South Pacific Air War Vol.2
Michael Claringbould/Peter Ingman Avonmore Books
South Pacific Air Warシリーズの第2弾。1942年3月から4月のポートモレスピーを巡る航空戦を扱っている。この時期の戦いについては、日本側が「台南空の零戦隊が連合軍のキティホーク、ハリケーン、スピットファイアを圧倒」という感じで扱われているが、本書を読むと実際はかなり異なっていることがわかる。
まず連合軍の航空戦力についてだが、この時期ポートモレスピーで防空任務を担っていたのは、オーストラリア空軍第75戦闘機中隊のP-40Eキティホークのみ。スピットファイアはおろか、ハリケーンもいない。また損失比についても、単純に機体の損失数でいえば、キティホークの損失19機に対し、零戦は36機を失っている。無論、空戦による比較だけではないので空対空戦闘のキルレシオではないが、いずれにしても零戦が連合軍機を一方的に圧倒していた訳ではない。
まあオーストラリア第75戦闘機中隊は大損害を被ったので、4月末にポートモレスピーを離れてオーストラリア本土へ引き上げている。日本側はそれを以てポートモレスピー上空の制空権を握ったとし、5月のMO作戦発動につながってくる。しかしオーストラリア空軍に代わって米陸軍のP-39Dエアラコブラの2個飛行隊が進出してきたので、日本軍の勝利は幻に終わった。その後、米陸軍P-39と台南空零戦隊との激闘、さらに珊瑚海海戦での空母同士の戦いは、続編で語られることになるだろう。
本書は比較的平易な英文で書かれており、しかもイラストが多くて読みやすい。やや値段が高いのが難点だが、今まであまり知られてこなかった南西太平洋方面での連合軍の航空作戦について理解を深めることできるので、興味ある人にはお奨めしたい。
South Pacific Air War: The Struggle for Moresby March-April 1942 (2)
お奨め度★★★★
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