出していた英軍戦車部隊が反撃の目標となり、4:1の攻撃でDR2の結果を食らった。英戦車は粛々と後退していく。さらに第15装甲師団は隣の英戦車部隊に牙を向けてきた。機動襲撃でこの部隊も4:1攻撃を受けてDR2を食らってしまう。ここでは断固たる防御を試みたが失敗。1度の攻撃で実に戦車兵力の半数が使用不能となった英軍。ドイツ装甲師団の破壊力に驚愕するのであった。
先にも述べたが、このゲームは1Turnが複数のアクションインパルスに分かれている。この時期は1Turnが3回のアクションインパルスに分かれており、従ってこれから第2インパルスに突入する。英軍はハルファヤ峠に隣接する枢軸軍陣地を2:1で攻撃。砲兵支援をつけて3:1で攻撃し、DR2の結果を得た。しかしここでは枢軸軍は断固たる防御を実施。それに成功して枢軸軍が現陣地を守り切った。
そしてここからドイツ軍による怒涛の反撃が始まる。
まずハルファヤ峠に陣取っていたニュージーランド第2歩兵師団がドイツ軍第21装甲師団の攻撃を受けた。それなりに強力な戦車(戦車値2)の支援を付けていたが、ドイツ軍は砲兵支援を加えて5:1の戦闘比を達成。出目6で結果はDS。これまでのシモニッチゲームならDSを食らっても1ステップロスして残りは4Hex後退すればそれでよかった。しかし本作は違っていた。
本作の場合、車両化されていないユニットが3Hex以上後退すると、降伏してしまうのだ。つまり戦闘結果DR4やDSを食らうと歩兵化部隊は逃れる術がないのだ。このためにニュージーランド軍1個師団が一瞬にして壊滅してしまう。この惨劇にしばし言葉を失う筆者なのであった。
教訓:最前線に展開する歩兵部隊は、必ずトラックをつけて自動車化しておくべし
第3インパルス。先の惨劇ですっかり攻勢意欲を殺がれたイギリス軍は、全軍後退で守りの姿勢に入る。主要な集積基地のあるエジプト領内の砂漠地帯を中心に守りの姿勢に入った。
しかしドイツ軍第21装甲師団は、海岸沿いから進出してインド歩兵連隊を撃破(例によって後退不能で降伏)した後、坂道の下から英軍の物資集積所を攻撃。守備隊の奮戦にも関わらず物資集積所はドイツ軍によって占領され、大量の補給物資がドイツ軍の手に渡った。
この時点で戦意を喪失した英軍プレイヤー(筆者)は投了を申し入れ、第1回戦は英軍の完全な敗北に終わった。
つづく
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