Red Strike(以下、本作)は、2023年にドイツのVUCA Simulationが発売したシミュレーション・ウォーゲームだ。テーマは1989年における東西両陣営の直接対決。世界中のウォーゲームメーカーから発売されてきた鉄板テーマで、本作はそれをフルマップ2枚;戦略マップ、カウンター2000個以上で再現するビッグゲームとなっている。
今回、中規模シナリオの1つである「B1.FULDA GAP」をVASSALでプレイしてみた。このシナリオは、タイトル通りフルダギャップと呼ばれる西ドイツ中央部の高地帯を巡る戦いで、登場するユニット数が両軍合わせて176個、長さが3Turnという比較的プレイし易い規模のものである。ソ連軍はゲーム終了時までにライン川の渡河を目指し、NATO側はその阻止を試みる。
今回、このシナリオを3人でプレイしてみた。NATO側1名、WP側が2名である。筆者はWP側を担当し、地対地ミサイルと航空戦力を担当した。
前回までの展開は --> こちら
1Turn(章前)
1st Action ステージ(章前)
戦闘フェイズである。ソ連軍地上部隊がNATO側防衛線に襲いかかった。攻撃を行ったのはソ連第8親衛戦車軍の2個師団、防御側は西ドイツ軍第12装甲擲弾兵師団である。このゲーム、空戦と海戦ルールはかなり凝っているが、陸戦ルールは比較的シンプルである。攻撃側と防御側はそれぞれ戦闘モードを決める。戦闘モードといっても通常戦闘、急速戦闘、徹底戦闘の3種類があり、それぞれ消費する補給ポイント量や戦闘力修正が異なるというもの。ソ連側は大抵の場合、一番有利な「徹底攻撃」を選ぶことになるが、NATO側は微妙。戦闘モードも違いによる防御力の修正は攻撃力程には過激ではないので、NATO側は補給ポイントをケチって弱い戦闘モードを選択する余地がある。
戦闘が始まると両軍が近接航空支援を実施する。防御側から先に近接航空支援を実施する。近接航空支援は通常の航空任務と同様に解決される。つまり実際に航空機ユニットを飛ばして、探知処理を行い、必要なら空対空戦闘や地対空戦闘を行う必要がある。地上戦闘で一番時間がかかる部分がこの近接航空支援であると言える。
今回の戦闘ではNATO側が攻撃ヘリによる近接航空支援を試みたものの失敗。ソ連軍はMil-24ハインド3ユニットを投入して近接航空支援を試みたものの、CAP機のF-16と対空砲火に阻まれて支援に失敗(ヘリによるCASは意外と失敗し易い)。ソ連空軍は護衛付きの攻撃編隊を近接航空支援に送り込み、F-16の迎撃を掻い潜て攻撃を敢行し、命中を与えたので近接航空支援を成功させた。
実際の地上戦闘は戦闘比による修正とその他のダイス修正を加えて最終的な修正値を得て、ダイスを振って修正後のダイス目を戦闘結果表に当てはめて戦闘結果を決める。最初の戦闘比は4:1。修正後の戦闘比は5:1でダイス修正は+6(砲兵支援と近接航空支援)。戦闘比5:1の場合は+4のダイス修正がつくので、最終的なダイス修正は+10。出目は7でダイス修正を適用した後の出目は17。戦闘結果は0/4Rとなる。防御側は4打撃食らって強制後退となるが、この時防御側は「徹底防御」を選択していた。「徹底防御」では後退しない代わりに後退できない分1打撃を余分に食らってしまう。
同様に第8親衛軍と第1親衛戦車軍所属のソ連機械化師団が米第3機甲師団を攻撃する。NATO軍は基地航空機を投入して近接航空支援を試みるが、MiG-21のCAPに阻まれて攻撃失敗。護衛なしの攻撃編隊は脆いものよのぉ。諦めないNATO軍は攻撃ヘリを近接航空支援に投入するも、やはりCAP機に阻まれて失敗。航空兵力は五月雨式に投入せずまとめて投入した方が有利になるのだが、NATO軍はそのセオリーに反したため徒に損害を増やす結果となった。
一方のソ連軍はMil-24ハインド3ユニットを投入して近接航空支援を試みるが、F-16のCAPに阻まれて攻撃失敗。こちらもCAP機の威力圏内でヘリの活動が自殺攻撃に過ぎないことを証明することになってしまう。ちなみにその時はソ連空軍も近接航空支援に出撃したもの、やはりCAP機に阻まれて近接航空支援に失敗。
仕方がないのでソ連軍は唯一残っていたBVRミサイル搭載のMiG-23MLDフロッガーを護衛につけて攻撃隊を発進させた。しかし虎の子MiG-23MLDにもF-16の餌食となり、戦果なしで撃退されてしまう。辛うじてF-16の迎撃を突破したSu-25フロッグフットも対空砲火を食らって1打撃。近接航空支援は失敗に終わった。
「F-16強すぎ・・・」
ソ連軍プレイヤーからため息交じりの呟きが漏れた。
今回の教訓として、WP側はCASに固執するのではなく、攻撃前に通常の爆撃でNATO軍地上部隊を弱体化させた方が良いと感じた。というのも、CASはどうしても五月雨式の攻撃になってしまってCAPや対空砲火に阻まれてしまう傾向が強いが、護衛を2~3ユニット程度つけた攻撃編隊であれば、CAP機を数の力で圧倒できる可能性が高い。仮にCAPが仕掛けてこなかった場合には爆撃自体が成功するのでこれも悪い話ではない。ということで、CASよりも通常爆撃を行った方が良いのではないかというお話。
2nd Action ステージ
何はともあれ、NATO側前線に大きな打撃を与えたWP軍は、予備部隊を投入して一気にNATO側防衛ラインの突破を図る。しかしNATO軍は戦闘前退却ルールを利用して打撃を受ける前に粛々と後退していく。焦るWP軍。結局このステージのWP軍は、戦闘前撤退に失敗した米第3機甲師団に対して4個師団による猛攻を行い、これに壊滅的な打撃を与えたに留まった。
3rd Action ステージ
このゲームは1Turnが3つのアクションステージに分割されており、それぞれのアクションステージで航空部隊は毎回活動できるが、海上部隊は3つのアクションステージの中でいずれか1つのアクションステージしか活動できない。地上部隊も同様だが、地上部隊はさらにモードによる制約が加わり、予備モードのユニット以外は主導権側は第1アクションステージ、非主導権側は第3アクションステージのみ移動できる。予備モードのユニットは、もう少し柔軟な活動が可能になる。何はともあれ、第3アクションステージは非主導権側、すなわちNATO側の地上部隊が活動する機会となる。これまでやられっ放しであったNATO軍であったが、この機会に戦線の整理を行う。NATO軍が選んだ防御陣形は一線防御。これは戦線を全てユニットで敷き詰めてソ連側の浸透を阻むという布陣であった。各Hexの部隊密度は薄くなり、ZOC形成もできなくなるが(このゲーム、1Hexに3個連隊相当の部隊が存在するとZOCを形成する)、WP軍の後方への突破を防ぐための苦肉の策と言えた。
ただ個人的には薄い一線防御よりも、ZOCに依存した定点防御の方がNATO側にとっては有利だと思っている。
つづく
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