Red Strike(以下、本作)は、2023年にドイツのVUCA Simulationが発売したシミュレーション・ウォーゲームだ。テーマは1989年における東西両陣営の直接対決。世界中のウォーゲームメーカーから発売されてきた鉄板テーマで、本作はそれをフルマップ2枚;戦略マップ、カウンター2000個以上で再現するビッグゲームとなっている。
本作の基本システムは、かつてVictory Gamesから出版されていたGulf StrikeやAegean Strikeと同様のシステムを採用している。このシステムは一言で説明するのは難しいが、陸戦だけではなく海戦や航空戦を詳細なシステムで再現するシステムで、陸海空の行動を統合的なシステムで再現している。従って本作には地上部隊だけではなく、空母やフリゲート艦、潜水艦といった海上部隊、F-15やB-52といった航空部隊も登場する。しかも恐ろしいことに米空母艦載機は中隊別でユニット化されており、そのため米空母1隻に搭載されている航空機ユニットは最大10個にも達する。
ちなみに本作のスケールは1Hex=28km(戦略マップは280km)、1Turn=2日間、1ユニット=大隊~師団、航空機は1ユニット=10~60機程度、艦船は主力艦1隻又はその他の艦艇数隻を表す。
本作には多数のシナリオが含まれている。最大のものは全マップ、ユニットを使用するキャンペーンシナリオ(計4本)の他、練習用のミニシナリオが10本、中規模シナリオが6本用意されている。
今回、中規模シナリオの1つである「B1.FULDA GAP」をプレイしてみた。このシナリオは、タイトル通りフルダギャップと呼ばれる西ドイツ中央部の高地帯を巡る戦いで、登場するユニット数が両軍合わせて176個、長さが3Turnという比較的プレイし易い規模のものである。ソ連軍はゲーム終了時までにライン川の渡河を目指し、NATO側はその阻止を試みる。
今回、このシナリオを3人でプレイしてみた。NATO側1名、WP側が2名である。筆者はWP側を担当し、地対地ミサイルと航空戦力を担当した。
0Turn
このシナリオは、両軍が戦端を開く前に一定の「事前移動」が認められている。NATO側は移動力の半分で移動可能。WP側は移動力の2倍まで移動可能だ。当然両陣営とも国境を超える移動は認められない。なお、この移動は地上部隊だけではなく、航空部隊も移動可能のようだ。そこで両軍とも地上部隊だけではなく、航空部隊についても運用し易いように再配置を行う。1Turn
1st Action ステージ
まずWP軍は地対地ミサイルでNATO軍の後方拠点に攻撃を加える。まずはヴュルツブルク南方の4thATAF(第4連合戦術航空群)のCRC(Control and Reporting Centre)を攻撃する。短射程弾道ミサイルOTR-21トーチカ(NATOコードネーム:SS-21 スカラベ)を集中投入する。数発の弾道ミサイル弾がCRCを直撃。CRCは機能停止した。これによってNATOのADN(Air Defence Network)の機能は半減した。両軍の地対空ミサイル防衛網は抽象的に表現されており、CRCの他、SOC(Sector Operations Center)がマップ上に配置されている。これらの施設に打撃を与えることで防空組織を弱体化できる。通常は合計8打撃を与えた時点で防空組織の能力を弱体化できるのだが、このシナリオでは特別に4Hitの損害でNATO側防空組織を弱体化できる。
続いて少し射程の長いR-17弾道ミサイル(西側で悪名高いSS-1Cスカッドミサイル)で後方のPOMCUS(装備事前集積地点)を攻撃する。POMCUSは複数の命中を受けて破壊されてしまう。さらに4thATAFのSOCを攻撃する。2発のミサイルが命中し、SOCの機能は半減する。この結果、同地区のNATO側地対空防空ネットワークは事実上機能を停止した。
このシナリオの特別ルールにより、NATO防空組織に合計6打撃を与えると、この地区におけるNATO地対空防空組織は完全に機能を停止する。
WP軍の攻撃はなおも続く。西ドイツ西方のビットブルク航空基地(Bitburg 1213)に対して航空偵察を行う。航空偵察は成功した。このゲームでは、地上目標に対して航空偵察が成功すると、爆撃やミサイル攻撃、さらに特殊部隊による攻撃効果が高まる。
ソ連特殊部隊スペツナツがビットブルク基地を襲撃する。D10で7以下を出すと襲撃成功。襲撃に成功すると航空基地に1打撃を与えることができるが、航空偵察に成功した航空基地に対するスペツナツ襲撃に成功すると、目標が被る被害が通常の2倍になる。ビットブルクは計6打撃を受けて機能が半減してしまう。
ちなみにスペツナツの襲撃を受けたビットブルク基地では、米陸軍の攻撃ヘリ部隊が付随損害で壊滅した。この基地にはF-15やF-16といった虎の子戦闘機も在地していたのだが、「付随損害は攻撃を受けた側が選択できる」というルールによってF-15、F-16は無傷であった。
「これはいくらなんでも・・・」
という声が参加者から上がったので、次回のプレイでは「付随損害の適用は損害の小さいものから優先する」というローカルルールを適用したい。
ビットブルク基地にさらなる打撃を与えるべく、航空攻撃を行う。Su-24フェンサー2ユニットからなる攻撃隊をMiG-29フルクラム、MiG-23MLDフロッガー計3個編隊が護衛するというソ連側最精鋭と言うべき攻撃編隊だ。東西国境を越えて西ドイツ領空内に進入した攻撃編隊をE-3AセントリーAWACS機が探知する。フルダ上空でCAP任務中であったF-15イーグルがこれを迎え撃つが、ソ連側護衛機がこれを排除。攻撃隊はさらに進撃を続ける。
続いてハーン(Hahn 1215)から米軍のF-16戦闘機が飛び立つ。F-16が放ったAIM-7スパローは外れ。続いてF-16とMiG-29、MiG-23が交戦する。数で勝るソ連側だったが、ここでは性能とAWACSの援護を得たF-16の勝利で、ソ連側はMiG-23が1損害を被り、基地への帰還を余儀なくされる。
さらに米軍はF-15イーグルを発進させてソ連軍攻撃隊を迎え撃つ。ここでも数に勝るソ連軍は性能に勝る米軍機によって一方的に損害を被り、護衛戦闘機計3戦力を失った。しかし護衛機の犠牲により無傷で目標上空に進入したSu-24フェンサーの2個編隊がビットブルク基地を攻撃。合計4打撃を与えて、ビットブルク基地の損害は計10ポイントに達した。
さらにソ連軍はMiG-29が1ユニット、MiG-23が2ユニットからなる戦闘機編隊を送り込んだ。この編隊の狙いはAWACSの撃墜にある。米軍のCAP網を避けてAWACSに近づくソ連攻撃隊。米軍はF-15を迎撃のために発進させたが、米軍機が接近戦を躊躇っている隙にソ連軍編隊はAWACSに発見し、これを攻撃。AWACS機を撃墜した。
NATO側の迎撃機が品切れになったので、ソ連軍はさらにビットブルク基地を攻撃。同基地の累積損害は14ポイントに達した。
ソ連軍による地対地ミサイルと航空機による攻撃は、所要時間約1時間にも及び、他のプレイヤーをして「キャンペーンシナリオなら航空攻撃だけでプレイ時間が終わってしまうんじゃないか」という乾いた感想も出てくる有様であった。
つづく
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