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Russian Front(以下、本作)は、1985年に米国Avalon Hill社が発表したSLGである。テーマは1941~44年の独ソ戦で、1944年後半以降のポーランドにおける戦いは含まれていない。1Hex=約40km、1Turnは実際の1ヶ月に相当し、1ユニットは枢軸軍が軍団、ソ連軍が軍となっている。

ゲームの手順は、移動、戦闘、突破移動を枢軸、ソ連の順番で繰り返すという一般的なものである。本作の特徴は戦闘と対応移動である。本作の戦闘システムは同一Hex戦闘で、通常のゲームのような隣接Hex戦闘ではない。またZOCの効果も特殊で、補給に対する効果は一般的な陸戦ゲームと同じだが、移動に対する効果が異なっている。すなわち、本作のZOCには敵ユニットの移動を直接妨害する効果が弱く、特に通常移動の場合は移動するユニットは敵ZOCに関係なく移動できる。
では、防御側ユニットのZOCはどのように機能するのか?。それは敵ユニットのZOCtoZOC移動を行った場合、防御側ユニットは隣接Hexへ対応移動を行い、敵ユニットに戦闘を強要できる。ちなみに敵ユニットとスタックしているユニットは、ZOCを失う。
戦闘は戦力差方式。本作のスタック制限は無制限だが、戦闘に参加できるのは1ユニットとのみとなっている。従って強力な装甲部隊は戦闘で有利になる。なお、地形によって装甲部隊の戦闘力は大きく減少するので、地形に応じた兵科の運用が必要になる(装甲部隊は都市部では極端に弱くなる)。
なお、航空部隊や海軍部隊は支援部隊として戦闘に参加でき、攻撃力や防御力に直接加算できる。従って航空部隊や海軍部隊は戦闘の勝敗に大きく影響する。

今回、本作をプレイしてみた。シナリオは1941年シナリオを選択し、筆者は枢軸軍を担当する。なお、上級ルールは全て採用したが、選択ルールは採用しなかった。

セットアップ

本作のセットアップはある程度範囲が決まった半フリーセットアップ。両軍はそれぞれ軍集団や軍管区別に配置領域が決まっていて、その範囲内であれば比較的自由に配置できる。ただし、国境線のHexは全てZOCで埋めなければならない。また上記のシステム特性上、重要度の高い地域にはユニットを横並びに配置する必要がある。

ソ連軍は、ドイツとの国境地帯は全ユニットを横並びに配置し、さらにプリピャチ湿地南側の所謂南方軍集団戦区では、二重戦線を構成してドイツ軍の突破に対する守りを固める。

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1Turn(41年6月)

第1Turnは開戦奇襲ということで、枢軸軍の攻撃には+1の攻撃力修正が適用される。さらに国境付近に横並びに配置されているソ連軍の最前線を突破し、後方を遮断して包囲するチャンスが生まれる。

ドイツ軍はプリピャチ湿地北側でソ連軍の戦線を3ヶ所に渡って突破した。一番北方では、バルト海沿岸のメーメル(Memel MM5)付近で戦線を突破し、第56装甲軍団(6-4-6、攻撃力-防御力-移動力、以下同じ)。はリガ(Riga NN9)に到達した。

その南では、カウナス(Kaunas II7)とグロドノ(Grodno EE6)付近で戦線を突破。要域ヴィルナ(Vilna GG9)の後方へ突破し、ヴィルナ周辺で数個軍のソ連軍部隊を包囲した。先頭を進むドイツ第57装甲軍団(7-5-6)は、ミンスク(Minsk DD11)まであと2Hexに迫っている。

しかしプリピャチ湿地の南方軍集団戦区では、ドイツ軍が要塞都市ブレスト・リトブスク(Brest Litovsk BB4)を攻略したものの、ソ連軍の戦線を突破することには失敗し、国境付近で2Hex程度前進したにとどまった。

さらに南方のルーマニア国境部分では、ルーマニア軍とそれを支援するドイツ第17軍の3個軍が攻撃を開始。プルート川沿いに布陣するソ連軍部隊に猛攻を加える、も、貴重なルーマニア空軍(2-1-10)が壊滅してしまう。

そしてフィンランド戦線。フィンランド湾の入口にあたる要域ハンコ(Hango UU11)には、ソ連軍の守備隊(1-1-4)が布陣していた。それに対してフィンランド軍は、同軍最強のフィンランド第4軍(5-5-4)を投入し、航空部隊の支援をつけてハンコ攻略に乗り出した。兵力差を考慮すればフィンランド川の楽勝と思われたが、ソ連軍は虎の子のバルト海艦隊(3-3-7)を出撃させてきた。フィンランド空軍は、バルト海艦隊との戦いで撃退され、フィンランド軍は航空支援なしでの戦いを余儀なくされた。その結果、フィンランド第4軍は大損害を被って撃退されてしまう。思わぬ損害に意気消沈のフィンランド軍なのであった。

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ソ連軍は北方から中央戦線を大きく後退させ、バルト三国の大半は放棄。最前線は北部のペイプス湖からミンスク付近のラインに新たな防衛ラインを引いた。

2Turn(41年7月)

ドイツ軍は比較的快調な北方から中央戦線で攻勢を継続する。北部では港湾都市タリン(SS12)をドイツ第50歩兵軍団(4-3-6)が占領した。
中央戦線では、装甲6個軍団を集中投入し、ヴィテブスク(Vitebsk FF15)前面を突破し、スモレンスク(Smolensk DD17)とミンスク間で鉄道線を遮断。ミンスク付近で残留するソ連軍の包囲殲滅を図る。しかしさすがに強化されたソ連軍戦線を一撃で突破するのは難しい。ソ連軍部隊に損害を与えつつも、戦線の完全な突破には失敗し、ドイツ軍の攻勢はヴィテブスク前面までで止まってしまった。

南方では、装甲4個軍団を投入してソ連軍の戦線突破を図る。先頭を進むドイツ第14装甲軍団は国境から6Hexの地点まで進出し、ルボフ(Lvov V3)とキエフ(Kiev U12)の中間地点付近まで進出した。そしてその過程で多数のソ連軍部隊を撃破し、さらにソ連戦車2個軍団を包囲した。

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ソ連軍は包囲下の部隊を後方に逃がすための戦闘を仕掛けてくる。また第1Turnとは異なってソ連側は航空戦力を投入し、後退援護してきた。両軍の航空機同士の戦いも始まり、ソ連空軍機がドイツ空軍機を撃退する場面も出てきた。
Turn終了時点でソ連軍は早くも強固な戦線を構築し、ドイツ軍の突破を防ぐ形となる。無敵を誇ったドイツ軍は、早くもその前途に陰りが見えてきた。

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つづく



独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書)
モスクワ防衛戦―「赤い首都」郊外におけるドイツ電撃戦の挫折 (独ソ戦車戦シリーズ 4)
漫画 グデーリアンと機甲戦
電撃戦 上―グデーリアン回想録