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Russian Front(以下、本作)は、1985年に米国Avalon Hill社が発表したSLGである。テーマは1941~44年の独ソ戦で、1944年後半以降のポーランドにおける戦いは含まれていない。1Hex=約40km、1Turnは実際の1ヶ月に相当し、1ユニットは枢軸軍が軍団、ソ連軍が軍となっている。

今回、本作をプレイしてみた。シナリオは1941年シナリオを選択し、筆者は枢軸軍を担当する。なお、上級ルールは全て採用したが、選択ルールは採用しなかった。

前回までの展開は --> こちら

3Turn(41年8月)

ドイツ軍は苦戦しながらもソ連軍戦線を食い破る。中央戦線では、ヴィテブスクを占領した上でスモレンスク北方を突破。モスクワ~スモレンスクの鉄道線を遮断する。最先頭を進むドイツ第47装甲軍団(8-6-8)はスモレンスク~モスクワのほぼ中間点付近にまで進出し、モスクワまであと5Hexに迫った。

南方戦線でも伸び切ったソ連軍戦線をドイツ軍は複数個所で突破に成功。キエフまであと2Hexに迫る一方、南方から前進してきたルーマニア軍とも合流し、包囲輪の中に多数のソ連軍部隊を閉じ込めた。

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ロシア軍はスモレンスク~モスクワ街道に進出してきたドイツ軍装甲部隊に対して反撃を実施する。新鋭の歩兵10個軍、騎兵2個軍団を投入してきたソ連軍の反撃はさすがに強力で、ドイツ軍の装甲部隊は苦戦を強いられたが、それでもドイツ軍は航空部隊の支援を得て何とかソ連軍の反撃を撃退することに成功した。しかしドイツ装甲部隊の損害も決して無視できるレベルには留まらず、ドイツ軍の進撃能力に陰りが見えてきた。

一方南方戦線では、包囲されていたソ連軍部隊の大半が壊滅。「死なば諸共」攻撃でドイツ・ルーマニア軍にも若干の損害が出たものの、それほど大きなものではなかった。南方戦線のソ連軍戦線は大きく引き裂かれ、ドイツ軍にとってチャンスが見えてきた。

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この時点でショートシナリオの勝利判定ができるようになる。勝利条件は枢軸軍の占領した大都市と油田数によって決まり、23点で引き分け、26点以上で枢軸軍の勝利となる。今回のプレイで枢軸軍が獲得したVPは19点。勝利レベルではソ連側のレベル1勝利である。うーん。

ちなみに史実の枢軸軍はこの点で26点以上獲得していたとのこと。我々の場合よりも7ヶ所多いことになるが、一体どうすれば可能なのだろう?。ハンコ、ノブゴルド、スモレンスク、ゴメル、キエフ、オデッサ、ドニエプロペトロフスクあたりかなぁ?。だけどWikiPediaには、キエフ陥落が9月19日、オデッサは10月16日になっていたぞー。

感想

このあたりで一旦感想を整理したい。ちなみにプレイ時間はセットアップを含めて6時間強。セットアップの所要時間は1時間弱だったので、純粋なプレイ時間は5~6時間であった。1Turnあたりの平均プレイ時間は2時間弱なので、全42Turnのキャンペーンシナリオを完遂するためには70~80時間となる。実際の所は後半は暇になることが予想されるので、50時間ぐらいだろうか。

ゲームとしては面白いと思う。同一ヘクス戦闘がやや面倒に思う所がある(スタックが大きくなる等)が、戦闘システムがシンプルなのでハイスタックの戦力を毎回毎回計算する手間がない点も良い。独ソ戦ゲームの決定版としては古典とも言うべきRussian Campaignがあるが、このRussian Frontも新たな古典となる資質は十分に持った作品だと思う。プレイ時間がロシキャンよりもかかってしまうのが難点かもしれない。
ちなみに 3年ほど前にプレイした記録 を読むと、1Turnの主要時間が1時間強となっているので、慣れればもう少しペースアップ可能かもしれない。

プレイしていて感じたのは、枢軸軍に難しいゲームだと思う。独ソ戦ゲームには2パターンあり、枢軸軍がよりテクニックを要するゲームと、ソ連軍がテクニカルに振舞うゲームがあると思う。前者の例がGame Journal誌のバルバロッサシリーズ、後者の典型例がタイ・ボンバ氏デザインの「電撃戦1941」だろうか。個人的には枢軸軍に厳しいゲームの方が好きなので、本作のアプローチは気に入っている。

今回の反省点は、歩兵予備をもっと活用すべきであった。敵の歩兵を拘束するために自軍の歩兵を積極的に戦闘に投入してきたが、ドイツ軍としては包囲を多用すべきであった。そして一定数の歩兵は常に予備として残しておき、装甲部隊の側面支援に投入すべきであった。そうすれば、結果的に装甲部隊の突破力も維持できただろう。

本作について問題点を挙げれば、古いゲームなのでカウンターが片面印刷であるところ。このゲームはユニットの損害を損害マーカーで示していく方式なので両面印刷は必ずしも必要ないが、損害マーカーも片面印刷なので、損害の1レベル増減だけでカウンターを入れ替えなければならない。これが結構面倒。さらにソ連軍には2ステップしかないユニットが結構多いので、両面印刷すれば損害マーカー不要になる。
もし本作をリメイクする機会があれば、カウンターを両面印刷にし、プレイし易くしてほしい所だ。

いずれにしても本作は面白いゲームである。コマンドマガジン等で再版してくれることを期待したいが、現時点では期待薄。幸い筆者は本作を保有しているので、今後も大事にしていきたい。

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4Turn(41年9月)

ここから先は少しオマケになる。まだ少し時間があったので、もう1Turn分プレイしてみた。
まず中央戦線ではモスクワ方面へ前進していた装甲軍団の一部を後退させ、主力はヴィテブスク南方で攻勢を仕掛けた。スモレンスク前面のソ連軍部隊を装甲3個軍団で撃破したドイツ軍は、逃げるソ連軍を追ってスモレンスク市街に突入した。要塞化されたスモレンスク市街を守るソ連兵は頑強に抵抗する。さらに平地では無敵の強さを誇るドイツ軍装甲部隊も市街戦では極端に弱くなる(戦闘力-2)。さすがのドイツ装甲軍団も苦戦が予想されたが、航空支援を得たドイツ軍は強引にスモレンスク市街を攻撃。少なくない損害を出しながらもついにスモレンスクを占領した。

南方ではドイツ軍の歩兵部隊の中では最強の第4歩兵軍団(6-5-6)がキエフ市街に突入。航空支援を受けた第4歩兵軍団はキエフ市街を制圧、同市を占領した。

他にもフィンランド軍がようやくハンゴを占領し、この時点で枢軸軍が獲得したVPは22点となった。ちなみに第6Turn終了時点で枢軸軍が最低限の勝利レベルに達するためには39点必要である。そんなんムリ。

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